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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
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7話

口出汁の鍋の中の水はとても濃いアルコールと化していた。

ガブリエックスエスは自分のサイズや今まで起こったことのあまりの屈辱に昆布酒を飲み始めた。


「何すんのら〜減っちゃうれほ〜が!」


「うるHEY!!」


食べるツマミもない中で沈みゆく“血のピラミッド”を支えるパンドラゴンは、作り込まれた工芸品のような見るツマミとして十分な魅力を放っていた。

飲み過ぎたガブリエックスエスはキス魔になるのだった。


「オラ!チューさせろ!」


「嫌だ!ファーストキスはお姫様って決めてるんだい!」

口出汁はそそくさと亠を閉めた。


「そのオラ!ってのは景気づけかい?それとも挨拶?」


「ん〜?天使は、飲み過ぎてスペイン語になるんだ。スペイン語は人類大後悔時代の占領ブームで天界で流行したのよ!」


「……それならキスしていいぞ。キスはスペイン語圏の挨拶だもんな。」

ガブリエックスエスはウヌマーの頬にキスした。


ウヌマーの頬が赤くなった気がしたが、よく考えたらくるみ割り人形なので元から赤く塗装されているだけだった。


「まだキスしてない奴は?そうだ!アイツだあの梅干しだ。アイツがファーストキスしてもレモンか梅干しの味しかしないんだろ〜な。クエン酸な奴め。」


「青春の甘酸っぱさから、甘味を抜いたような奴だ。」

口出汁は亠でこもる声で言った。


「行ってくるぜ!」

ガブリエックスエスは梅星に飛んでいった。


梅星は丁度その時、自分に梅の枝を擦り付けたところだ。

ガブリエックスエスはその瞬間に梅干しにキスしていた。


「ガブリチューーー!」


梅星はフランベされた。


ガブリエックスエスのアルコールは梅星を燃え上がらせた。


梅星は変身すると、ジッポライター型の棺になった。

棺はそれ自体が黄金に輝いていた。


ジッポライターにはCO2の分子モデルが描かれていた。

OとCは鎖で繋がっていて、ジッポライターが開くと蓋に付くCと、開いたことによって伸びた鎖でO2つが中央に寄るデザインだ。


もう片方には逆さまのロケットが描かれていて、蓋に描かれた2段目のパーツが切り離されて、1段目が残り、再点火するデザインだ。


側面にはトカゲが描かれていて、蓋が開くと尻尾が切り離されてるのでこのジッポライターの名前は〈シッポライター〉です。


つまりは、このジッポライターは開くことを今か今かと待ち侘びているのだ。


そして……このライターは何と……


残った縦長の面の方に梅の枝が擦り付けられると、ようやくまともにマッチ棒として仕事し、始めて火がついた。

 

火の着いたマッチ棒はそのまま“血のピラミッド”が沈みかけている海に飛び込んで行った。

どんどんと海は燃えて行き、白く変色していった。


マッチ棒の着水点を中心に端から端までどんどんと白くなった海の上。“血のピラミッド”はその上に安定して乗っかった。


「残った海の正体は……卵の白身だったんだ!白身が焼かれて固まったから“血のピラミッド”は助かった。」

ウヌマーは海の上に立った。口出汁を持って、元は梅星だったジッポライター型の棺に近寄っていった。


その横には燃えカスになったガブリエックスエスの姿があった。

「……アーメン……」

「アーメンドクサイ奴だった。」

口出汁はそう言いながら亠を開けた。


ウヌマーと口出汁が奇跡ごっこをやっていると、白身の海が割れて、本物の奇跡の存在のパンドラゴンがやってきた。


「ありがとう。大地は目玉焼きとなり、私はトーストされた。これで私は『最初の朝食』となれる。」

パンドラゴンはそう言うと、箱の形に変化した。


それはもうただの食パンだった。


パンドラゴンの箱が開くと中からは鯉が出てきた。

鯉からは香ばしい焦げと控えめな甘さを想わせるあんこの匂いがした。


箱から放流された鯉はそのまま白身の海を下っていった。


「そうだな。災いとは恋のことだろうな。」


「泳げ……鯉焼きくん。」

ウヌマーと口出汁は優美な後姿を見送った。


「……」

上空にいたシッポライターは気がつけばウヌマーと口出汁の足元に滑り込んでいた。

変身したヒーローは喋れないのだ!


「そうだったな。ええと……喋れないなら元に戻してやるのがいいか。」


口出汁とウヌマーは塩を探し始めた。


パンドラゴンの箱は中身が鯉焼きを作るためにくり抜かれて、今度は〈パンのミミック〉になった。


「さっきあの建物を自慢のベロで舐めてみたらしょっぱかったぞ。」

パンのミミックは自慢のベロで“血のピラミッド”を指した。


「ホントだ!この建物は岩塩で出来てんぞ!」

口出汁は“血のピラミッド”に付着していた粉を舐めると確かな塩味を感じた。


ウヌマーは“血のピラミッド”からレンガを1つ抜きとると、すぐさま噛み砕いた。

噛み砕いた下にはシッポライターがいて、塩がかかったのでどんどんと梅星へと戻っていった。


「ヨシ!この世界を把握するために俺たちは新天地に乗り込むぞ!」

梅星はずっと言いたかったことを言えて満足気だった。


言葉通り、いよいよ“血のピラミッド”に入っていくことになる。

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