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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
19/31

19話

ご朱印帳はクレメンス大吉行によって、骸寺の御朱印を表紙に書かれているところだった。

貰った吉骸はニコニコだった。

クレメンス大吉行は爽やかなウインクをした。


「完全にサインと間違えてるねぇ。」


「急な改宗だから、分からないルールもあるんだろうね。」


「普通に書いてもらった時にキレて、何で今は怒らないんだよ?」


「あ!成功したんだ。馬鹿になってるんだったら納得出来るよね。」


「そうだな。よし!奴からご朱印帳を奪おう。」


歩み寄る2人に吉骸は全く気が付かなかった。

わざとかなと思う、「ほえ〜〜」という溜め息なのか、相槌なのかわからない声を発していた。発する必要もないのにだ。


「また会えたな。」


「前よりマシ?ていうか、植物のようなおおらかさがあるというか。」


「お前ら、ワイになんか用か?」


GALは両手でご朱印帳を持つ吉骸と握手した。吉骸は条件反射的にその手を握り、そのままご朱印帳は自由落下の餌食となった。


落下先には口出汁が待ち構えており、犬が木の棒を咥えるようにご朱印帳を咥えると、GALはハンマー投げの要領で掴んだ手を振り回して吉骸を遠くに投げた。


GALはチンパンジーだから、中々のパワーがあるし、吉骸も唯のおかしな形の黄色いスケルトンで軽いので、見事に吹き飛んだ。


「ここまでやる必要あった?」

GALの手の骨粉をはたく姿はアスリートの面影を感じた。


「ん〜しゅみっ!」

口出汁はそう言うと、GALにご朱印帳を渡した。


中を覗くと、そこには……ご朱印があった。

何も……おかしくは……ない。


「あった!“サワーオブテラー”めちゃくちゃ凝ってるぅ。おぉテーマパークみたい。みんなで同じポーズしてる写真まで付いてる。」


「コイツらみんな肉がついてるじゃねぇか。」


「生前の写真ってことか。」


「1番間抜けな面のコイツがあの吉骸かな?」


「結局、ここまでの成果はこのくだらない写真だけか。197階層には行けそうにない!」


ご朱印に特殊な力などなかったのだ。

ここにあるのは、寺と骨だけ。

GALはご朱印帳を投げ捨てそうになった。

で、投げ捨てた。


御朱印には力はない。だが、ご朱印帳には?


ご朱印帳はGAL(女性)のフルパワーな扱いに電動で開き始めた。

それは、85階建てのマンションになった。


しかも、それは骨壺マンションだった。骨も一軒家から洋風の共同住居に住む時代だ。

マンションだから自治会とかやるのかな?上層階の方が地位が高そうだった。


骸寺音頭は動きを止めた。吉骸たちはどんどんと骨壺マンションに迫ってきた。

マンションのフロントには部屋の割り当てを決定する係がいた。

GALと口出汁もまた、フロントの内部で係と同じ格好で座っていた。


「お静かに!今からあなた方を審査します。アピールをお願いします」


吉骸は協調性なく口を動かした。最悪の聖歌隊のような有様に係の溜め息は大きく深かった。


「ワイサイコパスや。」


「ワイは英語の試験で942点を取った。」


「1日を分刻みで家族と幸せに過ごしとる。」


「交通系カードには10万を入れて改札を壊したやで。」


「ワイ慶応やで。やっぱりワイ早稲田だったわ。」


「ん?二郎の店舗の話か?女は二郎にく!る!な!」


「ワイ税理士一発合格。ちな中学時代ひと殺したことある。」


係は深く曇った顔。GALと口出汁は口をポカンと開けて雑音に耐えていた。

全員の供述が終わると、係はメガネをストンと置いて向き直る。


それは恐ろしく強欲な笑顔だった。

「このマンションには回線が繋がっておりまして、全7チャンネル。私は6チャンネルの『強欲テレビショッピング』の担当者で、只今放送休止でここにおります。」

「あなた方は、ここに辿り着く運命にあったのです。探していたのです。2チャンネルの『傲慢トークショー』。貴方たちは番組を持つのです。」


「マンションに住めるんやないんか?」


強欲な笑いはそのまま自分の体を壺の形にすると、口上を始めた。


「この箒、ハキハキはしません!スイッチひとつで、スーッと!」


口出汁とGALは思った。

(それは掃除機では?)


壺の中に吉骸はどんどんと吸い込まれていく。

皆が等しく「グエーー」というリアクションだった。


「あなた方は協力してくださりました。何か報酬を。」


「強欲の割に慎ましいんだね。」


「報酬を下さい。」


「慎ましくないね。」


「いや!俺たちが197階層に行きたいんだ!それぐらいはやってもらうぜ。じゃなきゃこのマンションをぶっ壊す!」


しぶしぶ壺は2人と一緒にマンションのデッキに移動してきた。

寺が豆のサイズだった。


「このデッキから2枚ひいてください。」


「2枚引く?」


「そうです。2枚引くんです。」


ホテルのデッキには、ベンチや植物、テーブルなどがあった。だが、引くものなどない。

GALはデッキから外してはいけない床板を2枚引っこ抜いた。


この骨壺マンション、骸寺と同じで寄木造りである。木が2枚抜けただけで、簡単に壊れる。

マンションは骸寺を踏み潰した。


崩れる少し前に、壺はあのツボ笑いをしていた。

壺には生命保険がGALと口出汁にかけられた紙があった。


GALと口出汁はこんなセリフを聞いた。


「もう一坪土地が買えるぅ。」


2人は瓦礫の下敷きで、救急搬送された。197階層に。


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