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contract(コントラクト)ー白と黒・禁忌の契約ー  作者: Nesn


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第十八話・代償

今だけは月を隠す影が欲しい

この涙が見られないように___



【第十八話】



大蛇「ようやく、老いぼれがこの世を去るか」


白夜「口を慎むのだ、世継ぎの大蛇よ。そなたが生まれる遥か前から、この地を守り抜いた戦神ぞ」


白夜の声は鋭く、大蛇を押し黙らせた。


大蛇「年寄りどもは口うるさくてたまらぬ…」


白夜「そなたの首が未だ一つなのも、八岐の力には遠く及ばぬ証よ」


大蛇「黙れ。たかが九尾の巫女ごときが…!」


怒りのままに尾を振りかざす大蛇。


楓「っ、危ない! 白夜様!」


楓が結界を張ろうとするが、彩葉が腕を押さえた。


彩葉「大丈夫。あれは実体じゃないわ」


大蛇の尾が白夜を掠めた瞬間、白夜の姿は霞のように散った。


朧「幻身術か…」


空藍「本当の白夜様は、こちらにいらっしゃらないのですか?」


彩葉「ええ。先程、先代の八岐大蛇様のもとへ戻られました……最期が近いのでしょう」


ふと、疑問が浮かび先生へと問いかける。


月狼「幻身術と分身術は何が違うのですか?」


彩葉「幻身術は幻の姿なので、言葉や思想を発する事は出来ても術の使用や物に触れたりする事はできません。逆に分身術は身体を分ける術なので威力は下がりますが術の使用及び物に触れたりする事も可能です。ただし、より精度の高い分身を作るには相当の痛みを伴います。時には死す事も…」


月狼「そうなんですね…知りませんでした」


空藍「…彩葉先生は本物ですか?」


そっと彩葉に触れる空藍。


彩葉「えぇ、私は本物です」


彼女に触れた瞬間、空藍は時が止まったかのように彩葉を見つめた。


僕に向ける瞳とも、楓に向ける瞳とも違う視線。


楓「か…空藍、姉さんが困ってるよ」


空藍「あ…すいません」


彩葉「いいのよ。疑うことは良い事です」


楓は彩葉を見つめる空藍の瞳を追いかけていた。まるで、こっちを見てと願うように。


朧「白夜様が近くにいずとも、この完成度…感服致します」


白夜「ありがとう、朧」


大蛇「くだらぬ。貴様がおらぬなら黒が来たら誰が我と巫女を守るのだ?契約の儀はただでさえ、無防備になりやすいというのに…こやつら程度で奴を食い止められるのか?」


白夜「…縁がおる」


大蛇の目つきが変わる。


大蛇「縁だと?…あの小童が我と巫女を守れると?」


白夜「さよう。あやつは過去に類を見ない天才だ…私がいなくとも縁なら、この者達と共に夜叉を食い止めてくれよう」


大蛇「…っ」


言葉を詰まらせる大蛇。


大蛇「……四季を早く連れてまいれ!」


大蛇の声に焦りの色が見えた。






***






四季の控えの間__



四季「私の護衛を頼まれたの?それとも…見張りかな?」


縁「…両方だ」


縁が答える。


四季「逃げないわよ。誰も縁から逃げれないもの…」


縁「…まぁな」


四季「本当は気付いてたんでしょ?私が世継ぎの大蛇の巫女だって…」


縁「……あぁ」


四季「…やっぱり…」


四季が欠け始めた月を見上げた。


四季「…私が…一緒に逃げてと言ったら?」


縁「…出来ない」


四季「そっか…」


四季「…だったら、あの時…夜叉に捕まっちゃえば良かったな…捕まってれば…逃げられたのに」


縁「…逃さねぇよ」


縁の翠緑色の目が四季を見つめる。


四季「…私の気持ちには…気付いてた?」


縁「……」


四季「本当…残酷な男…」


四季の頬を涙が伝う。


四季「…大嫌いよ…あんたなんか…」






***





白き神獣は月の光を浴び、とぐろを巻いて四季を今か今かと待っている。


そこへーー


縁の付き添いで姿を現す四季。

その姿は契約儀式の為に白い羽織りを身につけていた。


空藍「まるで、呪われた婚姻みたいだな」


空藍の言いたいことはわかる。

この儀式はとても異様だった。


白夜「これより”contract”の儀を始める」


大蛇「四季よ…やっとお前と結ばれる時がきた。我は猫の姿になってでも、この地よりそなたを望んだのだ」


四季「…大蛇様」


大蛇「この世界に興味など無かったが、四季…そなたは別だ。我は、そなたとなら契りを交わし、喜んでこの身を神柱へと捧げよう。この世界でそなただけが我の望みだ」


四季「………」


大蛇「我を恐るな…四季…そなたの心に誰が棲みついていたとしても構わぬ」


縁「………」


四季は俯く顔をあげて大蛇を見つめる。


四季「大蛇様、名前をお教えて下さい」


大蛇「よかろう…我の名前は時雨(しぐれ)


名を告げると大蛇は自分の血を四季に捧げた。その血は月光に照らされ、暗い赤が妖しく輝き、その受け取った血を口へと運ぶ四季。


大蛇「我が名を呼べ。汝の身体に我が血を刻もう。今より我は汝と共に在る」


四季「…時雨様」


大蛇「我も求める。代償を捧げよ___」


その時、空気が凍った気がした。

まるで、これから起こる不吉な出来事を知らせる前触れかのように…







大蛇「我が求めるものは

   ____四季、そなたの心だ…」






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