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WAKARE  作者: 佳穏
父の消息
72/192

素顔をみせて4

何も知らない美香は大きく膨らんだお腹を撫で母親の顔を見せていた。すでに安定期に入っていたが爆弾を抱えた体は常に危険と隣り合わせで予断の許さない状態は変わらなかった。



「最近はベットから移動するのもひと苦労なのよ」



「ゆっくりでいいから無理するなよ

辛かったら俺が抱っこしてやるから」



「それじゃ赤ちゃんだわ」



「美香さんの唯一の欠点は甘えないで我慢しすぎることだよ」



「看護士さんにも言われたわ 病院にいるときはありがとうなんて頭を下げなくていいから大きな顔して私たちに甘えなさいって」



「そういえば有り難うは美香さんの口癖だよね」



「そうね、思えば亡くなった母親もそうだったわ 親子だから似てきちゃうのかな 最近鏡の中のわたし母と重なって見える時があるの」



「美香さんのお母さんを俺は知らないけど美香さんに似ているなら凛とした美人だったんだろうな」



「誉めてもらってお母さんもきっと喜んでいるわ ねぇ最近何か心境の変化でもあったの、雅和変わったわ」



「俺が変わった?」



「大人びたっていうか、とても頼もしくなったような」



「ようなってそれはないだろう 頼もしくなったようなじゃなく、なったって言ってほしいな」



「そうね、ご頼もしくなってますます惚れ直しました 雅和はどんどん私を追い越して成長しているのね」



「なんだよそれ、今まで俺が頼りなかったってことじゃないか」



「ねぇ雅和、どんなに過酷な運命でも大切なのは今よね 満ち足りて輝いていた過去は振り返えらない、そうじゃないと過去に縛られ前に進めない」



「そうだよ 過ぎたことに囚われちゃいけないんだ 俺と美香さんに大切なのは今、未来しかないんだからね」



「そういえばあれからお父さんから連絡あった?体調崩したりしていなければいいんだけど」



まばたきをしながら雅和は返す言葉に詰まった。



「雅和どうしたの すごく疲れてるみたいだけど大丈夫」



「大丈夫、俺は不死身だから心配しなでいいよ お父さんはいま一人で歩けるようにツラいリハビリに励んで美香さんと生まれてくる孫に会いたいと頑張っているんだ 美香さん大丈夫だよお父さんは必ず会いに来てくれるから信じて待とう、二人でお父さんを待とう」



「うんそうよね」



「君に会いたいと頑張っているお父さんのために美香さんも負けるなよ」



「えぇわかってる負けない 病気になんか負けたくない勝ちたいから逃げないで頑張る」



「そうだよその気持ちがあれば大丈夫だ」



愛する美香を守ろうとする嘘・偽りはすでに善と化していた。美香のためにつく嘘も愛、苦しくてもそれを隠し続けるのも愛と幾度も自分に言い聞かせたがそれが果たして正しかったのかと雅和は歯がゆい思いを抱えていた



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