第四話・始まりというのは唐突なもので...
「ん~...。」
昨日は結局、一睡もできなかった。
「食堂に来いとは言ってたが...。本当に明香なのか?」
未だに頭の処理が追いついていない。
いや、おかしいだろ。五年間も一緒にネトゲやってたフレンドが....。同じクラスの美少女、梅崎明香なんて...
「明日は雷にでも撃たれるのかな...。」
そんなことを考えつつ、朝の準備をして、学校に行くことにする。
「どうした、また今日は一段と顔がエグいな。」
「うるせえ」
くだらない会話を遥斗と繰り広げる。はぁ、こいつは気楽でいいよな。
そんなことを考えていると、
「おはよう」
「あ、おはよう...。」
あの、梅崎明香が俺に挨拶をしてきたのだ。やっぱりメイは梅崎明香なのか...。
「おい、貴様ぁぁぁぁぁ」
そんな怨念混じりな声出すなよ遥斗....。仕方ないだろ、こんなことがあるなんて予想もしてなかったし、
「おい、隼人...。お前、明香ちゃんとはどういう関係だぁ?」
「いやそれがカクカクシカジカで...。」
「おい、はやと..」
「ん? なんだ?」
「とりあえず死んでくれ」
嫌なんでだよ、おかしいだろ。
「いや仕方ないだろ、ネトゲのフレンドが梅崎明香だったんだからさ...。」
「だから、ふざけんなって言ってんだよ。お前、自分が何言ってんのかわかってんのか?」
「いや、少なくてもお前よりは分かっているが?」
「いやいや、どこが分かってんだよ..。お前、ネトゲで出会ったフレンドが...。たまたま梅崎明香だっただと? それどんな確率だよ。」
いやはやごもっともである。ネトゲで出会ったフレンドがクラスの美少女だなんて、落雷が直撃するより確率が低いんじゃないか?
「運がいいなんてもんじゃねえぞ」
「まぁ、そうだな」
「なんでそんな冷静なんだよ...。ふざけんな」
まあ、一晩悶々と悩んだからな。ある程度理解できない部分もあるが、落ち着いてはいる。
「あ、もうこんな時間か...。」
「何かあるのか?」
「明香と食堂に行く約束があるんだ」
「・・・・・・」
「ん?どうかしたか?」
「お前ぇ、その首おいてけぇぇぇ」
「ヒィッ」
首は落とされたくないので、急いで食堂に向かうことにする。
「あら、遅かったわね。」
「ごめん...。ちょっと用事があって...」
まぁ用事と言っても、馬鹿な悪友の面倒な話に付き合っていただけだが。
「まあいいわ、まず自己紹介をしましょう。 私は梅崎明香よ。」
いやそんな事知っているが? だってあなた、クラスのアイドル的存在ですもん。
「俺は小日向隼人、見ての通りネトゲ廃人だ。」
「見ての通りって....ところで隼人ってネトゲでも本名を名乗ってたの?」
「ああそうだな...。」
まあ、これはネトゲを始めたときにユーザー設定を間違えたからなんだが...
「ふふ、めっちゃそのまんまじゃない」
「いやいや、明香でメイって名付けてる方もそうだろ。」
「まあ確かにね。」
「おいおいあいつ、明香たんと気さくにおしゃべりしてるぞ。」
「これはどういうことなんだ!? 我らのアイドルが、一人のくそがきと楽しくおしゃべりしてるだと?」
「唐突なNTRにより、脳が破壊された。」
「いやいや、別にNTRじゃないだろ...。というかお前らの場合、BSSじゃないのか?」
「ちょっと何をブツブツ言ってるの?今あなたと話しているのは私なんだけど?」
「おいおいあいつ、明香たんを怒らせたぞ!」
「許せん...。血祭りに上げてやろうか?」
黙ってろ貴様らぁ。こっちの苦労も知らないで...。