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【ハイファンタジー 西洋・中世】

強欲に満ちた一族とその末裔

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/04/12

 

 昔。

 ある愚かな一族の当主が一時の欲に目が眩み悪魔を召喚した。

 当主が自分自身の願いを伝えると悪魔はあっさりとその願いを叶えた。

 途方もない代償と共に。


「今後、一族の当主が死ぬ度にその者の魂を寄越せ。後悔しても遅い。この契約は決して破られないぞ」


 つまり、一族は末代まで悪魔に魂を奪われ続けることになったのだ。


「その代わりに代替わりの度に当主の願いを一つだけ叶えてやろう」


 無論、慈悲などではない。

 この提案によって酷く欲望にまみれた魂を数十年に一度喰らうことが出来る。

 流石は悪魔といったところか。


 さて、初代から随分と時が経ち一族はついに滅びの時を迎える。

 欲にまみれ、欲に支配され、欲の極みに至った愚か者たちは自分達の命さえ奪い合ったのだ。

 最早、生き残っているのは幼い娘、ただ一人。


 悪魔は上機嫌で娘の前に現れる。

 この強欲に満ちた一族は大層長い間、自分の下に極上の魂を運んでくれた。

 挙句の果てにこんなにも滑稽な末路を迎えるなんて……一つの喜劇としても随分と楽しませてくれた。


「ご機嫌よう」


 悪魔は少女に声をかける。

 呼ばれた少女は無言で悪魔を見つめた。


「私が何者か知っているかね?」

「ええ。私の一族に付きまとっている愚か者でしょう?」

「君の一族から私に声をかけたのだがね」


 色を失った目と表情の少女に悪魔は笑う。

 この娘は絶望しきって精一杯の強がりを言っているのだろう。

 この様だとひょっとしたら自殺を願うかもしれない。


「さて。それじゃあ、君の願いを聞こうか」


 そう問いかける悪魔に少女は一つため息をついた。


「あなたは七つの大罪とそれに連なる魔王について知っている?」


 予想外の問いに悪魔は一瞬気を奪われた。

 当然ながら悪魔はそのことを知っている。

 人間の持つ最も罪深い七つの罪とそれに連なる魔王たち。

 即ち『怠惰』、『暴食』、『傲慢』、『嫉妬』、『色欲』、『憤怒』、そして『強欲』


「当然だ。私を誰だと思っている?」

「魔王を見たことは?」


 悪魔は首を振る。

 その様を見て少女はさらに大きなため息をついた。


「そうね。当然ね。星の数ほど居る愚かな民の内、王の顔を知る者なんて本当にごく僅かでしょうから」

「何が言いたい?」

「分からないの?」


 少女は氷のように固まっていた表情を緩やかに崩す。


「契約の逃げ道も作らないなんて、本当に間抜けね」


 悪魔の心に感じたことのない感覚が湧いたが、それが何か捉えきる前に少女は願いを言った。


「あなたと私の命を繋ぎなさい。あなたが死ねば私が死ぬように。そして、私が死ねばあなたもまた死ぬように」


 直後、契約によって悪魔と少女の命が繋がれた。

 悪魔は理由も分からないままに恐怖からガタガタと震えていた。

 少女はゆるりと立ち上がる。


「欲の限りを尽くした一族から何が生まれるか。考えたことはないの?」


 直後。

 悪魔は自分が弄んできた一族の姿を思い出す。

 自分を召喚した者は途轍もない強欲に満たされていた。

 その後に続いた者達もまた代替わりの度に強欲に満ちた願いを悪魔に叶えてもらった。

 そして、今、長く続いた『強欲』の末に一族は滅びた。

 自分の目の前に居る少女を残して。


「長く眠っていたのに、まさか人間によってではなく馬鹿な同族のせいで復活するとはね」


 悪魔は目の前に立つ存在が何者であるかを悟った。

 しかし、もう全てがどうしようもない。


「決して死なない程度に奴隷の方がずっとマシだってくらいに使い潰してやるから覚悟しなさい。この三下が」


 強欲に満ちた魔王の言葉に悪魔は項垂れて従うばかりだった。


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