20話
「絶対に助ける!」
気が付いてみると、そんな声と共に台の上に寝かされていた。
「このような、助けを求める存在を僕は助ける正義感!助けを求める存在を見捨てない忍耐!助けようと思う使命感!を兼ね備えているのです。」
口出汁は思った。
(死にかけているのに、何か自分には関係ないところでダシにされてる?出汁だけに?)
「でもさ、それって唯の精神論だよね。」
「僕たちは技術的な話を聞きたいわけ。」
口出汁が見ると、そこには死んだ目で、しかし、口はやはりニタリと笑う信楽焼の姿を見つけた。
エレベータージェントルマンだ。
この空間に捕まっていたらしい。
空間には立ってプレゼンテーションをする。
プレゼンテーションを聞いて、何かを判断する人たちが座っている。
「あなたね、さっきからしゃべってないけど、興味ないの?」
「ええ。ないですね。」
エレベータージェントルマンは呆けて答えた。
「何だとコラ!流石に態度ってもんがあるでしょう!」
ほとんどが座っている中で、ろくにプレゼンテーションもしないのに、謎に立っている者が怒ったようだ。
口出汁のことを、死にかけの体の前にそこにいる誰も助けるばかりか、プレゼンテーション用の資料としか認識されていないようだった。
何といっても、最大の特徴は……
「何だろう?このマネキンたちは?そこに座っているのはエレベータージェントルマンだね?悪いけど、口出汁を助けて!お願い!」
GALが合流した。傷だらけだった。足も引きずらなければ移動できない様子だ。
この空間にいるのは全てマネキンだった。顔も無ければ服も着させられていなかった。
エレベータージェントルマンはニヤニヤ顔のまま答える。
「ごめんなさい。この椅子に座って動けなくなってしまったんだ。」
「いや、これを使えば……」
GALはマッチングマッチを取り出した。
「分かるかな?」
エレベータージェントルマンは頷いて目を瞑った。
GALはマッチを投げた。エレベータージェントルマンはキャッチすると、自由のきく腕で体に擦りつけた。
温かいフキダシから出てきたのは、『金継ぎ師』だった。
「そこは医者が出てくるんじゃないの?」
GALがフキダシの中身の役に立たなさを強く実感する前に、金継ぎ師はエレベータージェントルマンの椅子に固定されていた金継ぎを引き剥がした。
「ふう。良かった。これで体を自由に動かせるや。」
「バカァ!口出汁が助からないでしょ!」
「いやいや。あれを見て。」
金継ぎ師は口出汁の割れかけや散ってしまった部品を手に取ると元あったように金継ぎで口出汁を元に戻していった。
「この野郎コイツら!つまんねぇ事してねぇでさっさと助けるんだよ!馬鹿タレが!」
197階層のマネキン達は金ピカだった。プレゼンテーションをしているマネキンだけは通常の白色だったが。
ここでは、この金のマネキンから金色を貰うのを目的としているのだ。
マネキン達はたった今起こったこと。エレベータージェントルマンが椅子から解放されたり、GALによる『金継ぎ師』の出現だったり、そんな混乱の中でも、金マネキンのプライドだけはしっかりと口出汁の言葉に反応した。
「馬鹿タレとは何だ!ふざけてんのか!」
謎に立っている金マネキンがやはり感情任せに怒鳴り散らしてきた。
プレゼンテーションのマネキンはチャンスだと思って動ける3人(土鍋は動けなかったわ)に襲いかかった。
「僕の決意、僕の覚悟、僕の執念を、しっかりと見せつけて行きたいと思ってみたりしようかなと考えたこともありましたぁ!」
口出汁は高水圧カッターを放つ。マネキンはバラバラにカットされた。
金継ぎ師はマネキンを金継ぎしようとしたが、エレベータージェントルマンにGALを渡されて、そのまま同行した。
口出汁はGALのひどい怪我と、倒れて気絶している様子を見た。
「確かに、君たちならここをめちゃくちゃに出来るだろう。でも、GALちゃんを助けるのが先だと思う。」
「ああ。分かってるよ。」
2人はこの部屋から出た。
そんな中で、次のマネキンが入ってきた。マネキンはまさかの生首だった。明るい金髪の長い髪が特徴的だ。
何とカットモデルだった。
すれ違い目指したのはAED練習用のマネキンだった。
今まで、救命活動の訓練をその身で受けてきたそのマネキンは救命活動のプロに等しい経験値を積んでいるはずだからだ。
少しの移動ですぐに見つけた。
「どうしました?」
「ツレがこの通りの重症だ。助けてくれ!」
「もちろん。」
AEDのマネキンはGALに心臓マッサージをした。
GALのために、金継ぎ師の血を輸血した。
金継ぎ師は自分の体を金継ぎしたために、成分が心臓に回って、そのまま死んだ。
「傷は縫合済み。脈は戻りかけ、とても弱いですね。」
心臓マッサージは続いた。
しかし、一向に心臓がしっかりと動き、意識がはっきりする気配が無かった。
「くそ!ここで死んだら最下層のあのパンの箱まで戻らないと行けねぇなぁー!」
その時、寝ぼけたような曖昧な声が。
「うふふん。エッチーー」
GALから衝撃の言葉が放たれた。
AED練習用マネキンはムカついて、GALの心臓に、カカト落としを喰らわせた。
GALの意識が戻った。




