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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
18/31

18話

寺の御堂が完成して、千日解放行の2日目が始まった。

クレメンス吉行の袈裟に貼れる分の書き込みがどさっと集まったが、生き仏セットの監視を切り抜ける方法が必要になってくる。


千日解放行は千日かかるのだ。


2日目で終わるはずがない。生き仏セットの時間感覚にもよるが、長く続けることも千日解放行の厳しさの所以なのだ。


GALと口出汁は考える。生き仏セットの時間感覚を完全に狂わせて千日経ったと錯覚させる必要がある。


どうすれば?


クレメンス吉行が立ち上がると、また解放の練り歩きに出発した。

「皆の魂が救われるように今日も進もう。」


明るく、揚々とした雰囲気は死体とは思えないほどの水々しさを印象づけた。


千日やる気マンマンのクレメンス吉行の態度に口出汁は唾を吐いた。


口出汁の唾は木工用ボンドになってる。寺の木材の噛み合わせにも、木材の加工、骨でできた釘と同じくらい使われている。

そのボンドがGALの手に飛んだ。


「貴様っ!」

その一言の直後、GALの手に持つ亀甲文様の紙が集まって、そのまま亀の甲羅に変化した。



1番中心の亀甲にはこんなことが書かれていた。

『ガチのマジで亀やけど質問ある?』


「そりゃあるだろな。」

口出汁は自分のしたことを易々と忘れた。


「質問されないって思ってるのかね?」

GALも易々と忘れた。


早速、この紙の送り主を寺大工と同じ方法で呼び出した。


来たのはガチのマジで亀だった。


骨の姿だったが、GALと口出汁はその姿を見て考えついた。


クレメンス吉行の前で、亀の吉骸をいじめ始めた。

千日解放行は毎日同じ道のりを歩くので、待ち伏せは簡単なのだ。


口出汁が亀を甲羅の中に閉じ込めると、GALが寺を作る時に出た端材で簡単な階段を作り、甲羅を延々と踏み始めた。


残機がものすごい勢いで増える予感がしたが、この2人に残機の概念は無い。いや、甲羅を踏み続けるだけで命が増える存在の方がおかしい。


クレメンス吉行はもちろん助けに入った。

「こらこら。やめなさい。」

GALは亀甲縛りをされて、口出汁は亀甲縛りされたが抜け出した。ほとんど出っ張りのない鍋には通用しない技だから。


亀はクレメンス吉行じゃなくて生き仏セットに抱きつくと、そのまま猛スピードでどこかに走っていった。


その間に口出汁が高水圧カッターでGALの縄を切ると、GALはクレメンス吉行に飛びかかり、急ごしらえの屏風に坊主を閉じ込めた。


生かしておいた凵の特殊能力だった。凵がおみくじを吸収するので、凶になるのだ。


「おみくじも免罪符も同じだったって教えたら、『金返せ』って怒ってたから。復讐されちゃったね。」

大量に凵を殺した口出汁がこんなことを口走っていた。


クレメンス吉行は坊主頭です。クレメンス凶行の時は超ロン毛でした。


クレメンス吉行はジタバタしていたが、凵の恨みを存分に受け止めることを決めた。


すると、先程の亀が猛スピードで帰って来た。

生き仏セットは千日経った錯覚のまま、クレメンス吉行が屏風の中にいることを確認するとこう叫んだ。

「ミッションニシッパイ!ミッションニシッパイ!」


生き仏セットは左手にクレメンス吉行に渡す脇差を、右手に介錯のための太刀を持って屏風を切り裂いた。

「セップクセヨ!」


屏風から飛び出たのはクレメンス吉行と、上手に描かれたジョーズだった。


「パワープレイの一休さんかよ!」

口出汁が言い終わらない内に、まっすぐにGALと口出汁に飛びかかってきた。ジョーズはクレメンス吉行を守る働きを持っているのだ。


「守るなら俺らじゃなくて生き仏セットを攻撃しろ!」

口出汁は高水圧カッターを放つも、ジョーズは空を泳ぎイルカショーのようにかわした。

そのまま生き仏セットの方へ泳いで行った。


「GAL!逃げるぞ。あのサメには太刀打ち出来ないぜ!生き仏セットならなんとかアイツを倒すだろ?」


「いや。生き仏セットは千日解放行を手伝うことしかできない。それに、もしあのサメが勝ったとき、どのみち僕らを襲ってくる。ここは確実に倒す!」


GALはそのままジョーズに向かって走り出した。


「やめろ!チンパンジーじゃサメには勝てないぜ!」

口出汁の声かけにも耳を貸さずに、GALの走ったその先はサメではなく生き仏セットの方だった。


「あそこに行ったなら持っているはず!」

生き仏セットの首にぶら下がる箱2つの内の1つを外すと、向かってくるサメに向けて箱を開けた。


少し遡って、生き仏セットの時間感覚を狂わせる方法。

亀を見た時に思いついた。竜宮城に連れて行けば良いのだ。

亀に指示を出して、竜宮城までの道を走ってもらった。


問題なのは、この亀はリクガメだった。竜宮城に行くのはウミガメだ。

そこで、GALはこのリクガメの骨をペリカンの魔法瓶、その名も“ペリ缶”に入れた。(ペリ缶は名前をつけてもらったことで命が宿り、勝手に水を出せるようになった。ヨダレ……じゃないぞ!水を勝手に出せるようになったんだ!)


ペリ缶から出てきたスープを飲ませた。

「これは、ウミガメのスープだよ。」


リクガメが飲んだのは自分の出汁だったが、GALの言葉のプラシーボ効果で、リクガメは水陸両用ガメになった。


あとは計画通りに生き仏セットを竜宮城に連れて行って3日で300年だから、千日分くらい過ごしてもらって帰ってきたのだ。


(勘の良い人は逆だと思っただろう。私も思った。)


GALがジョーズに向けて開けた箱は……そう!玉手箱だ。そのままサメはシワシワになり、サメの干物になった。


生き仏セットが介錯を強行しようとした時、水陸両用ガメの甲羅の999羽鶴がどんどんとクレメンス吉行の袈裟に吸い寄せられて、クレメンス吉行は千日解放行のRTA世界新記録を打ち立てた。


生き仏セットは満足したように笑うと消滅した。


ちょうどそのタイミングでお寺も完成した。


クレメンス吉行はクレメンス大吉行になってお寺の御堂の中に鎮座した。


口出汁が聞いた。

「寺の名前は?」


吉骸の寺大工が告げた。

「寺の名前は『骸寺』」


「クレメンス成分ゼロなんかい。」


お寺の周りには198階層の吉骸たちがクレメンス大吉行に集まっていた。


「寺完成したんか?」


「ガチ有能で草」


「寺ワロス」


お寺の周りで祭りが始まった。

「人気投票でクレメンス凶行一位にして、クレメンス大吉行泣かせようぜww」


「骸寺音頭でも踊ろうや!」


GALと口出汁も吉骸と一緒に骸寺音頭を踊った。

踊っている最中の2人の会話だ。


「そういえばなんでこんなことをしたんだっけ」


「そう。忘れた。」


2人が寺の門の前に来て寺の中を覗くと、ずーっと亀甲縛りをされたままの吉骸がいた。


2人のセリフが揃った。

「ご朱印帳だ!」

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