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稽古停止、しかし・・・ 6

 次の日、颯玄は上原と待ち合わせ、掛け試しが行なわれると言われる辻という場所に行った。ここは那覇の遊郭街で、いろいろな男たちが集まってくる。そこには颯玄たちと同じ年頃の若者が多かったが、まだ掛け試しは行なわれた様子はなかった。今集まっているのは颯玄たちと同じように、掛け試しを見に来た人たちだろう、と考えていた。


 小1時間ほどその状態が続いたが、2人ともただ立っているだけでは間が持たない。空手の話をしたり、そこからちょっと身体を動かしたりし、時間をつぶしていた。


 それでもなかなか始まらないのでそろそろ帰ろうかという話になった時、近くにいた同じ年代の若者から声をかけられた。


「君たちも掛け試し、やるの? 俺も空手を稽古していてやってみようと思って何度か来ているが、噂では今日、最近連勝している人が来るらしい。ここには何度か顔を出しているから、知っている人からその話を聞いて、どんな人かを見に来たんだ。その内、俺とやってみないか?」


 体格は颯玄たちとほぼ同じくらいだが、雰囲気は掛け試しをやろうという人にしてはおとなしい感じだ。本気かどうか分からない話に颯玄たちは苦笑いしながら適当に合わせていた。それも時間つぶしになるし、掛け試しのことを詳しく知ることにもなるので、話は少しずつ弾んでいった。


 だが、実際に何もなければ今日はお流れかという思いになってきて、そろそろ帰ろうかと思い始めていた時、周りがざわついてきた。先ほど耳にして最近噂になっている人がやってきたのだ。掛け試しの世界では顔が知られている存在らしく、集まっている人たちは興奮気味だ。


「あの人がさっきの話の人ですか?」


 颯玄は立ち話をしていた人に尋ねた。「そうだ」という返事があったので注意深く観察したが、筋肉の状態からすると強そうに見える。その様子に颯玄は、もし自分が戦ったらどんな結果になるのか、ということを頭の中で考えていた。


「今日、俺と戦いたい奴はいるか」


 自信たっぷりに集まっている若者たちに声をかけた。掛け試しではここで立ち合うことを約束している集まる場合もあるが、今回のようにこの場で挑戦者を募る場合もあるらしい。先ほど掛け試しのことを教えてくれた人も、連勝している人のことは知っていたが、実際にこの日、その人がやるかどうかまでは知らなかった。この日はここで対戦者を見つけることになっていたようだ。


 もし問い掛けに対して誰も応じない場合、掛け試し自体が無くなったり、そこに集まっている他の人たち同士で行なったりすることもあるようだ。その場合、例えば先ほど対戦者を募った人が未届け人として、審判のような役割をすることもあるという。初めてこういう場を知った颯玄にとっては何もかも目新しく、興味深い。


 そういうことを思いながら様子を見ていたら、先ほどの呼びかけに応じた若者が前に出て行った。



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