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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
21/31

21話

197階層のテーマ。『オーディションオークション』である。


先程の部屋では限りなくくだらない議論が、もったいないくらいの情熱で繰り広げられていた。


「だから!僕は東大に行くんですわ!」


「無理だろって!考えてみろよ。手も足もない、ていうか首から下がないのに、どうやって勉強すんだよ!」


「ペンを口に咥えて勉強しますよ。」


「顎の出っ張り方は……遺伝の骨格でアゴとんがってるわ。……噛む力とかも、ペンを咥えて勉強してきたのならそんなに弱い筈ないなよね?」


「駄目だよ。口だけじゃない?」


「諦めてるんですか?僕のことを?」


「そういう事じゃなくてさ……」


こんなやり取りがどんどんと続いた。


「あなた方が、見せている金は差し上げるつもりがないんですか?」


「当たり前だ馬鹿野郎!」


「帰りますよ。」

「金色にしてくれないんでしょ。いる意味がない。」


「おい!ふざけんじゃねぇぞ。」


「帰りますから。」


「ああ。かえれ!」


カットモデルは部屋から出た。


座る金マネキン達は話していた。


「とんでもないのが来ましたね。」


「ええ。ハハハハ。」


別室にて。


「楽しいか?」


「あん?」

謎に立っていた金マネキンとカットモデルは睨み合った。


「若者を潰して楽しいか?」


「怒鳴れよ!」


「若者をいじめて楽しいか?」


「何でここに来たんだ!」


怒鳴り合いだった。


「ワカモレを潰したらうまいぜぇ!」

口出汁は怒鳴り合いに口出しした。


その部屋はGALの心臓マッサージを行なっていた部屋だった。


「ワカモレは潰さないよ。アボカドをよく潰してワカモレを作るんでしょ?」


「そうだったな。よし、知ってる方で構わないが、196階層への行き方を教えてくれ。」


「ハァ〜俺の人生。トラブルばっかだ。体を与えられると思ったら、カット練習用のマネキンで、美容学校みたいなところで扱われると思ったら、文化祭のお化け屋敷に使われて、そのままコンセプトカフェに置かれて、さらし首の横に置かれた!だから思ったんだ。学歴が欲しいってね!」


「???」


「???」


「何言ってんだお前?」


本人以外の誰にも伝わらなかった。


「もういいや。ここでもトラブルに見舞われるんだ。こうなったらは虎ぶるしかないよね。」

カットモデルマネキンはその毛が伸びると、毛が固く編まれて体を構成した。

金髪と伸びてきた黒い地毛によって入り組んだ模様は虎の縞を表現していた。


こうして虎ぶるマネキンが出来上がって、襲ってきた。


「オイ!勉強が出来なくて自己嫌悪して虎になるとか『山月記』かよ!」

口出汁のツッコミも虚しく虎は金マネキンに噛み付く。


ドアを噛まれるギリギリで閉じると、金マネキンは元いた部屋に戻って行く。


「僕は、今までの人たちのためにも、この仕事を繋げて行くんです!」


オーディションオークション部屋では座っている金マネキンも、プレゼンテーションをしているマネキンも全員が泣いていた。


「コレは……約束通りの金をあげます。」


そこには人情を感じた。人情があった。

虎には関係ないけどね。


虎ぶるマネキンは金マネキンに噛み付いた。

「ガリッ」という、プラスチックの音が聞こえた。


そう!金マネキン達は、実は全身に金メッキをしていただけだったのだ!


本物の金ならば、柔らかい金属であるので、噛み付かれた歯形がつくはずだ。

本物金ならば、マネキンサイズのが6人も居ればその重量で床が抜けるはずだ。


金マネキン達は、金箔を体に貼って、イスに金継ぎをして座っていただけの存在だった。


虎ぶるマネキンに噛まれて顔が粉々になったマネキンはイスごと倒れた。

どんどんと、噛み付かれては金箔を剥がされて、金マネキン達は唯のマネキンの残骸へと姿を変えていった。


「1対6で僕の勝ち。」

「さぁ!更なるトラブルを!」

虎ぶるマネキンはGAL達のいる部屋に向かって、そのドアを破った。


「良かったなぁ!金箔のパック。“金箔パック”てとこか?を、顔に貼れてな。お前の目的は達成されたぞ。」

口出汁は説得半分。なじり半分で虎ぶるマネキンに話しかけた。


「お前たちも許さない!」

虎ぶるマネキンはまっすぐ突進してきた!


と……虎ぶるマネキンは落とし穴に落ちた。


「まぁ、想像通りだわな。」


「うん。」


「何だっけ?{こけつにいらずんばこじをえず}だっけ?」

「“虎を穴に入れないと虎は死なないよ”て意味だよな。」


「全然違うよ。」

そう言うと、口出汁とGALはグータッチした。ようだった……?


「穴に落としたから何だ!こんな穴はな!ひとっ飛びだぞ!」


救命練習用のマネキンが突然人差し指と中指だけを伸ばしてあとは曲げて、鉄砲のポーズをとった。


「ああ?何だよ?脅しか?」


「若者をいじめてぇ!潰すぅ!楽しいに決まってるじゃないかぁ!どこもかしこも、若者をいじめはどんどん激しく、キツくなってるじゃねぇかよ!ヒャハハハ!」

AEDマネキンはそう言うと、指から金の銃弾を放った。


虎ぶるマネキンのカットモデル部分を粉々に撃ち砕いた。


「ふぅ。はしゃぎ過ぎました。彼がこれ以上虐められないよう。一発で仕留めることが出来ました。」


「すっごいね。」


「ああ。金が体から発射された?」


「柔らかさとかね、電気の通り具合とかね、人間に近いんだよね。」

そう言うと、AED練習用マネキンは肌色のゴムのカバーをベロリとめくった。


救命マネキンは、歯、骨、臓器に至るまで、全てが純粋な金で出来ていた。


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