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WAKARE  作者: 佳穏
哀しみの連鎖
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大切なもの9

「いなくなることも会えなくなることも全部いや、そんなこと考えていなかったし思ってもいなかったんだもの だから私はいや、いやなの」



「まったく女は子供より扱いにくいんだな 佐知聞いてくれ、この話はすぐにどうこうってことじゃないんだ ママにもきちんと相談して決めようと思っている 笑顔で送り出してもらいたいから何度でも君を説得するから時間がある限り話そうそれでいいだろう」



「いくら話したって私は・・・」



「もう話はやめにして食事にしよう」



「井川君は私と別れたあとに出会った美香さんを愛した、私が愛された愛より深い愛であなたは美香さんを愛していた 美香さんがいない今もその愛を貫こうとしているそんな井川君は私と同じ、別れた人を忘れられずその愛を今も胸に抱えいきている 苦しいの今も苦しくてたまらないの 井川君、美香さんを思い出して涙することなかった?あったはずよ 私はずっとそうだった、今のあなたのようにわたしは」



「もうやめてくれ 終わった愛を語ってそこから何が始まる・・わかるだろ」



「井川君は私と過ごした昔を・・私のことを一度も思い出さなかった?あの時の記憶は全部消えてしまったの、今はもう愛の欠片さえ残っていないの」



「今もこれからも君と昔の愛を語ることはない・・そう俺は思っている 佐知は再会して築いた俺たちの今の関係を台無しにしたいのか 俺はこの関係を大切にしたいんだ 君の気持ちは痛いほどわかっている でも前にも言ったように俺はその思いに答えてやれない・・ごめん佐知」



佐知は溢れ出る涙を隠せなかった。明日香の泣く声に佐知は我に帰り涙をぬぐい頭をあげバックを手にした。



「ごめんなさい わたし又あなたを困らせた 本当にごめんなさい」



「こんな状況のまま帰るつもりなのか」



帰ろうとした佐知の腕を雅和は掴んで離さなかった。



半ば怒っているように見える雅和を佐知は涙目で見つめ返していた。



「このまま帰るなんて許さないからな」



「腕が痛いわ 手を離して」



「俺たち昔もこんなことあったよな」



「・・・・・」



「あの時と同じだ 俺がこの手を放したらすべてがここで終わる いまある絆が切れたら俺達はもう会うこともないだろう、それでいいのなら好きにすればいい」



雅和の言葉に佐知はその場を動けなくなった。



「わかってくれたんだね」



「井川君の美香さんを思う気持ちは少しも色褪せていない その思いは永遠に変わらないって分かっているのに私はいつもあなたを困らせてしまう ごめんなさい」



「気持ちが変わらないなんて誰が断言できる おれ自身この先どうなるかわからないし女々しく思いをひきずっている俺に愛を語る資格はないんだ 男だったら誰だって愛する人を幸せにしたいよ、だけどそれが出来ないとわかって愛を受け入れたらそれは親父と同じだ 俺はずっと母親の涙をみて育ったから愛する人を母さんのようにはしたくないんだ 父のすべてを知っている君にならわかるだろ 俺たちがこれからどうなるかそれは分からない でも絆がある限り俺は君と繋がっていられる繋がっていたいんだ佐知・・俺は美香さんだけをこれからも一生愛すると決めたけど・・ときが経てば人の気持ちは変わってしまうのかな、もしかするとどんなにあがいても変えなければならない時が来るのかもしれない」



「そんな日が本当に来るの 生涯美香さんを愛すると誓ったあなたにそんな日がいつくるというの」



「何度も言うけど今は先のこと何にも分からないよ 俺の気持ちがこれからも変わらないか否かは俺には勿論、佐知きみにもわからないことなんだ いつか向き合える日がくるかもしれないし。佐知と俺は別れたけど今もこうして繋がっている 普通じゃ考えられない事だよね 世の中には色んな愛が散らばっていて俺たちの絆もそのひとつ 愛がどんな形に姿を変えようが愛に変わりはないと俺は思うんだ」



「絆も愛ならその愛ってなに、それってどんな愛なの」



「それは・・俺にもわからないけど・・

龍一と真砂子の結婚式で再会した夜のこと覚えてる?ホテルで話したこと」



「二人手を繋いで夜を明かしたのよね 思い出すとおかしいわね」



「あの夜、俺たちは握り合った手だけは朝まで離さなかったよね あの日俺と佐知のすでに終わっていた愛が男と女を超越した愛、絆に変わったんだ」



「あの時の再会は亡くなった和由兄さんが導いてくれたと思っているの 私たち共通の兄、和由兄さんが繋いでくれた絆が愛なら私たちは愛で繋がっていると思ってもいいの?

いいのよね、井川君」



「あぁ俺達は愛で繋がっている 但しその愛は残念ながら君が願う昔の愛とは別物だけどね」



「わたし・・過去の愛にしがみつくのはもうやめるわ 簡単にはいかないかもしれないけど今ある絆の方が大切だもの」



「それがいい、今は無理でもいつか二人で笑いながら昔の愛を語れるようになれたらいいな」



その雅和の言葉に佐知は涙を拭い笑顔を見せ大きくうなずいていた。



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