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出稽古 19

「見た目ほど簡単ではないだろう。サキさんはさっき、両手首を掴む場面など実戦には無いのではと言ったが、例えば暴漢が女性を襲おうとする時、あり得ることの一つが手首を掴むということだ。そしてそれは突然起こる。掛け試しと違うのはそういうところなんだ。その場合、両手首の場合もあれば片方の手首の場合もある。だからいずれの場合にも対処できる技を稽古していくことになるが、共通しているところもあるので、そういうことも含めて稽古を重ねるんだよ。君たちには久米先生が預かって稽古を付けるわけだが、紹介されるくらいだから基本はそれなりにできているはずだ。それをここで教える技に変化させれば、短期間でも一定以上の実力は身に付けられるはずだ。本来の自分の技にそういったことを加え、自分の空手を作り上げなさい」


 知念は2人の思いを見透かしたように諭し、颯玄たちは何の抵抗もなく受け入れた。その上でさっきの技のコツをサキに教え始めた。


「サキさん、さっきは腕力で颯玄君を持ち上げようとしたね。でもそれは無理だ。筋力の違いということではなく、掴まれた時の状態が良くない。大人と小さな子供くらいの差があれば別かもしれないが、それに加えて相手は持ち上げられないように抵抗する。そういうことが合わさって姿勢を崩すことさえできないんだ」


 サキはそう聞き、ではどうすれは、という顔で知念を見た。その点については颯玄も同じだったので是非聞きたいと思った。2人の気持ちが同じであることを表情から感じ取った知念は再び自分の両手首を掴むように颯玄に言った。


 颯玄はサキの手首から手を離し、知念の手首を掴んだ。一度技を掛けられている分、今度はしっかり防ごうというつもりだったが、結果は同じだった。そこで知念はまた先に尋ねた。


「今度はどう見えた?」


「いきなり持ち上げたんじゃない。一瞬先生の身体が下に沈んだと思ったら肘も下がり、そのまま颯玄の肘がそのまま伸ばされ、肩を突き上げられたと思ったら一気に下に引き下げられ、颯玄が倒れた」


「ほう、そこまで見えたか。颯玄君はどう感じた?」


「1回技を掛けられているので、今回はどういう展開になるかは分かっていました。だから少しでも技の感覚を掴もうと思っていましたが、やはりかけられる側ですから細かなことは分かりませんでした。でも、今、サキが客観的に見ていたところからの話を聞いて、一連の流れが掛けられる立場から理解できるような気がします」



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