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キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~  作者: 乃神レンガ


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001 デスゲームに巻き込まれた狐顔


 気がつけば僕は、薄暗い廃墟(はいきょ)のような場所にいた。


 周囲にはサビついて壊れた机や椅子が転がっており、木片や金属片もいたるところに落ちている。


 ジメジメした湿度と、コケや植物が生えたコンクリートの床や壁。天上には蛍光灯があり、ほのかに周囲を照らしていた。


 こんな廃墟の一室のような場所に電気が届いていることにも驚きだが、そもそもここはどこだろうか?


 そう思い寝ていた体を起こして、その場に立ち上がる。高校の制服である長袖のワイシャツとズボンから汚れをはたいて飛ばす。


 また体を軽く動かし、下校時に履いていたスニーカーを立てて、足首を回した。


「本当に、どこだここ?」


 思わずそう呟くほどに、脳内は混乱している。一見冷静なように振る舞うが、冷や汗をかいていた。


 確か、高校の下校途中だったはずだ。けど不意に足元から浮遊感がして、その後の記憶がない。そうして気がつけば、この部屋にいたのである。


 まじで訳が分からないな。どこかに拉致されたのか?


「は?」


 そう思いながらスマホを取り出そうとすると、ポケットに何も入っていないことに気がつく。それどころか、財布やハンカチもない。


 加えて下校時に持っていた学生バッグも、どこにも無かった。つまり衣服など以外は、どこかに消えてしまったようだ。


「まじかよ……」


 謎の場所にいたことよりも、スマホが消えた事実の方が辛く感じてしまう。右手を頭部に持ってきて、天を仰いだ。


 しかし無くなった物もあれば、逆に増えている物もあった。


 はぁ。無いものは仕方がないが、これはなんだ? スマートウォッチか? そんなの着けていた覚えはないのだけどな……。


 そう思いながら僕の視線の先には、左腕に巻かれている黒色のスマートウォッチがあった。


 取り外せる部分が無く、ピッタリくっついていて隙間が無い。完全に左腕に固定されていた。

 

「うわっ、これはもう、嫌な予感しかないんだが……」


 状況が状況なだけに、僕はそう口に出してしまう。謎の場所への拉致に加えて、謎の外れないスマートウォッチ。これはもう、アレしかない。


「これ、デスゲームじゃね?」


 様々な漫画などに触れてきた十七歳である僕の思考は、その答えに辿り着く。


「死にたくねーなぁ」


 そう呟くと、唯一情報が得られそうなスマートウォッチの液晶に触れた。


 すると真っ白な画面の中央に、『8:07』という時刻が表示される。


 おかしい。僕が下校した時刻は、もう夕方だったはずだ。これが夜の八時だとすれば問題ないけど、朝の八時だった場合一晩寝ていたことになる。


 そんな風に思いながらも、スマートウォッチを再度タップしてみると、画面が切り替わった。


「!? これは……」


 切り替わった画面には、二つのアプリがある。一つはお財布のアイコンであり、特に驚くほどではない。だがもう一つが、問題だった。


 そこには、デフォルメされたキャラクター風の僕の顔がアイコンになっていたのである。


 黒髪に特徴的な糸目。どこか笑っているように見える表情をしていた。


 たぶん糸目だし、僕だよな。これ。デフォルメされているからか、まるで狐みたいな感じがする。


 まあ、よく似たようなことを言われるし、気にしても仕方がない。とりあえず、このアプリを起動してみよう。


 そうして自身の顔がデフォルメされたアイコンのアプリを、僕は起動した。


 すると画面には、こんなものが表示される。



 名前:裏梨希望(うらなしのぞむ)

 年齢:17

 性別:男


 異能

【吸収融合】



「異能?」


 どうやらこの推定デスゲーム? は、異能バトルものだったらしい。


 僕に与えられているのは、【吸収融合】という異能だった。しかし、使い方などは一切分からない。


 タップしても何も出てこないし、脳内に都合よく使い方が浮かび上がってくることは無かった。


 なのでもし本当に異能が使えるのだとしたら、この名称から予想するしかない。


 というか普通に状況を受け入れているけど、これでドッキリとかだったら笑える。


 それと、僕の本名と年齢もそのままだ。間違ってはいない。


 この糸目に狐顔と名前から、周囲からは『裏切りそう』とよく言われる。


 けど僕は決まってこう言うんだ。『待ってくれ、関西弁じゃないから裏切らないって』と。


 だけど悲しいかな。誰も信じてくれなかった。裏切っていないのに、裏切者というイメージが付きまとう学校生活だった。


 まあ、ネタとして昇華されているから、そこまで苦じゃなかったけどな。


 けど学校ではネタで済んでいても、ここが本当にデスゲームだとすれば、話しは変わってくる。


「まさか、僕の個性が裏目に出るとは……」


 デスゲームものって、信用できる仲間と行動を共にするけど、それでも途中裏切者が出たりするよな?


