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キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~  作者: 乃神レンガ


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027 拠点作りと話し合い


 拠点にすると決めてからは、動きが早かった。まず僕の手荷物を元に、軽井沢さんの【複製】でそれらを増やしていく。


 そして僕はその間に、複製した空のリュックサックを前と後ろに身に着けると、池を渡って拠点作りに使えそうな物を詰め込んでいった。


 また両手には、それぞれ比較的マシな壊れかけの家具を担ぐ。


 普通ならここまでの量を一度に運ぶことはできなかったけど、それも指山さんの【物体強化】で可能になっていた。


 ちなみに指山さんの【物体強化】は、一度発動すると一時間ほどは有効らしい。


 それと一応指山さんには、拠点の防衛をしてもらっている。軽井沢さんは非戦闘員なので、なるべく一人にはしないことにしたのだ。


 また軽井沢さんの異能は、僕たちにとって命綱になるだろう。なので軽井沢さんには、常に誰か一人は付いていることになった。


 そんな感じで何度か拠点と往復しつつ、虫のクリーチャーは発見次第倒している。


 加えて池を毎回渡る関係上、僕は常にズボンを上に巻いており、なおかつ裸足だ。けど【物体強化】により裸足でも全く痛くないので、支障はなかった。


 他にも虫のクリーチャーの死骸についても、できる限りは回収をしている。解体してアゴの一つを鉄の棒に(くく)りつければ、簡易的な槍になるからだ。


 そして指山さんは、僕の持ってきた廃材などを使い、拠点に壁を作り始めている。


 予定では自動販売機を中心にした感じで、拠点を作ることにしていた。


 周囲から目立つのは避けられない以上、自動販売機だけでも外からは見えないようにしようと、そう考えたからである。


 また軽井沢さんも意外と手先が器用なので、簡単な道具を作っていた。加えて使えそうな釘などを廃材から見つけ、【複製】している。


 原始的なハンマーも作れたらしく、それで廃材に釘を打ち付けることもできた。


 そうして少しずつ作られていく拠点を見て、僕はまるで秘密基地を作っているような気持ちになり、なんだか楽しくなってくる。


 クリーチャーや異能などが存在する謎の場所に閉じ込められている状況だけど、それによって(すさ)んだ心が、なんだか安らいだ気がした。


 たぶんこうして楽しむことも、精神的には必要なことなのだと思う。それが結果的に、生き残ることに繋がるかもしれない。


 不安や緊張でいれば、おそらく心が疲弊(ひへい)していく。そうなってしまえば、集中力や注意力も散漫(さんまん)になっていくことだろう。


 僕はこのデスゲームのような状況で、何よりも心の状態について意識を向けていた。


 体は大丈夫でも、心がダメになってしまえば生き残れない。もちろん体も大事なことには違いないので、そちらも大きな怪我がないように気をつけたいと思う。


 そうして何事もなく時間が過ぎていき、僕たちの拠点は、自動販売機を中心にしてようやく完成する。


 その見た目は小屋としては、とても不格好な感じだった。クラフト系ゲームで(たと)えれば、いわゆる豆腐ハウスという印象を受ける。


 だけど壁と屋根があるだけで、とても安心感があった。一応窓やドアもあり、戸締りもできる。


 こうした細かいところは、軽井沢さんが作ったみたいだ。やはり軽井沢さんは、かなり器用なようである。


 ちなみにこの陸地は池に囲まれているけど、そこそこ広い。小屋を建てても、まだまだ余裕があった。


 そもそもこの場所自体も、サッカーコートを四面分ほど合わせたくらいには広いのである。天井も高く、巨大な吹き抜けの大広間という感じだ。


 その中央に中州(なかす)のような陸地があり、その周囲をそれなりに大きな池が囲んでいる。


 池は深いところでも膝くらいなので、湖という規模ではない。それとたぶんこの池は天井の大穴から、雨が降って溜まったのかもしれない。


 けどここで、僕はあることに気がつく。


 いや、不自然にここを囲むような池になっているし、天井が崩落したのならその残骸があるはずだ。しかしそれっぽい物は、周囲には存在していない。


 なにより自動販売機という不自然極まりない物が置いてあるし、なんだかここは、誰かがデザインした場所のようにも感じがした。


 だとしたらこの池は人工的に作られたということになり、元々の規模も相まって、湖ということからは外れるだろう。


 拠点もできて一息つくと、僕はそんなことを考えられる余裕ができた。


 そしてそのことを二人にも共有しながら、軽井沢さんが【複製】した食料で食事を摂る。


 ちなみに虫のクリーチャーを焼いて食べるという案もあったけど、それはしていない。


 ただ卓上塩が自動販売機にあったのは、虫のクリーチャーを焼いた際の調味料という可能性がある。


 いずれ困窮(こんきゅう)したら、虫のクリーチャーを食べる事になるかもしれない。


