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稽古停止、しかし・・・ 7

 ここでの了解事項として戦う前にお互いに名乗ることになっているようだ。そこで初めて2人の名前を知ったが、呼びかけた側は湖城、応じた側は平という。


 野試合といっても武術を学んでいる者同士だ。いきなり始めるということではなく、互いに一礼をしてから始まる。


 湖城は基本的な構えで、左足を前にして中段を意識している。一方、平の方は腰を低くし、四股立ちのような状態になり、湖城とは逆に右を前にして半身で立っている。両腕を下に脱力した状態で下げている。颯玄にとっては初めて見る構えだが、その分、興味がそそられた。それは上原も同じだった。


 両者の間には見合う時間が生じた。一方が前に出れば相手は下がるといった状態で、間合いも詰まらない。互いに仕掛ける機会を狙っていることは傍から見ていても分かる。


 湖城を誘うためか、細かく動いているのは平の方で、突きとも打ちともつかないような中半端な技を出しつつ、湖城の反応を見ている。


 しかし、魂が入っていない動きでは湖城は反応しない。


 そういう状態が数回続いてから、湖城の方から間合いを少しずつ詰めてきた。平は誘うだけで本気度が感じられないため、湖城は自分の方から仕掛けようと思ったのだ。その様子は、空手をやっている人間なら分かるような状態だった。


 それまで静かだった湖城の前足が素早く動き、平に近づいたかと思った瞬間、右足で回転足刀蹴りを放った。観ている者からすれば意表を衝く動きで蹴られたような状態になったため対応するには難しいのでは思えたが、掛け試しに挑戦しようという人物だ。そのように仕掛けられても奥足を左斜め前に動かし、ギリギリの体捌きで対応した。


 そしてすかさず湖城の背後を取ろうとしたが、こういうことを事前に理解した上で放った蹴りだけに、蹴り足をきちんと引き、素早く平に向き合うような位置で再度構えた。


 ただ、最初の時とは位置関係が微妙で、湖城からすればやや右側方向に平がいることになる。そのため、湖城からすれば右側の視野が少し狭くなる。そのことを察知した平は、左の背刀を用い、さらに見えにくい方向から湖城の上段を狙った。並の実力者だったらそのまま頭部に当たっていただろう。そういう質感を感じる技だった。


 だが、湖城はその状態からでも平の攻撃を感じ、右の前腕を立てたような状態で背刀打ちを防いだ。周りから見ていると、まるで火花が散ったような感じの音が聞こえた。平の技の重さは見ていても分かる。それをしっかり上肢1本で受け止める湖城の実力にも注目されたが、その後は再び両者は間合いを取り、互いに呼吸を計っている。


 そして次に仕掛けたのは平だった。四股立ちの状態からいきなり左回し蹴りを仕掛けたのだ。前足を前方に進め、奥足で蹴ったのだが、この立ち方から回し蹴りの場合、動作が大きくなり、蹴りの軌跡が読まれやすい。


 だが、平の回し蹴りは膝のかい込みが鋭く、その蹴りにほとんど隙を感じることは無かった。しかも低い位置から蹴りということで、もし平の相手が自分だったらという思いで颯玄は戦いを見ていた。



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