11話
「先へ進むよね?」
エレベータージェントルマンは懐から鍵を取り出した。鍵はまっすぐ飛んでエレベーターの金網にある鍵穴を目指して行く。
「ちょっと待って。一応何回か一緒に戦ったからさ。」
GALはストラップまみれのガラケーで写真を撮った。
GALのストラップの1つにグッバイドッギーという死にかけの、この世とグッバイする目前の老犬がある。
「GAL。わしゃもう疲れたよ。」
「そっか。天使に送迎タクシー頼むね。」
「いや、お迎えじゃなくてさ、休みたいだけ。」
GALはストラップの紐をブチブチに引きちぎった。
「わしの点滴があっ!」
グッバイドッギーは心電図に丸い太陽0と地平線が現れた。
グッバイドッギーは磔にされたパンのミミックの中に入った。
パンのミミックの中ですぐに復活したグッバイドッギーが出てきた。
「わし、生きてるね。」
復活の条件の何かの変色。ステンドガラスでのスライム達の色の変化がストックされていたのだ。
「やだぁ〜私のストラップが不死身イナリー」
GALは皆がパンのミミックに献花をしている空気をぶち壊した。
「コイツは死をナメてるね。」
「ああ。」
口出汁とウヌマーは彼岸花を置きながら虚な目をしていた。
「彼岸花は別のお教えの方では?」
「そうじゃないじゃろ。わしが復活しているんじゃ。こやつは能力が生きとるよ。」
「うん。グッバイ。」
GALはグッバイドッギーとグッバイした。
パンのミミック。202階層は復活できるスポットになった。磔にされた崇拝対象とステンドガラス。完全に教会だからね。教会は棺桶を復活させてくれるからね。
「このまま進もう。長居できる程充実してない。80年ぐらいしか居たくないな。」
「そだね。」
「なぁよ、ここの広さってどのくらい?」
「広さね。最下層だから1番広いんだ。富士山から東京ドームを引いたくらいかな。」
飛ぶ鍵について行きながらエレベータージェントルマンは信楽焼の笑顔を絶やさなかった。
「そっか。」
口出汁はウヌマーを気遣って訊いたが、何の意味もなかったことを鍋で感じていた。
「エレベーターだ。」
鍵はまっすぐ鍵穴に突っ込んで行き、金網をくぐって外部連絡の受話器のボタンを押した。
『はい。こちらメリーさん。』
「エレベーターの活動再開をお願いしたいんですが。」
エレベータージェントルマンが応対した。
『202階層か。ダメだね。下の言う事は聞けない。』
「おいおい。乗れないじゃない!」
口出汁はエレベータージェントルマンに口出しした。
「こうなったらせめて階段を探そう。」
ウヌマーは周りを散策し始めた。
皆が注目する中で、エレベータージェントルマンはエレベーターの入り口で固まった。
信楽焼は入り口に置かれているものだから。
「駄目だ。頼みの綱のジェントルマンも固まっちまった。」
「残った手段はそうだな。お前の〈マッチングマッチ〉てやつ?しか無いじゃないか。」
「う〜ん、使う意味があるのかな?誰かこの状況を覆すことのできる願いがあるのかな。」
「まぁ。とりあえず俺にやって見なよ。」
口出汁はGALにマッチングマッチを擦り付けてもらった。
マッチに火がつく。鍋を温める火力は無かった。
唯し、奇妙なことが起こった。マッチに灯る火はいつもとは違う白い色だった。フキダシはトゲトゲだった。
フキダシの中には“く”が3つあった。3つの“く”でトゲトゲのフキダシを輪郭に笑顔が作られた。
笑顔はひとこと。「サンク!」
直後、フキダシの中の3つの“く”はマッチに灯る白い火の上で止まった。
それは……【災い】を表していた。
口出汁は災いの元である。
血のピラミッドに災いがやって来る。
血のピラミッドはそのままひっくり返った。
202階層がそのまま頂点になった。
『キャアー!』
電話先のメリーさんのひっくり返った衝撃が鼓膜に伝わってきた。
ウヌマーは溢れそうになった口出汁を持ってバク宙をして対応した。
GALはひっくり返った衝撃で首を折って、パンのミミックに復活させてもらった。
「今ならここが1番上ってことになるね。」
今の災いで死んだ筈のGALが1番落ち着いていた。
「そうか!そうだな。」
今度はウヌマーがメリーさんに応対した。
「今なら言う事を聞いて貰おうか。ここのエレベーターを起動してくれ!」
『はい。SOSですね。かしこまりました。』
電話が切れたと思えば、エレベーターのランプがパチリと付いた。
「やった!これで……」
口出汁のフキダシは役目を終えた。マッチングマッチの燃え滓はこの世界が築いてきたものと共に煙を上げて消えた。
マッチングマッチが消えると、血のピラミッドはもう一度ひっくり返って元の状態に戻った。
「エレベーターが動いたね。ようこそ。エレベータージェントルマンの出番て訳だね。」
「メリーさんはここのルールに忠実なんだな。こっちが上と分かった瞬間に対応してた。」
GALは口出汁の亠を拾ってきた。
「1つ気になんのはよ、『SOSですね。』ってとこだ。俺たちは助けて欲しい訳じゃ無くてエレベーターが動くようにして欲しかっただけだぜ。」
「いや。SOSで合ってるよ。202をひっくり返すと?」
「あー」




