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第0話 うさ耳王子といぬ王子(挿絵&キャラ相関図)

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


みどころ

かわいい王子たちの恋と逃避行の裏で、国の運命と音楽魔法の歴史が動き出す。


うさぎ王国 vs いぬ王国

失われた国と、失われつつある国の物語。


声楽魔法 vs 楽器魔法

古い権威と、新しい才能がぶつかる物語。


古典楽派 vs 新古典楽派 vs 器楽派

信仰、実践、革新が入り乱れる学派抗争。


平均律 vs 純正律

400年前に失われた“本当の音楽”をめぐる物語。


☆ ☆ ☆


 音楽で魔法を奏でる、不思議な世界。


 この世界では、声楽魔法を中心とする時代から、楽器魔法の時代へと技術革新が進み、古い価値観と新しい価値観のあいだで世代間闘争が繰り広げられていた。


 そんな世界で、4つの旋律がひとつのハーモニーを奏でようとしていた。


 理想を生きるうさぎ王子。


 現実を生きるいぬ王子。


 そんな2人の間で恋に揺れる、一人の竜の少女。


 そして、そんな少女の魂を封じようとする男。


 4人は時代の変革期に翻弄され、迷い、傷つきながらも歩み続ける。


 これは、彼らが絶望の中に光を見出し、愛し合い、次の時代へとバトンを渡していく物語である。



♪アダージョ(1日後)♪


 僕はアゴをくいっと持ち上げられ、目の前にイヌ族の男の顔が迫る。


「助けて」


「いいだろう。報酬はあんたのキスだ」


「ふえ?」


「ポエットとかいううさぎ野郎を助けたいんだろ?」


 この男の力を借りないと、ポエットくんが死んじゃう。


 どうしよう。ファーストキスの相手に心を奪われるのが、僕たち竜族女子の体質。


 この男に、心奪われたところで、大した問題ではないはずだ。僕の本来の体は男なんだから。ずきりと胸が痛む


 そうだ。僕は男だ。男なのになんでこんな二択で悩んでいるのだろうか。まるで、ポエットくんに恋しているみたいに。


♪ミミ(3日前)♪


「なんだ。ねこ族の娘か? ねこ族は声楽魔法がてんでダメだから、奴隷としてはそんなに高く売れないんだよな。どうする?」


「ヒゲとかならそれなりの値段で売れるはずだ。ギター魔法用の弦として一部金持ち愛好家が。羊の腸だと物足りないとかで」


 町外れの荒野、ひとりさまよう私を盗賊たちは襲撃した。今はどうやって私をお金に変えるか相談しているらしい。


 私の名前はミミ。あこがれの魔法工学の権威の先生に憧れ、勉強を重ね、ついに大学院の研究室に所属するための権利を手に入れた。


 居ても立っても居られず、先生の研究室に向けて、旅に出ていた。だけど、こんなところで旅の終わりだなんて。悔しい。こんなところで終わりたくない。


「どうする? あまり荷物はたくさん持って歩けないぜ。バラすか?」


 私の命を奪う相談をしているらしい。


「そういうわけだ。嬢ちゃん、悪いがここで死んでもらうぜ」


 男は軽々とコントラバスを持ち上げる。鈍器として使おうとしているらしい。楽器はそんなことをするための道具じゃないのに。


「死にな!」


「待てっ!」


 どこかから風の刃が飛び、大きなコントラバスを吹き飛ばした。


「何者だっ!」


 声のした方に眼差しを向けるとフォークギターを構えたうさぎ族の男が、崖上からこちらを見下ろしていた。


「名乗るほどの者じゃないがうさ耳王子とでも呼んでもらおう。その娘を解放してもらおうか」


「畜生め!」


 盗賊の片割れは手早く和太鼓を亜空間から出現させ、軽快に大地を震わせ、魔法で岩をもちあげ、うさぎ男に向かって、ヒュンヒュンと投げつける。


 うさぎ男は微動だにせず、見知らぬフォークソングを弾き語りをする。


 岩の進行方向を逆転させ、男たちの方に降り注がせる。


「うわあっ! あぶねぇっ! 貴様! もしかして、お尋ね者のポエット王子じゃあるまいな」


 その言葉にうさぎ男は少し迷ったような表情をしたが、しばらくして、キリッとした顔になる。


「いかにも! 僕がうさぎ王国第二王子のポエットだ!」


「俺は知ってるぜ。あんたの弱点を」


 そう言うと私の方に近づき、ナイフを首元に突きつける。


「にゃあっ!?」


「戦いが嫌いなお優しい王子だという婦女子の評判に甘んじながら、各地を逃げ回っているチキン野郎らしいじゃないか。だが、人質が居たらどうだ? いつまでも国の現実から逃げながら、美名に甘んじてられねぇよな? このまま逃げるか? ああん?」


