26話
白鳩は195階層に着くやいなやすぐにGAL達を振り落とした。
戦う者達は平和の兆しの背中にはふさわしくないのだろう。
「のせてってくれてありがとう!」
モジャハートの言葉に白鳩は返事した。
返事した時、オリーブの枝のブローチが口から離れると、白鳩はまた、あのカササギの白い塊に姿を変えた。
「世界平和の象徴は、この“血のピラミッド”じゃ羽ばたけ無いようだね。」
「ああ。ヒンコンカンコン総裁は報われないな。」
「ここじゃ同情しちゃいけない。資本国では、人情てのは、つけ込まれる入り口になるんだ。」
口出汁は、資本国を知ったような感触に溢れた口調で語った。
天の河はもう見えない。
この姿に戻ったのは、誰よりも強い、願いの力を求めたカササギの最後の抵抗なのかもしれない。
「白鳩は、良い教材なのかもな。」
「俺たちは、“血のピラミッド”の最上階を目指してるんだ。この建物は、下にも上にも移動しにくいように作られているんだ。この旅は辛いものになるだろう。“モジャハート”だっけ?助けてもらったけどさ、着いてくるならな、死ぬ覚悟が必要だ。」
「前世には有りもしなかった俺のチャンスなんだ。ロックをここでメジャーデビューさせたい。そのためには命もかけられる。」
口出汁とモジャハートの自己紹介が済む。オリーブのブローチが、カササギの一部に戻る気配は無かった。
「モジャハート。コイツはお前に任せるよ。」
「『任せる』か。俺には出来ることは無い。」
「ああ。俺は、チャリティー曲は嫌いなんだ。世界平和を呼びかける曲は平和を歌うんじゃなくて、いつまでも武器でなくてはいけないんだ。」
「だから、俺の歌を聞いて、また、目の前にある、すぐ咥えられるブローチを自分で咥えさせることしか出来ないな。」
「進もうよ。」
GALの指差す先には“肛門ランド”の文字が。
「一応ね、“肛門ランド”と、“肛門シー”の2つがあるらしいんだけどね、“ランド”が王道だよね。」
「王道とか知るか」
「まぁ、でも“肛門シー”って何だか下痢便みたいでやな感じだから、“肛門ランド”で良いんじゃないか。」
“肛門ランド”には、無理矢理、景観のために植え込まれた熱帯植物で囲まれた、よく整備された道があって、綺麗で汚い名前の“肛門プリンスホテル”アなるホテルがあった。
「王道じゃ無くてプリンスホテルだったな。」
肛門ランドの周りには、熱帯植物の中でもバナナがたっぷり植えられていた。
ホテルに泊まれないホームレス対策で、バナナをもぎ取らせてお引き取り願ってるらしい。
「ほら、バナナ便を暗喩してるよ。良い雰囲気だね。入る前からワクワクするね。」
GALがはしゃいでいた。大型アミューズメントパークは、ギャルは無条件でテンションが上がってしまうのだ。
「?俺が異常なのか?」
「安心してくれ、俺も理解出来ない。何だ?あの菊の門は?」
「違うよ。あれは『菊の紋門』かの高名な“見て!肛門”っていう権力に物言わせて法律無視で活動する、権力のあるヴィジランテみたいな人があの門の先に居るんだよ。この“肛門ランド”を作った人なんだよ。」
GALはやたら“肛門ランド”に詳しかった。
「何で名前にビックリマーク入ってんの?」
丁度、自分のけつの穴に向けて指を指す“見て!肛門”の銅像の前で、口出汁が口出しした。
「何の乗り物行こうか?『大腸マウンテン』も良いし、『下水道マウンテン』も真っ暗で刺激的だよ!」
GALが『浣腸パス』(ファストパスのようなもの)を素早く獲得して来た。
「全部、俺たちかウンコになるアトラクションじゃねぇか。」
「ハハ。まぁ、謎は解けたよな。」
「謎?」
「うん。そのさ、白鳩は、オリーブのブローチを放したからカササギに戻ったんじゃ無くて、“肛門ランド”から溢れる、腸内細菌のせいで、腐食が戻ってきたんだ。キビヤックに戻ったんだぜ。」
モジャハートはこの“肛門ランド”を破壊するアイデアが浮かんだ。
「良いから何か乗ろうよ。それとも、“見て!肛門の悪玉菌成敗ショー”が見たい?“放屁花火と腸活パレード”は閉園間際にやるんだよ。」
「良いから1人で行って来い!」
さすがに、ちょっと付き合いのある口出汁でさえ、趣味の悪いこのテーマパークには付き合えなかった。
「良いもん!寂しく楽しんでやるもんー!」
GALは“直腸マウンテン”に走っていった。
走っている途中には見知らないアトラクションがあちこちに見られていた。
“肛門ランド”は名の通り肛門や消化器官や排泄物にゆかりのあるテーマパークなのだ。
そのテーマから逸脱したアトラクションが周りに広がっていた。
ぼーっとしているGALでさえ違和感を感じていた。
「うん?何だか変な感じ。“肛門ランド”が誰かにめちゃくちゃにされてるみたい。」
そう!肛門が開発されていたのだ!




