22話
「てことはさ、キンタマも金色だな。」
「キンタマねぇ、付いてないですよ。要らないでしょう?」
「玉無しの割には虎を撃ち殺せるくらいには男気があるのな。」
「この人たちは女性の前でキンタマだなんて」
GALは頬を赤らめたが、チンパンジーの顔は黒いので誰も気が付かない。
AED練習用のマネキンがGALに踵落としをしたので、頬は誰から見ても赤く染まった。
頭から吹き出た血はどんどん出てそのままGALは動かなくなった。
「こうして彼女はマネキンになったのでした。」
「めでたしめでたし」
めでたしは口出汁が言いました。
「じゃあ、パンのミミックに会いに行くから、ここで待っててね?」
エレベータージェントルマンはGALを抱えると、エレベーターにまっすぐ進んで行った。
「当然今のは……」
「……フリだよな。」
口出汁はAED練習マネキンと共に、主人公を置いて行くことに決めた。
「なぁ。聞いていいか?」
「はい?」
「どうしてそんな親切にしてくれるんだ?俺たちの脅威を跳ね除けてくれたし、望んだことに協力してくれた。」
「ああ。そうですね。197階層で行われていたことをあなたも知ったはずですね?」
「ああ。」
「何かが産まれるようで、何も産まれない。金の卵は結局のところ天空の巨人しか取り扱わない。ここに巨人のような者はいなかったでしょう?」
「キンタマか?キンタマが関わってるのか?」
「金の卵を見られたのは久しぶりだったんです。」
「もう良いや。早く上に行かんと。」
口出汁はマネキンの手の感触の悪さを知った。
AED練習マネキンは天井が196階層に続く広場に着いた。そこには少し金箔の貼られたマネキン達の上に行こうともがく真っ白のイソギンチャクのような蠢きだった。
「この中を行くのか?」
「まさか。」
AED練習マネキンは広場にあったAEDを持ち出すと、1番端の所に居たマネキンに押し当てた。
AEDの電流は金箔から金箔に伝播して、群がるマネキン達はショックを受けて脱力した。
マネキンだから、気絶した体勢も角張った調子だ。
マネキン達の腕や足は螺旋を描いた。
「ここを上がれば196階層です。」
「何で穴が開いてるんだよ。」
「上に行けばわかります。」
口出汁は感触の悪いマネキンの手の大玉送りならぬ、大鍋送りを受けた。
203階層の閑散とした雰囲気の中で、エレベータージェントルマンはGALをパンのミミックの口の中に突っ込んだ。
GALは復活するとエレベータージェントルマンに握手した。
「久しぶりぃ」
力ない握手だった。
エレベータージェントルマンはパンのミミックの涎をぬぐうと、エレベーターに戻るようにGALに促した。
203階層には転生者がスライムになって転生する魔法陣があった。
大抵は世間からのはぐれものばかりだった。はぐれものスライムとでも言えるだろう。
その魔法陣はまだ生きていた。世間からのはぐれものが召喚されていたのだ。
GALと目が合ったそのスライムはメタルだった。
長い髪に長い髭。エレキギターの空耳が聞こえてくるようで、水色の顔にショッキングピンクのトゲトゲしいメイクがあった。
メタルもまた、世間のはぐれものだろう。
「……盛り上がってるか?」
ヘヴィメタルスライムがGALに聞いてきた。
「今はフロアを下がってきたところよ。」
「そうか。ギターは?」
「無いけど。ここ最下層だもん。」
「お前を人類にしてやりたい所だが、仲間も相棒もここに無いなら無理らしい。」
「まず腕が無いけど。」
「やるならベロでも、自分のネバネバでもやってやる。ネバギバだぜ。ぁぁあをんん。」
「エレベータージェントルマン!生き返りたてですごいもの見つけた。」
「ウチにそんな余裕はないよ。」
エレベータージェントルマンは歩み寄ると、捨て犬を見る眼差しを向けた。
「カワイイけどね。ごめんね。」
「ギター弾かせろよ。話はそこからだからな。」
「話は聞かないって。」
「困ったなぁ。」
「じゃあ名前つけようか。」
「よせよ。タテノリって名前があんだよ。
「本名で活動してんの?」
「名前はぁー、うん!抗がん剤」
「嘘は良くないよ。自慢のロン毛も禿げるだろうし。」
エレベータージェントルマンも飼う気になってきた。
「じゃあーモジャモジャハート。略してモジャハート。」
ヘヴィメタルスライムは心臓の形になった。
相変わらずギターは持てなさそうだった。
「心臓に毛が生えたような奴になって欲しい願いをこめたよ。」
「ん。ありがと。」
一行は196階層に向かった。




