14話
きちんと紹介文を読んでないであろう人々(自分も含む)のために、おさらいをしておくと、【ビチンタワールド】の生物は粘土から出来ている。
しかし、唯の粘土の塊というわけではなくて、ありとあらゆる我々の世界の事物の特性を持ったスーパー粘土生物なのだ。
粘土生物だから、よく合体するし分解も何とか出来る。
その分解された粘土生物もどこからか2人に着いてきていた。
ペリ艦隊の中からひっそりと199階層に降り立った。
199階層に付くと、ペリはお別れした。
「マタ来年キマスカラ。ソノトキマデニ……」
「その時までに?」
「“鳥類憐みの令”ヲセコウシナサイ。ジャアネ。」
「代が違うよ。」
「ていうか大体が違うよ。」
ペリ艦隊はハリボテの壮観を保ち去っていった。
199階層は模された上空だった。しかもそこにいる民は上の空だった。
皆が終わらないスカイダイビングを楽しんでいた。
楽しみが溢れると人は上の空になるのかもしれない。
「アババババ!」
「ウビビババババ!」
2人は落っこちる感覚に襲われた。
上の空の中の1人が声を出した。
「いや、違うのよ。私たちは無気力なの。」
見れば空中であぐらをかいたままの姿勢の女性がこちらを見ている。
「ぶぎりょぐぶぅ?」
口出汁は自分の中身を巻き散らしながら風に煽られて叫ぶ。
GALはペリ艦隊から貰ったペリカンのクチバシ魔法瓶に鍋の中身を受け止めた。
GALが出所を尋ねても答えが帰ってこなかったので、材質は不明だが、とにかく可愛いのでまぁ良しとして持ってきた。GALはギャルなので可愛いものに目が無い。
口出汁はそのまま鍋の出汁が無くなり、一時に話せなくなった。
この状況では、顔が風に吹かれてブスになるのでGALは好まなかった。
「でぼ、あ“なたば、じゃべっでる。」
「それはね。音声ソフトよ。ほら。付録で。」
それは趣味の悪い、あまりにも無駄な装飾や無尽蔵な散らばりの禍々しい模様にまみれた携帯電話くらいのサイズの機械だった。
「あなた達の分はないわ。空の中、落ち続ける感覚だけが襲うのよ。余裕もなければ優しさもない。」
「どうじで、ごごにいるんでずが?」
「来させられたの。私たちは皆同じくらい純粋で同じものを信じていたの。都市伝説よ。」
「でもその都市伝説、私たちの国の都市は戦争で消された。我々は絶賛処刑中なの。」
2人は201階層の氷の世界を思い出していた。
かの氷像たちも……もしかしたら。
「今考えれば、都市伝説っていうのはマイルドな宗教よね。そして今のこの世界のトップがその宗教を禁忌とした。それだけね。それだけで私たちはここにいる。」
その顔には悔しさが滲むようだった。
GALは今の話を聞くとある仮説を持ったので実行してみた。
ただ、199階層のその床に足をつけた。
GALは普通に立っていた。
「口出汁。降ろしてあげる。」
気がつけば普通に話せていた。
口出汁も、鍋の中身を注がれて、気圧を感じないことに肌で気がついた。
「おい!こりゃあ。」
「うん。信じる心を逆手に取られているんだ。」
そのとき、199階層に未確認飛行物体が現れていた。
処刑を受けている空の民はUFOに慄き、無様に立ち泳ぎをして逃げていった。
UFOの中の音声はこんな感じだ。
『ヨシ!ちゃんとコワがっているな。』
『今日もイジョウは……』
『何だ?アイツらは?』
『コワがってナイ!』
『ホウコクだ!ホウコクだ!』
「あのUFO……何の意味があるんだろう?」
「教えてあげるよ。」
電話からエレベータージェントルマンがホログラムとして出てきた。
「あのUFOはこの階層の仕掛けに順応しているかどうかの指標なんだ。あれをUFOと信じて恐れれば、ここが本当に空なんだって信じてることになる。」
「つまり、アレに無反応な奴は……」
「問題分子だね。ターゲットになるだろう。」
「ターゲットになると?」
「……やって来る。」
バシン!
UFOがこちらに突進して来た!
見た目の割には軽い衝撃で、携帯電話を弾く。
「危ない!レーザーに撃たれる!」
先程の女性がこちらに注目している。が、地面に立っていることには気が付いていないようだった。
レーザー光線に身構えたが、UFOが放ったのは赤い色付きのビニール紐だった。
GALは手で引っ張るとスルスルとビームが足元に散らばっていく。
「レーザー光線をヒッパルナ!」
コックピットらしい部分から灰色頭のらっきょうのような生き物がこちらを覗く。
UFOは、見れば軽いハリボテで、アルミホイルがハットの形に貼り付けられただけの手抜き具合だった。
「ワレワレハ前哨ダ」
「そのセリフのそこは宇宙人ってことにしよーよ。」
口出汁は相手の役について口出しした。
「宇宙人ダト?バカめ。ワレワレハお前たちがナニモノかを調査してハイジョするノダ。」
そう言うと、UFOはUROになってこっちに突進してきた。RはrunningのRね。
UROをGALはちゃぶ台返しの要領で弾く、UROはまたUFOに戻って、さらに元いたであろう星に帰っていった。
「先進的文明を感じない。」
「だが、前哨と言っていた。まだ何か来る。」
空が黒く、暗くなっていった。何かが来る前兆だと、2人は身構えた。
しかし、これはこの199階層に夜がきただけだった。