 どこかの部族は普通にイモムシを食べるみたいだし、以前どこかでクリーミーな味という感想を聞いたことがあるような気がした。


 もしかしたら意外と、虫のクリーチャーは美味しいのかもしれない。でもそれを試すような勇気は、まだ僕たちにはなかったのである。


 そうして食事を終えた後は、あることを話し合うことにした。その内容とはずばり、このデスゲームの脱出方法についてだ。


 単独のときはまだ気にしても仕方がないと考えていたけど、仲間が集まったならその限りではない。


 脱出方法を模索することは、今後を生き抜く上でも必要なことだろう。何か目標や指針があった方が、集団では動きやすくなる。


 それに僕以外の意見を聞くことで、何か新たな発見があるはずだ。もしかしたら本当に、脱出する方法が見つかるかもしれない。


 落ち着いた今だからこそ、話し合うべき内容だった。


 そうしてこのデスゲームの脱出方法について、僕たちは真剣に意見交換をし始める。


「やっぱりここがデスゲームだと仮定した場合、参加者の人数が脱出に関係しているんでしょうか?」

「その可能性はありそうッスね。あとは考えたくないッスけど、最後の一人だけが脱出できるという可能性もあるッスよ」

「うむむ。俺はデスゲームとやらを、全く知らないから、正直力になれそうにないな」


 そんな会話から始まり、僕と軽井沢さんはデスゲーム系の漫画などを読んだことがあったので、そうした意見が出る。


 対して指山さんは普段漫画などをほとんど見ないらしく、デスゲームというジャンルについては、全く知らないようだ。


 なので基本的には僕と軽井沢さんが意見を出して、指山さんの質問に答えていく感じになった。


 けどその形が意外と合っていたのか、スムーズに意見交換が進んでいく。


 そうして話し合ったことにより、最終的にこのデスゲームの脱出方法については、このような予想が出そろった。



【予想脱出方法】

 ・参加者の一定数の減少。

 ・参加者が最後の一人になる。

 ・どこかにある脱出口を見つける。

 ・デスゲームをクリアする。

 ・ボスクリーチャーを倒す。

 ・クリーチャーを一定数倒す。

 ・参加者同士で殺し合い、一定数殺す。

 ・時間経過によるタイムアップを迎える。

 ・主催者? が何らかの理由で解放する。

 ・主催者? との勝負で勝利する。

 ・壁などを破壊して無理やり脱出する。

 ・どこかに脱出アイテムが存在している。

 ・僕らの上にある天井の穴から脱出する。

 ・スマートウォッチを一定数集める。

 ・脱出用のアプリが現れる。

 ・エンを一定金額集める。

 ・エンでどこかにある脱出権利を購入する。

 ・別の自動販売機に脱出方法が売っている。

 ・脱出可能な異能を持つ人を探す。

 ・理由なく突然元の場所に帰される。

 ・死ぬこと自体が脱出方法。死んだら元の場所で目覚める。



 とりあえず今出た感じだと、これらが現状での予想だった。


 また前提として、この廃墟が第一ステージ的な可能性も十分にある。


 なので何かを達成したら、次の第二ステージに移動させられるかもしれない。そのことについても、十分に注意することにした。


 そして一番の問題は、そもそも脱出方法などが存在しない場合である。けどそれについては、どうしようもない。


 なので僕たちはそれについては、考えないことにした。きっとどこかに脱出する方法があるはずだと、そう信じることにしたのである。


「いや~。可能性が多すぎて難しいッスね。それにデスゲームだったら、最初にちゃんとルールを説明してほしいッス。異能とスマートウォッチだけ渡して放置するなんて、酷いにもほどがあるッスよ」


 確かに、軽井沢さんの言う通りだった。デスゲームなら、最初に何かしらのルールを言ってもいいものだ。


 するとそこで、指山さんがあることを口にする。


「ひとつ疑問なんだが、どうして二人はこれをデスゲームというものだと思っているんだ? 俺からしたら、謎の神隠しにあったようにしか思えない」


 それについても、最もな意見だった。確かに説明が何もない以上、これがデスゲームだという保証はない。


 もしかしたら普通に、異世界転移という可能性もあり得た。


 ただそうなると、スマートウォッチや自動販売機などといった、現代的な物があることに違和感がある。


「だとしたら崩壊した現代世界に、異世界転移させられた可能性もあるかもしれませんね。もしそうならあの天井の先を確認できれば、何か分かるかもしれません」

「異世界転移ッスか。その可能性もあるッスね。崩壊世界というのも、なんかだか心が(おど)るッス」

「なるほど。言葉の名称から意味が分かる。ならどうにかしてあの天井まで上がるために、何か足場などを用意する必要があるな」


 色々と謎が多く、穴だらけで判断しきれない部分もあった。特にスマートウォッチの存在が、その最もな部分である。


 けれども現状での方向性は、これで決まったと考えてもいいだろう。


 僕たちは他の脱出方法も出来る限り探しなら、まずはあの天井の先を確認することを目標にするのだった。


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