30話
扉の先は、酷く臭う。
缶詰の蓋を開いたような香りの昇り方は鼻にきついダメージを負わせる。
GALをが地下階段を駆け降りる。
体からも空気のフレッシュさを感じることの出来るものだ。
体が悪臭の膜のようなものを抜けて、ただの地下空間に出てきたことが分かった。
「ここからは臭くない!」
GALをの手に持たれた口出汁は何のことか全く分からないようにチャポンと水音をたてた。
「安心したか?結構けっこう。」
クレメンス大凶行は子供用プールくらいの水の浸かり具合で水しぶきを上げながらコチラに振り向いた。
手袋から液体肥料をドバドバと水の張った床に注ぎ込む。
「本格的にここを支配するためにとっておいた。私のとっておきの軍隊。雇われのちんちん侍とも違う。私が指揮し、私のためだけに動かせる!」
地下にあるキノコが成長を始めた。キノコの軸の部分は水に浸かる部分だけはあみだくじのように枝分かれしたが、凛々しく太くまっすぐ伸び、傘の部分はいつでも発射する準備の整った大砲のような頼もしさを感じさせた。
傘の部分は手のひらのような形に変化していく。
「これこそチングローブ!切り札のチングローブ!!」
「歩くキノコか!」
口出汁は高水圧噴射を浴びせかけた。
水の刃はキノコの軸を切り裂いたが、床の水のおかげですぐに再生していく。
銀のチェーンもどんどんと再生していくチングローブの前には無力だった。
「ていうか、この水から出れば良くないか?わざわざここで戦うこともないじゃん。どう?」
「うーん。賛成!」
口出汁とGALをは地下から飛び出た。
チングローブの出番終了!
「小便小僧の水で繋げて、ここから出て追いかけろ!」
クレメンス大凶行の命令もチングローブたちは聞かなかった。
クレメンス大凶行のばら撒いた肥料、地下空間こそがチングローブにとって最高の環境なのだ。
命令を守りにきた小便小僧をチングローブは触手で頭を吹っ飛ばした。
小便小僧の頭でチングローブはキャッチボールを楽しむことにした。
「アレは切り札とも言えん。普通に私が死ぬ可能性がある。出すしか無いのか。」
クレメンス大凶行は気張った末に決断した。
「出そう!」
アレは、“肛門ランド”中央のバナナの巨木、その内部に住み、クレメンス大凶行によって閉じ込められていた。
「このまま逃げ続けて、アイツのアンモニアの方の手袋を頂く算段をつけようぜ。」
「チングローブが切り札なんだ。もう何もしてこないだろう。屋外でバナナのないところで戦えばいいだけだな。」
GALをの太ももが黄色いビームで貫かれた。
口出汁は上手く着地したが、GALをの方はつまずいてしまった。
「つまずいたって良いじゃないか」
GALをはGALになった。
「つまずくとGALに戻るのか。」
GALを撃ち抜いたのは巨大なコウモリだった。
真ん中には突起のある球体。羽の先には大豆のような形の何かがくっついていた。
クレメンス大凶行が近づいてきた。
「今お前を貫いたのは、アレがチャージを充分に行わず、攻撃が散弾して威力や攻撃範囲が減衰したビームだ。つまり全力の攻撃ではない!」
「アレは抑止力のはずだった。戦わせない筈だった。試験的販売として、強欲の壺に無償提供されたのだ。アレこそ、“膀コウモリ”。“肛門ランド”の半分はクレーターにされてしまうだろう。」
「モジャハートの忠告通り……いや!それ以上だ。」
「アンモニウムで気絶させたり、アンモニアで起こしたりすることで生物を制御する。まさかあんな化け物にまで!」
「フハハ!いや、制御は出来なんだ。見ての通り、奴を解放する時、アンモニウムの左手を左腕ごと吹っ飛ばされた。」
「膀コウモリは止まらない。お前たちももしかしたら私も死ぬかもな。」
GAL達にとって、危惧すべきは全滅である。
そもそも、203階層に行けば、パンのミミックの復活パワーがあるので、死ぬこと自体は最悪ではない。
但し、それは運ぶ存在がいることの前提での心構えである。
エレベータージェントルマンはGAL達の死を確認出来ないだろう。
モジャハートもパンのミミックの復活パワーについては知らないのだ。
この2人は考えた。そして結論を出す。
(まぁ勝てば良い!)
膀コウモリは今度こそ本格的にチャージを始めた。
そのビームは災厄のように、平等に無作為に放たれる。
シンデレラフィット城の他、クレメンス大凶行が“肛門ランド”を開発した時のアトラクションがどんどんと破壊されていく。
「やったわ!クレームが届いたのね!また来よっと♪」
GALに戻ったばっかりで、GALをの時の記憶は残らないので、GALは、膀コウモリがクレーム処理をしてくれたと思ったのだった。