 絶対僕、怪しまれるでしょ。


 それに何かあれば、切り捨てられる対象になるかもしれない。


 現実とは残酷だな。物語ならおいしいポジションだけど、リアルだと笑えない。


 いや、これは僕の考えすぎかもしれないし、まだ希望はある。僕の名前の漢字も希望だし、ここは諦めずにいこう。


 そう信じる事にした僕は、画面を一つ前に戻し、続いてお財布のアイコンをタップした。



 100エン



 シンプルに、そう表示されている。


 取引するような項目もあるので、もしかしたら他の人に渡したりもできるのかもしれない。


 これ、お金ってことだよな? そして100エンは名称からして少なく感じる。


 でもたぶんとても重要なものだろうし、使う場所があっても大事に使っていこう。


 そうしてスマートウォッチから得られる情報は他に無さそうなため、僕はこの部屋の中を調べることにした。


 にしても、ゴミしかないな。この鉄の棒は、一応持っていこう。多少は武器になるだろう。


 僕は机の足だったと思われる鉄の棒を拾って、それを持っていくことにした。


 もし戦闘系の異能持ちで、好戦的な者に遭遇したら心もとないけど、何もないよりはマシでしょ。


 僕の異能である【吸収融合】は、たぶんこれ単体では戦闘に役には立たないだろう。


 おそらく何かを吸収して、僕と融合することで力を発揮するような気がする。


 一見強そうだけど、ここはたぶんデスゲームだ。地雷という可能性もある。


 可能性としてあるのは、一度融合したら元の姿に戻れないとか、普通にありそうだ。


 チートで楽々無双なんて、漫画の世界だけだろう。まあ、今の状況は漫画の世界みたいだけど。


 ただ安易に使うのは、危険すぎる。たとえばこの鉄の棒と融合して、鉄人間になれるとしても、その後苦労するかもしれない。


 何だかそう考えると、不安になってくる。もっと分かりやすい異能だったらよかった……。


 けど試せない以上、まだドッキリという可能性を、僕は信じたい。デスゲームとかすぐに考えるのは、学生という若さ(ゆえ)だ。そんなことは、実際起きるはずがない。


 そう自分に言い聞かせて、僕は不安を消し飛ばす。


 さて、この部屋は他に何もなさそうだし、いよいよここを出るか。


 そうして鉄製のドアに近づくと、何か電子パネルのようなものがドアノブの上に埋め込まれている。


 鍵を開ける箇所(かしょ)は無く、ドアノブを回しても開きそうにはない。


 見れば電子パネルには、数字の『10』と表示されていた。


 ここに来て数字の10ということは、たぶんアレしかないよな。


 そう思いつつ、何となくスマートウォッチをパネルにくっつけてみる。


 すると数秒ほどして、パネルが一瞬光った。それと同時に、ドアのカギが開錠される音がした。


 おそらく、これでカギが開いたのだろう。それに所持金も、100エンから90エンに減っている。僕の考えは間違っていなかったみたいだ。


 つまりこのドアを開けるためには、10エン支払う必要があったということである。


 であれば他のドアを開けるのにも、この金銭が必要なのだろう。

 

 そう考えると、初期の100エンが本当に少なく感じる。どこかで増やす手段があるのだろうか?


 とりあえず、先に進んでみよう。恐怖と不安があるけど、ここに留まり続ける方が、何となく危険な気がした。


 鉄の棒を構えながら、ゆっくりとドアを開いていく。


 よし、誰もいなさそうだな。


 僕は周囲を警戒しながら、部屋から出る。ドアの外は長い通路のようになっており、当然部屋の中のような廃墟(はいきょ)となっていた。


 またジメジメとしており、ひび割れたコンクリートの壁からは、どこからか水がじわりと湧き出ている。


 コンクリートの床からも植物が生えており、泥やゴミが散乱していた。ただそんな廃墟なのにもかかわらず、天上の蛍光灯にはなぜか明かりが灯っている。


 本当に、ホラーとかデスゲームとかが、ピッタリな場所だな。


 しかし僕がそう思った時だった。不意に通路の角から、何者かが飛び出して来たのである。


 新作を始めました。

 初回に四話投稿いたします。

 次の更新は十分後です。


 ストックは十万文字以上あるので、しばらくは安定して毎日更新ができると思います。


 どうぞよろしくお願いいたします。

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