「やめろ! その子を離せ!」


「うるせぇな。甘ったれのとっちゃん坊やがよ! てめぇみたいなのが俺は嫌いなんだ」


 ナイフが深く首元に食い込む。


 ポエット王子が諦めてギターを下ろそうとする。だめよ。こんなやつらの言いなりになっちゃ。


 そのとき、風が吹き、葉が舞う。口元に笹の葉がやってくる。


 そうだわ! 草笛! 草笛なら、楽器やお歌のように本格的な魔法は無理でも、こけおどしならできる!


 ねこ族の女だって誇りはある! 泣いてばかりの人生なんてまっぴらだよ。


「おい! その女、魔法を唱えているぞ!」


「なにっ!?」


 草笛でミニマムファイアーの音階を奏でる。


「あちぃっ!」


 熱さに耐えかねた男はナイフを取り落とす。


 うさぎ男はハッとした顔をしたが、落ち着きを取り戻すと、ベーシックアースの呪文をギターで奏でる。


 地面から蔦が生えて盗賊たちに襲いかかる。


「くそっ! 撤退だ! 覚えてやがれ!」


 盗賊たちは馬にまたがりその場を後にした。


「ありがとうございます」


 降りてきたうさぎ男に礼を言う。


「気にしないでくれ。困っている人を見ると放っておけない性分で。それに、あいつらの言う通り、ただの逃走者さ。君は非力ながらも笹の葉一つでやつらに立ち向かった。僕には、運命に立ち向かう勇気もない」


 彼の全身を見渡すが、私と同じで旅にしては、随分と軽装備だ。


「あの。失礼ですが、どちらに旅をされているのです?」


「あてもない旅だよ。ま、強いて言うなら、夢の国に居るまだ見ぬ彼女かな」


 妙なことを言う。あまり、事情を深掘りしない方が良さそうだ。


「君は?」 


「私はあこがれの研究室に向かって旅をしていて。私、変ですよね。夢みたいなものに憧れて」


「理想を持つことは悪いことじゃないさ。現実ばかり見ていては、生きる意味がない」


 彼の背中が少し寂しそうに見えた。



♪ララ(3日前)♪


 ミミちゃんが私の研究室に向けて旅立ったという知らせを受けた。治安が悪いと言われている荒野を突っ切ろうとしているらしい。心配だわ。


 居ても立っても居られず、ハープ魔法で探知アンテナを立てることにした。


 ホテルの窓からハープを演奏しても問題なさそうな広い場所を探す。この街、うさぎ王国だけど、土地勘ないんだあ。


 工事現場が目に入る。怒られそうだけど、この際やむを得ないか。


 無断侵入し、ハープを広げて弾く準備をした。その時だった。


「あぶねえっ!」


 その声に呼応して、天を見やると、鉄骨がこちらに向けて落下した。


 しまった! 腰がすくんで今すぐは逃げられない!


 私の命はここで終わるのね。そう、思ったときだった。


 チューバの重厚な音が鳴り響き、その音に呼応して、鉄骨の落下速度はゆるやかに減速し、そして、止まった。


 音の方を見ると、ツナギを着たいぬ族の男がどっしりと構えていた。


 鉄骨は離れた場所にどしりと落下した。


「あ、ありがとうございます」


「危ないじゃないか。お姉さん。ここは侵入禁止なはずだぜ」


「ごめんなさい。あの。お名前は」


「名乗るほどの者じゃないさ。そうだな。いぬ王子とでも名乗らせてもらおうか」


 日焼けしていて王子という風体ではない。彼流のユーモアだろうか。


「ところであんたは?」


「魔法の研究者です。と、言っても地味な仕事ですよ。日々、地味な実験や雑務に追われて」


「現実に生きるのは悪いことじゃないさ。夢ばかり見ていては何も成し遂げられない。理想ばかり唱える人間が嫌いな性分でね」


 彼の背中が少し悲しそうに見えた。

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うさ耳王子といぬ王子がロックオン!本当は男の僕が二股悪女ムーブしないとみんなの命を救えないなんて

キャラ相関図

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