第二話・煉獄
前世の僕の罪は
今世の僕の罪なのだろうか
【第二話】
《煉獄》とは前世で罪を背負った者達がその罪を祓い落とす場所。
来世で《天国》へ行く為の清めの世界。
ここは《天国》と《地獄》の狭間に存在しているため、常に不安定で誰もがどこかで揺らぎを感じながら生きている歪な地、それが煉獄なのだと幼少期に教えられた。
つまり僕達は皆、罪人らしい
そう言われても実感はない。
前世でどんな罪を犯したのかなんて覚えていないし、 そもそも、本当に前世というものが存在したのかさえ確かめようがない。
ただ、”罪人”という言葉だけは幼心に妙に冷たく残ったのを覚えている。
「気を抜けば、煉獄ごと地獄に沈むことになるぞ」
昔、大人達はよくそんなことを言っていた。子どもを脅すための決まり文句だと思っていたが、もしかすると少しは真実を物語っているのかもしれない。
なぜなら、この世界はいつも何かが、軋むように震えている。
それは地震ともまた違う。
まるで世界そのものが、もがき苦しむような__
そんな揺れだ。
悲鳴を上げているかのような強風が吹き荒れることもあれば、しくしくと泣いているような冷たい雨が絶え間なく降り注ぐ日もあった。
幼い頃はこんな世界がどこか不気味で、よく目を閉じて息をひそめて眠ったものだ。
怖かったわけではない。
ただ、目を背けたかった。
煉獄が、どれほど不安定な均衡で保たれているのか。
その意味を僕は深く考えたことがなかった。
いや、ずっと考えようともしなかったほうが正解かもしれない。
この世界に存在しているのに、この世界の何もかもに興味が無かった。
でも、今は祖父が最期に語った
”漆黒の悪鬼”そして”大黒柱”
という”2つの黒の謎”が僕の存在の歪さと関係している気がしてならなかった。
その謎を追求したくて堪らない。
まるで、色の無い世界に
一つの色が生まれたような…そんな感覚。
祖父の言い残した存在の正体知りたい気持ちは日に日に強みを増し、まるで僕を呑み込んでいくようだった。 強烈なまでの好奇心。いや、もしかしたら幼少期から植え付けられた呪縛から解放された反動かもしれない。なんにせよ、自分でも何故ここまで惹かれるのか理解ができなかったが
”2つの黒の謎に近づきたい”
その想いだけはどうしても止められなかった。
そして、このまま待っていても訪れない答えならば自ら出向こうと思ったんだ。
僕を引き止める祖父はもういない。
例え進んだ先に何が待ち構えていようと、今は立ち止まる事の方が怖かった。
その時、世界がまた軋みだす。
まるで僕の背中を押すように…




