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WAKARE  作者: 佳穏
哀しみの連鎖
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大切なもの14

何度かけても繋がらない佐知の携帯に今夜も雅和はやきもきしていた。


「やっとつながった この間佐知に話せなかったこと伝えたくて いま大丈夫かな」



「えぇ大丈夫よ あの時は話の途中で帰ってしまってごめんなさいお詫びに明日お弁当作ってママのマンションに行こうと思っていたの そのほうが雅和とゆっくり話が出来るでしょう」



「明日じゃなく早急に話しておきたかったから電話したんだ 佐知俺、今月中に明日香を引き取ることにした」



「もう決定なの」



「うん、保育園も決めたし明日香の世話をしてくれる人も確保したから」



「お手伝いさんに来てもらうの」



「いや事務所の泉さんが住み込みで見てくれることになったんだ」



「泉さんが」



「泉さんは若くして旦那さんと死別してずっと一人なんだ 旦那さんがいなくなり食べていくため親父の事務所で働きずっと今日まで頑張ってくれた それに加え泉さんは母さんにとっても大切な友人だったから生前母さんは泉さんのことを家族の一人だと言っていた うまくいかない家庭や夫婦の事を母さんは泉さんにだけは話していたのかもしれないな おれ母さんから言われた言葉を思い出したんだ 万が一、明日香のことで困るようなことがあったら相談しなさい私だと思って泉さんの力を借りなさいって、それで泉さんに事情を話したら半ば強引な俺からの頼みを快く受けてくれて私のようなものに頭を下げてくださってありがとうございます 先代から仕えたここでお役に立てるならこんな嬉しい事はありません そう言って泉さんは俺の手を握ってくれた 再婚もせず一人で生きてきた泉さんはもう若くはない 姉妹のように仲の良かった母さんがいなくなって寂しさも身に沁みていたんだろうな 年内に退職して泣く泣く田舎に帰るとてっちゃんから聞かされていたから俺と明日香のお世話をしてもらえたら泉さんはこのまま残れるし泉さんとなら家族のように暮らしていけると思ったんだ それを一番喜んでいるのは母さんだと思うんだ 一人で生きてきた泉さんを誰よりも心配していたのは母さんだったから」



「そうだったの、これまで孤独だった泉さんも明日香ちゃんと一緒に幸せになって欲しいな」



「うん俺も同じ、みんな幸せになれるといいな」



「そうね、ところでママの了解はとれたの」



「あぁママはわかってくれたよ 自分で決めたことならどんなにつらくても頑張れって それに泉さんがいてくれるなら安心だって、それからこうも言われた 片意地張らず恥ずかしがらず人に甘えなさい、人が一人で生きていくのは容易なことじゃない 私は周りの人に甘え沢山の人に支えられて生き延びてこられた 時にはプライドを捨て土下座しなければならない時もあるかもしれないけれど誰も自分をわかってくれないなんて独りよがりはだめ 自ら歩み寄って手を合わせ頼みなさい 佐知さんや私の力を借りたように一人で頑張ろうとしないこと持ちつ持たれつそれが人と人の繋がりなんだから甘えていいんだよって 俺はそのとき何が何でも一人でやると気負いすぎていた自分に気づかされたんだ 正直言って俺は明日香との生活が不安でたまらなかった 自分に鞭打ち砕けそうな気持ちを封じてきたけどママからの言葉で今は片意地張った力が抜けて明日香をしっかり守っていく自信もついた これから二人で、いや泉さんにも助けてもらって頑張ってみるよ」



「・・・」



「佐知はまだ納得していないみたいだな」



「そうじゃないの

さよならがつらいだけ 仕事が終わるとわたし毎日のように明日香ちゃんに会いに行っていたでしょ 嫌なことがあっても明日香ちゃんを見て抱きあげると元気になれたわ だからいつも頑張れって元気をくれた明日香ちゃんとお別れするのがつらいの」



「これからだって会えるさ また明日香とここに」



「あっごめんなさい キャッチが入ったの 終わったら折り返し電話すから待ってて」



「いやもう遅いからいいよ じゃおやすみ」



「ごめんね、お休みなさい」



またごめんか・・ママが言ってた佐知の恋話は満更ウソでもないかも・・



佐知が一方通行の恋をしているのならその相手が誰なのか雅和は知りたくなった。佐知を乗せ去っていった男の影が雅和の脳裏によぎっていた。





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