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ゲコ面ライター ビチンタ  作者: チャウチャウ坂
15/31

15話

夜になって97秒後、先鋒の後にいきなり大将がきた。

いわゆる恐怖チェッカーの役割のUFOの報告が済んで、GALと口出汁を排除しようと動き出す。


199階層の人々の中にはUFOに襲われない擬態という意味でアルミホイルで出来たハットをかぶっていた。


面白いことに、嘘くさい雑誌の付録についてきたらしい。

それは月刊のヌーの写真集だったとか。

ヌーのホイル焼きでも作れってことなのか?


前話より、199階層は、騙された番組でよく観る巨大なファンが床に敷かれてその周りはリアルな空の演出がある全方位スクリーンの設備があり、錯覚を使った処刑が行われているのだ。


しかし、これから来たる大将の実力たるや、錯覚やトリックなどなく、本物なのだ。

世界を終わらせる力を持ち、恐ろしさはこの世にもあの世にも轟く。


ビチンタワールドには存在しないが、人類とかいう最悪の生物とやらを滅亡させることの出来る英雄的な一面を持っている。


それは兆にものぼる星を蹴散らし、億にものぼる銀河を粉砕し、万にものぼる宇宙消滅させた。


やけに早く、空に明るさが取り戻される瞬間、あり得ない緑色の光が起こった。

都市伝説を信じる純朴な空の民はこの異常に困惑していた。


都市伝説は起こらないのを前提にロマンを楽しんで行くものだから、実際に起こると何というか…興奮は出来ない……。……テンションが下がる。


机の上を掃除できるくらいの髭を持ち、茄子のヘタみたいな帽子を被った予言者が、WとVのエンブレムの空飛ぶ車に乗って寄ってきた。


「コレクソヨーゲン」

渋い良い声でそう言うと、去っていった。


「今のが中堅だったのか?」


特にそんなことはなかった。ジジイが空に飛ぶ様を見させられただけだった。今の一瞬の空飛ぶ車。こんなのが人類の夢らしい。


わざわざ、空の色が普通の夜の黒に戻ってから、恐怖の大王って奴が降りてきていた。


床に立って待っていた2人は何が出てきたのか暗くてよく見えなかった。


「そうだ!忘れてたけど上に行かないと。階段は?」


「階段どこだろうね。」


恐怖の大王は焦っていた。

『デビュー戦がこれ!?』

とか、そんな俗っぽいことを考えて、ショックを受けていた。


「何かいるよね。」


「うん。行こうか。」


「うん。」


GALと口出汁は恐怖の大王に、恐怖の大王は恐怖の大王に失望していた。

だって、これは実質的に来ていないのと変わらないのだから。


大王が、黒色の邪悪なオーラを纏う雷を放った。

かつて、伝説の次郎がこの技を受けたという。


漆黒の雷はその色が、またも夜の闇に紛れて、そして雷自体も、199階層の人工雲の作る摩擦のプラズマに引き寄せられて、床にいる2人には届かなかった。


「何もしてこないね。」


「うん。」


恐怖の大王は涙目だった。


恐怖の大王は彗星を隕石のように操って、2人にぶつけようとしてきた。


「流れ星だ!」


「どうせ映像だろうが。」


「いいんだ!願い事を……」


「本当に尊い願いなのだとしたら、“流れ星の見れる短い間に3回願い事を口で発する”とかいうミニゲームで消化すべきじゃないだろ。」

口出汁は星へ願う者達に口出しした。


「うんうん。あのさ、この流れ星、ずっといる。」


「ずっといるね。俺らは流れ星の下流にいるんだね。」


「死んじゃうね。」


2人は恐怖することもなく、『生き残れますように』と落ちてくる流れ星に願っていた。


手を握り、目を瞑った。


願い通りに、流れ星は199階層の空を模した演出の大気圏によって削られ、床の巨大ファンの風圧で、そのまま弾き返された。


目を開けると、目の前に近づく流れ星は綺麗に消えていた。さっぱりと消えていた。ただサッパリとした夜空があった。


「結局何も無いのか。」


「つまり、見間違いだね。」


「そういうことだね。」


恐怖の大王は体液が外に漏れるのが止まらなかった。焦ると、鼻から水が、目からも水が、そして体からは冷や汗が出るのだ。


その雨だけは2人に届いた。

「この雨しょっぱい」


「ここの雲は海水からできてんのか?」


「普通の雲も海水からできてるよ。」


そして、朝がきた。明るい太陽に、恐怖の大王が姿を現した。

恐ろしさ、王冠形には人の本能に訴える牙でびっしりの口に、3つの山型の出っ張りには黒い充血の目が覗く。


空の民の中で、アルミホイルハットを被っていた者だけが、漆黒の雷に撃たれて灰になっていた。


2人は見上げて、その姿をきっちりとまなこに刻んだ。


これで2人は恐れ慄くと気合を持ち上げる恐怖の大王は、目に入った口出汁の姿に驚愕した。

『アレはやばい!創造主も言っていた。まさか、ココに来たのか?』


2人は怪訝な表情になった。皆も考えてみて欲しい。怖がらせる対象に向けて、怪獣なり、化け物なりがコチラにビビっているのだ。

ムードなどあったもんじゃない。


「何かさ、アイツ焦ってるよな。」


「ああ。アイツ焦ってるな。きたねーな。冷や汗かいてる。」

その汗が、たまたま口出汁の中に入った。

「うわ!しょっぱいなぁ。んぅ?」


GALも真っ黒な毛皮が逆立ってしまった。

「昨夜の雨ってぇ!」


「怖い怖い怖い怖いぉ〜」


2人は始めて恐怖した。


恐怖の大王は始めて恐怖を抱かせることに成功した。

その事に気が付かず昇っていった。

恐怖の大王は実質何もせずに消えた。

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