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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
23/31

23話

大きな穴の中心。そこから飛び出た粗末な土鍋。中身は昆布とだし汁のみ。


196階層では、今、まさしく!会議の最中であった。世界平和についての会議の。


大きなテーブルで大きな穴だった。陸上グラウンドくらいあるテーブルにはペラペラの薄い冊子が、参加者に配布されていた。


世界平和の会議なのに、ひときわ豪華でフカフカで座り心地の良さそうなイスに座る者。


席札にある名前は…『ヒンコンカンコン総裁』。


「……つまりね、願いを守るんだ。余裕があるから願うんだろう?守らなくちゃ!」

反対側に座る者の発言だった。


席に着く全員、話している本人でさえ、話の意図など分かっていない会議の中心を土鍋が貫いた。


「誰かぁ!キャッチしろぉ!」

口出汁が重力をしっかりと感じ始めた時、鍋底を支えるのは橋だった。会議のメンバーが席から消えて、口出汁を落ちないように受け止めてくれた。


それはカササギの橋。


「ゲ!おいおいまた鳥が出てきやがるな?」


ペリ艦隊のような恐ろしさもなく、動きもしない。ただ、ジッと、物を支えるために羽ばたきすら最小限に抑えて空に留まる。


座ったままの総裁はテーブルに肘をついて、こちらも動かなかった。


「あのさ、俺たちこのまんまかなぁ?」

口出汁はカササギの橋に尋ねる。

答えは帰ってこなかった。

「だよね。橋は動かないし、喋らないよね。」


ヒンコンカンコン総裁は突然に席を立ち上がると、そのまま会議室から出て行った。


「アレさアンタらの上司?大変そだねー。」


総裁は今までの会議をまとめた書類の保管庫に来ていた。

ちょっと前大きな戦争があった。会議室は戦争終結の調印に使われた。

更に前には中くらいの戦争があった。会議室は作戦会議に使われた。

もっと前には小さな戦争があった。会議室はそのまま戦地だった。


ヒンコンカンコン総裁の歩く先。書類の議題をチマチマと確認しては戻す作業を続けて、そのまま保管庫に削り掘ってある文字を眺めて、遂に見つけた。


小さな戦争の時の記録だろう。はっきりと口の強調された器のような絵があった。器に向き合うのは老人だった。和服にメガネをかけた老人が、大きな波を、浮世絵のような勢いで器にぶつけようと構えていた。


ヒンコンカンコン総裁はここが大好きだった。中くらいの戦争の時に、会議室へ書類を届ける下っ端だった彼は、今いる保管庫でずっと資料を探していた。馴染み深い、第二の家のような場所だった。


「……あの鍋は。恐らくこの化け物だ。遥か昔から戻ってきたんだ。」



「やっぱエレベーターは早いなぁ。え?今まで起きた全ての時間が嘘みたいだぜ。」


「呑気だね。今助けるよ。」

GALはトリモチみたいにモジャハートを使った。

よく毛が絡んでくれた。


「また変なのが増えたな。色と形が合ってないぜ。」

口出汁がモジャハートに口出しした。


「へ!お前みたいな奴を音楽で殺すのが楽しみなんだぜ。」


会議室の床に口出汁が降り立つと橋はすぐさま解散した。


「私達はある一夜だけ、死ぬ気でリア充のために橋に徹するの。純愛派なのよ。」

橋の擬宝珠を担当していたカササギが語った。


「いいよな。純愛。」


「あ?織姫と彦星だろ?ユーメイだぜ?」


「何言ってんのよ。そんなの2人とも知らないわ。」

「ああ。俺たちの2人はな、ソーメンとフルーツポンチだ!」


「???」

モジャハートは固まった。


「心筋梗塞が起こっちゃった!AEDのマネキン呼ばないと!」


「大丈夫だろう。ショックを受けているんだ。この世界は自分の世界とは理も歴史も違うということをね。」

エレベータージェントルマンはジェントリーに寄り添う。


「どっちが男?やっぱソーメン?メンだから。」


「何言ってんのどっちも男よ。フルーツポンチもフルーツチンポじゃないの。」


モジャハートは心停止した。


発酵したような。いや、ただただ腐ったような匂いがした。これがキビヤックなのだろう。


ヒンコンカンコン総裁が帰ってきた。

「そ!その鍋は危険だ!世界平和を乱すものだ!記録がある保管庫にな。疑う余地はないぞ。会議はこれにて終了だ。」


胸元のスイッチを押すと、チャイムが鳴り響く。学校のチャイムが。


懐かしい音で、モジャハートはまた動き出す。

「このメロディー。歌の初めにも終わりにも使える万能なラインなんだぜ。へへ。」


カササギは『世界平和』の願いの書かれた紙をつばむと、その紙の綺麗な色に変化した。


「年に一度会う2人がゲイカップルなのに、短冊はきちんとあるのかよ。」

モジャハートは震えだす鼓動のまま、カササギの殺気に気がついた。


すでにGALや口出汁も戦闘体勢だ。


「敵はまた鳥で、」


「ああ、敵はまた軍隊だな。」


同じ色の同じ隊列を組むカササギは、大きく、そして何より激しい腐敗臭を放ちながら迫り来る。


隊列の形は、そのまんまだった。

カササギのレインボーブリッジだった。

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― 新着の感想 ―
ヒンコンカンコン総裁は、今月中目黒で上演されていた『キンコン冠婚葬祭』をモデルにされているのでしょうか。とても面白く拝見いたしました。
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