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contract(コントラクト)ー白と黒・禁忌の契約ー  作者: Nesn


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第八話・憑依

悪を受け入れてしまうのは

自分も悪だからだろうか



【第八話】


冷えきった沈黙を破ったのは、一番臆病な楓だった。


楓「そ、その契約者はどうなったんですか? まさか、死ん…」


学園長「いや、死んではおらぬ」


楓「よ、よかった…」


安堵した楓を、彩葉が鋭く睨みつけた。


彩葉「楓。あなたは何も分かっていないわ」


その声音は氷のようで、楓は怯え、肩をすくめた。


学園長「彩葉、責めるでない。無知なだけじゃ。順を追って話せば済む」


彩葉「……はい」


学園長「楓よ。わしは“死んではおらぬ”と言ったな。あれは今も尚、有効じゃ」


楓「え…?」


学園長「白き契約者は、今も死んではおらぬ」


その瞬間、空気が震えた。


空藍「黒き神獣が大黒柱となったのは…いつの時代の話ですか?」


学園長「千年ほど前じゃ」


三人の息が同時に止まった。


学園長「不死の黒き神獣と【contract】したそやつもまた不死の身体となっていた」


空藍「まさか、そんなに強力な術なのか…」


学園長「黒き神獣の契約者は当時、幼子おさなごの姿をしていた。あれほど強靭な神獣が契約相手に幼子を選ぶとは。あのような事例は後も先もあの者達だけだった」


記憶の中の言葉が呪いのようにこだまする。


”痛みも共有されると言われているわ。契約者が血を流せば、神獣にも同じ痛みが走る。逆も同じ”


”同じ痛み”


”永遠に続く拷問”


月狼「だから、過ちなのか…」


自分が発する声がこんなに冷淡だったことは無かった。


濁った白眼が僕を捉える。

再び胸の奥に痛みが走り、思わず顔を歪めた。


学園長「おぬしには残酷に感じるであろう。無理もない…」


学園長がそう呟く。


この時には、胸に走る痛みの元凶が何となく分かっていた。


学園長「黒き神獣は千年もの間、地獄の業火の中で死ぬことさえ許されずに煉獄を支えておる。その痛みや苦しみ計り知れないだろう。そして、その激しい痛みは契約者である幼子にも伝染し続けた」


楓「な、なんて事を…」


楓は震え、口元を押さえる。


学園長「やがて痛みは憎悪へ変わり、そやつを蝕み…そして――」


一拍の沈黙。












学園長「…その子は漆黒を纏った」














僕の中で、何かが蛇のように蠢く。


背骨の奥から這い上がる影。


身体の主導権を侵される痛み。


そして、その苦痛は”黒”を連れてきた。
































月狼(???)「……鬼と呼ばれるべきは、どちらだろうな?」




僕の声なのに、僕の言葉では無かった。


その凶々しい気配に彩葉先生と外で警護にあたっていた上忍が学園長との間に立ち塞がるが学園長はそれを手で制した。


緊迫した空気に楓と空藍にも緊張が走る。

それでも、空藍は僕の側を離れなかった。


学園長「…おぬしを苦しめるつもりなど、無かった。ただ、必死だったのじゃ…」


月狼(???)「引き裂いておいて、なにを戯けた事を…」


学園長「引き裂くつもりはなかった。知らなかったのじゃ」


月狼(???)「ならば返せ…」


学園長「それは出来ぬ。おぬしも分かっておろう」


月狼(???)「だったら…全てを壊してやる」


学園長「よすのじゃ…もう、やつには会えぬ」




不気味な間が両者を繋ぐ。




月狼(???)「器があれば可能なのだろう?」


(…器?なんのことだ…)


自由は奪われても、思考は奪われていなかった。


学園長「その子を解放するのじゃ…」


月狼(???)「解放?…ならば、いっそのこと殺そうか?」


心臓が奏でるのを止めた。


息ができない。


(あぁ…僕はここで死ぬのか…)














学園長「空藍、今じゃ!!」


その言葉を聞いた瞬間、空藍は躊躇なく小刀を僕の手に突き立てた。


月狼「…っぁあ”!!」


痛みが僕に自由を戻す。

それを確認した空藍は、直ぐに僕の傷口に触れた。

すると、あっという間に傷は閉じ、痛みも消える。


月狼「僕…どうして…」


自我が奪われていた恐怖が雪崩のように押し寄せて受け止めきれない。


空藍「大丈夫だよ、月狼。大丈夫だ__」




その声を聞いたのが最後。


僕は意識を失った。




学園長「よくやった、空藍。彩葉、任務中の上忍を数名呼び戻せ。里の警護を固めよ。夜が来る。闇夜はあやつの縄張りじゃ」


彩葉「承知」


学園長「わしは急がねばならん。一刻を争う」


煉獄が地響きの咆哮をあげた。


学園長「気を抜くでない。


___“夜叉” がやってくるぞ」




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