8話
梅星たちが“血のピラミッド”に向かって進むとき、白身の海の底にうごめく物を把握出来なかった。
表面を焼かれた白身は雪のように真っ白なフィールドを作り上げていた。底にいるのは白い怪物だった。
「ドコォ!!キミはドコォ!」
白い怪物は焼かれた白身を突き破り姿を現した。
「今度は何が来たんだ?」
「ドコォ?ドコォ!キミは?カラは?」
カラザが襲来した。
「自己紹介すればいいのかな?梅星っていうけど。」
「キミは?キミは?キミは?キミは?」
「違うぞ……コイツは俺たちの事を知りたいんじゃ無さそうだ。」
「ドコォ?隠した?格下のお前たちが?オデを虐めたんだで?ドコォ!」
カラザは梅星を捕まえると海に引き摺り込もうとした。梅星は潰れ梅になると、そのままカラザの触手のような体からスルリと落っこちた。
「危ない!」
パンのミミックは口を大きく開けて潰れ梅をキャッチする。
「このまま私の中に居れば復活します。」
「アイツも白くて地面も白いからどこからくるか分からんぞ!」
ウヌマーはいつでも噛みつける体勢になったが、流石に目は効かなかった。
「キミっていうものを探さないと!」
「キミって何よ!何で襲ってくる奴に協力するんだ?」
口出汁は自分の鍋の水面が揺れるのを感じた。
「俺の真下にいるぞ!」
口出汁は自分の亠を自分の出汁の水鉄砲で飛ばしてカラザに捕まえさせた。
「今だ!喰え!」
ウヌマーはカラザにかぶりついた。
カラザは卵の殻の中でガブリエスに繋がっていた。
「あの黄色いタマッコロがキミの正体だ。」
「バカだコイツ。記憶が一行で終わりやがった。」
「ハァ?どうするんだよ?焼け死にました何て言うか?」
「違うな。あの死体を復活させるんだ。おい!パンの箱。梅星は?」
「復活するには何かの色が変わらないといけないんです。」
「先に言えよそのルール!」
「オデ、本気でお前ら捕まえる。」
カラザの触手は10本に増えた。カラザはカラーケンになった。
そのまま巨大な触手はところ構わず白身を突き破り、ウヌマーも口出汁も触手に捕まえられた。
「強力だぞコイツ!四肢がバラバラにされる!」
「これだな?」
ガブリエックスエスをパンのミミックは飲み込んだ。
マリアの体から、オレンジの太陽が出てきた。
オレンジの太陽は空の色を変えた。
「戻ってきたよ。」
梅星はパンのミミックから出てきた。
「おい!お前が何かの色を変えるんだ!急げよ!」
ウヌマーは口出汁に指示を出すだけで精一杯だった。
口出汁は鍋の持ち手をカラザに持たれて、ぐちゃぐちゃに振り回された。カバンをひっくり返して漁るような格好だった。
「おー?どゆことよ。まぁ、手っ取り早く……」
梅星はオレンジの太陽めがけて飛ぶために、カラザの触手の上を転がって行った。
触手の上を転がる梅星を捕まえようと他の触手が掴みかかって来たので、カラーケンはこんがらがった。
梅星は口出汁の口の中に飛び込んだ。今まで梅星は、口出汁の鍋の中に入ったことはあっても、昆布の部分の口に入ったことはなかった。
「え……え?お前、マッッッッズ!」
口出汁は梅星を思い切り吹き飛ばした。
梅星はそのままオレンジの太陽に突っ込んだ。
オレンジの太陽は梅星に弾かれて、そのまま世界のコーナーポケットに入っていった。
空はたちまち夜になった。
「焼かれた?俺燃えたのか?暗いなぁ!」
ガブリエックスエスは戻ってきた。
「あの化け物を止めてください。いいですね。」
「アレはカラザか?アイツ、暗くてコッチのことを認識できてないぞ。」
「今度はオレンジの太陽を復活させないと。」
「またですか?キャラクターが復活するには普通1話くらい間が必要じゃないですか?」
コーナーポケットから出てきたオレンジの太陽を寄せ付けるために必要なのは〈未完の蜜柑〉だ。
梅星はもちろん持って無かったのでどうしようもないと思われた。
口出汁はカラーケンに振り回されたグロッキーに、マズイものが口に入ったのがトリガーとなって嘔吐した。
大食いした〈未完の蜜柑〉が口から出てきた!
オレンジの太陽がくっつこうと戻ってきた。
「あ!あ!キミだ!ヤッタァ!」
「逢えたな。カラザ。天に帰ろう。」
ガブリエックスエスはカラザ丁寧に包まれた。
「助かったか……」
「ウプ!まだ気持ち悪い。」
「オデは謝るど!ごめんなさい。」
カラザはそのまま天に向かって上昇し始めた。
パァァァァァアーーー
天から差し込む光の帯がガブリエックスエスとカラザを包み込む。
と思えば、ガブリエックスエスとカラザはそのまま光の帯に沿って真っ二つに裂かれた。
白身の海ごと裂かれた2体はそのまま谷底に落っこちていった。
“血のピラミッド”の入り口で杖を掲げたオカッパヘアーのライオンが出てきた。
「十戒クイズ〜〜!」
ライオンは杖をへし折ってハンドマイクのサイズにした。
「私は〈資本国〉の税関であります。入国審査担当なのです。よろしく!」
「あー。入国審査?おいおい。嘘みたいな話だがな、ここのちっこい梅干しはな、“血のピラミッド”がこの海に沈むのを食い止めたいわばお前らの英雄だぜ?国賓にしたって良い存在だ。」
口出汁は亠で梅干しを掲げた。
「ハハハハ!面白いですね。では一問目!」
「待て、説明不足だ。審査内容とか知りたいぞ。」
「貴様ら!我が子と同じく谷底に落とすぞ!クイズに答えろ!」
オカッパライオンは静電気に当てられたように髪を逆立てたが、すぐに収めた。
「一問目!ビザと10回言ってください。」
「ビザビザビザビザビザビザビザビザビザビザ」
「ここは?」
オカッパライオンは目を見開いた。
「〈資本国〉かなぁ。」
パンのミミックは梅星をベロを使ってゴルフの容量で吹っ飛ばした。梅の枝をオカッパライオンに擦り付けた。
オカッパライオンの手には本物のハンドマイクがあった。オカッパライオンは梅星の持っていた元は自分の杖で真っ二つにされた。
“血のピラミッド”の固く、重く、巨大な扉も真っ二つになっていた。