プラウダ
半蔵門線K駅のそばにある、先日たまたま入った喫茶店プラウダという喫茶店がある。実はネットで検索してもこの店はヒットしないし、さらにここで知り合ったマスターは何やら謎めいている。
あくまでプラウダは喫茶店であるが、ここでは何か違うことも起こっているのではと思う今日この頃。
この店に通い始め、上司の三咲先輩をここに連れて来て、ここのボルシチが繋ぐ縁?で結婚までした僕、愛川だが、現在、仕事で悩んだ時などはプラウダでの心地よいひと時で明日への活力を蓄える毎日。三咲先輩もここでの寄り道は目をつぶってくれる。
三咲先輩は結婚するとデジタルノマド宣言をして、ほぼ会社に来なくなってしまった。会社とはメ-ルとオンライン会議のみ、でもここプラウダには電話をかけてくるし、もちろんボルシチを食べにも来る。
プラウダはロシア語で真実を表すらしい。ここに通い、あっという間に僕は三咲先輩と結婚まででき、自分自身の真実に気づいたような気はする。マスターは恒彦さんと言う。しかし、あまり僕らは会話らしい会話はしない。話すことは専ら読書のこと。後は天気や体調のことくらい。
雨の日の夕方は何故かここに来たくなる。何故なのかわからない。雨の夕方にこの店を見つけた印象が強かったこと、雨の日に似合う本がたまたま好きなこともあるかな。来た時に読んでいたのはチェ-ホフだった。
今日読んでいるのはト-マスマン「魔の山」。雨の日に合うと思うのはもちろん僕の見解。マスターは僕が読んでいて周囲が暗くなると読書灯を持ってきてくれる。そして、「あ-.魔の山ですね。中の悪女役のショ-シャ夫人はロシア系です。」
「そうですね。でもハンスが彼女にメロメロなのは滑稽ですね。」
「まあ私は従兄弟のヨ-アヒムに惹かれます。」
「僕もです。あとセテムブリ-ニにもです。」
マスターはニコッとするとカウンターに戻っていった。
でも滑稽なハンスの姿は、マスターからすると僕もまさに僕がそう見えているかもしれない、三咲先輩にメロメロのように見えているんだろうなあ、と我ながら苦笑いしてしまう。
僕が魔の山のは上巻を読み終え下巻をカバンから出した時にドアが開きその人は入ってきた。
この話のエピソードゼロと言うべき短編も公開してます。是非合わせてご覧ください!
https://kakuyomu.jp/works/822139839468919310/episodes/822139839469043866




