17話
197階層にどうすれば行けるのか、198階層に残るのは死骸だけ。役に立つものなど無い。
免罪符で天国に行くメに掴まって上に行く事に挑戦するも、触れようとしても透けてしまって失敗した。
2人に残された手段を考える。クレメンス凶行の千日解放行。これだけが頼りだ。つまり、次に進むために千日かかる。
「千日ぃ!?」
「えーと。マッチングマッチが出したものは……」
「分かってるよ。役に立たない」
「マッチングマッチは僕らの味方じゃない。」
「分かるよ。毎回大凶を避けて、凶くらいの結果をもたらすんだよな。」
おみくじの話をしたので、吉骸が近寄ってきた。
「【朗報】ワイ朗報を手に入れる。」
「おみくじなんだから吉報にしろ。」
口出汁がタイトルに口出しした。
「傷つくで。気をつけろ、ワイには手帳があるで。」
「手帳?」
「ほら。こんなにいろいろ書かれとる。ほとんど何書かれてるか分からん。」
「これって……」
「ご朱印帳だ。」
「この手帳出したら、謎のぐちゃぐちゃを書かれたんや。ワイは頭に血が昇ってしもうて、取り消せって言うたんや。そしたら……」
「その先はさ。いいよ……」
「これって境内性知能障害だね。」
エレベータージェントルマンがホログラムリモートで出てきた。
「境内の中で知能が下がる伝説の奇病!!」
「そんな。医者には異常は無いと診断されたんや!」
「医者はお寺の中にいないだろ?正常のはずだよ。」
「それじゃソースわ?w」
「グレービーソースでクレージーぼーずだね。」
気がついていないが、この2人もまた狂っている。狂っている者の異常とは?裏の裏は表なのか?いやいや裏の裏はオ・モ・テ・ナ・シだろう。
全員が気狂いなのだ。
「エレベーターが197階層で止まってしまった。自力で197階層までおいで。」
エレベータージェントルマンのホログラムはスムーズに携帯電話に吸い込まれた。
「ワイは。ワイはなんなんや?この世に救いは無いのか?」
ふと、GAL気がつく。
「おみくじってさ、神社の課金ガシャだよね。」
「そうだな。」
「ご朱印帳てさ。お寺?」
「そうだな。」
「“サワーオブテラー”のご朱印とかなら、何か不思議な力があるかも。」
「手帳、借りるぜ。ギリギリ健常者」
「……やーなの!」
不治の病が最も蝕むのは心だったりする。
「は?」
「ワイの手帳取ったらやーやーなの!」
口出汁はマッチングマッチを使って災いを持ち込もうとしたが、GALが制した。
「駄目だ。この狂気には知能を感じる。いちいちこの文を考えてるぞ!……キモいな。キモいけど、辛抱するんだ。境内を探せばコイツの知能を下げて手帳を奪える。」
「ふー!ふー!分かった。」
「ンニィィィ!!!」
「うるさい!」
今度はGALがマッチングマッチを取り出した。
口出汁も止まらない……!
マッチが鍋肌に触れる少し前に、吉骸の後ろから光が見えた。
「おやめなさい。私が救ってしんぜよう。」
その声の主はクレメンス……吉行だ。
クレメンス凶行はどんどんとその運勢を良くして行った。
クレメンス吉行は泣き叫ぶ吉骸に向けて、合掌すると、吉骸は亀甲縛りをされて縄で口を抑えられた。それでもご朱印帳は手放さない。
「縛られただけ?救われたのかな?」
「俺から言わせてもらえば、1番すべきことはコイツの思考から“神の啓示”に関する一切に関わらせないことだぜ。貼り合わせて張り合わせるのをやめさせたんだ。」
「千日解放行の1日目が今終わりました。」
GALは気がつく。
「袈裟の模様に亀甲文様の1つが追加された。」
「この袈裟に記録として文様を刻んで行くのです。」
「こいつが寺を建てるのはあと999日後かよ。」
「じゃあ誤魔化そう。この袈裟を完成させるんだ。」
生き仏セットが監視している、その中でこの袈裟を完成させるにはどうすれば良いだろう。
GALが閃いた。
「……書き込みだ。」
「書き込むんだよ。1000までが限界なこの袈裟に亀甲を書き込むんだ。」
「おみくじの運勢のマウントの取り合いじゃない!亀甲とその中に自分の言いたいこと。書きたいことを適当に入れて行くんだ!」
「確かに、“神の啓示”の無くなった今、他の娯楽にここの吉骸たちは飢えていそうだが、そんな物は辻褄も倫理も規定も守られない混沌になるだけじゃないのか?」
「そうです。ここの者達をきちんと救って、私の今までの凶行の責任を果たす。しっかりと千日やり切らねば!」
クレメンス吉行は坐禅を組むと生き仏セットが猫のように組まれた足の中に丸まった。
「分かった。ここの吉骸達を集めなければ。」
口出汁はGALと一緒に考えた。
口出汁の亠には今も『酸帯寺“サワーオブテラー”』をしっかりと目に捉えていた。
どうやら、お寺は木造らしい。
お寺には仏像があるらしい。
仏像はクレメンス吉行が務める。木造の御堂をどう作るか。答えは簡単。木材ならそこらにある。
凵が。
泣きつく凵を無視して、口出汁は高水圧カッターでどんどんと木材を作っていった。
組み立てるためには職人が必要だ。
木材の一部を和紙にして、GALは999羽鶴を折っていた。髪を広げると亀甲になっている。
999羽鶴は飛んで行っては書き込みをされて戻ってくる。
銀河鉄道のように連なる紙の鶴は七夕のカササギのライバルを名乗れる一体感だった。
その中には、当然寺を建立した経験のある吉骸もいて、すぐに999羽鶴の個体番号に矢印マークをつけて呼び出した。
198階層の寺フォーミングが始まった。




