心の赴くままに4
「それで佐知からの連絡は?」
「何もございません 佐知さんが連絡もなしに・・どうなさったのでしょうね」
「あいつは俺が無理してでも迎えに行くのを知っているから・・」
「佐知さんがこちらに向かっているのは確かでございますから佐知さんの到着をお待ちするしか・・わたくし急いでお部屋のお掃除をしてまいりますね」
雅和は佐知と秀和のための準備に追われる泉のあとをついて回っていた。
「いい大人がさっきからソワソワウロウロ わたくしの目に入ってくる雅和さんの姿は親のお迎えを待つ園児のようでございますよ」
「俺が幼稚園児?その例えは絶対おかしいだろ」
「そうでございましょうか 帰国してからの雅和さんはわたくしの側を離れず佐知さんと秀和坊ちゃんはいつ来るのかとそればかり申しておりますよ 私がどれほど心配して雅和さんのお帰りを待っていたかなどお構い無しでございましたでしょう」
「その事なら十分に詫びて泉さんも許してくれたはずだろう 更年期で怒りっぽく・・ごめんそんなわけないな泉さんの更年期はとっくに終わってるよね」
「なんと嘆かわしい事を・・わたくしが怒っている訳はとうにお分かりになっておられるはずです ご自分のお気持ちをきちんと佐知さんにお伝えになって下さいと言うことでございますよ ご自分の気持ちを明かさずして佐知さんの気持ちをお聞きになるなんてとんでもないことでございます 佐知さんのお答え如何で雅和さんはご自身の気持ちを変えるおつもりでいらっしゃる そんな女々しい男に成り下がるのだけは御止めになってくださいませ 掃除が出来ませんからわたくしのあとをついて歩くのはおやめになって早くお着替えを済ませてください お髭ひげも伸び放題で、そんなお顔で佐知さんとお会いになるおつもりですか」
「今日の泉さんスッゴク怖いから顔洗ってさっさと着替えるとするか」
「もうここにはおいでにならず、リビングのソファーにドーンと座って佐知さんと秀和坊っちゃんをお待ちになって下さいませ」
「あぁ・・うんそうするよ」
「仕事はできるのに自分の事となるとてんでダメ・・これではまだまだお父様の柳木沢様の足元にも及びませんねぇ」
「仕事以外の俺ってそんなにダメな男なのか」
「そう言われたくないのでしたら佐知さんの前ではしっかりなさいませ」
「しっかりも何も俺は普段どおり普通でいいと思うんけど」
「普通でないからこうして私ごときにはっぱをかけられているのでございましょう もしやして雅和さんはご自分のお気持ちに戸惑っておられるのでは・・」
「・・・・ 」
「わたくし、また余計なことを申し上げてしまったようでございますね」
「いつもの事だから慣れっこで~す さあトットと着替えて泉さんに言われた通りソファーでド~ンと構えて佐知と秀和を待つとしますか」
「そうなさいませ わたくしは急いで此処を片付けてしまいますから」