決意6
「やっとこれで俺も恩返しができる これまで色々あった俺だけど言い尽くせないほど佐知には助けてもらったからな」
「助けたなんて大げさよ 困っている人がいたら手を差し伸べるのは当たり前だもの」
「その当たり前のことさえ出来ないご時世だから佐知は絶滅危惧種に近い存在なんだよ」
「バカにされてるのか持ち上げられているのかなんだか複雑な気持ち」
「佐知を悪く言う奴なんかいないからもっと自分に自信を持ったほうがいいお前は本当にいい女だから」
「私がいい女ならそんないい女を捨てる男は大馬鹿野郎だわ ねぇそう思わない」
「はいはい大馬鹿野郎ですみませんでした あの時の俺は未熟者でまだまだ青二才でしたから」
「だったら私も同じ、幼くて大人になりきれていなかった」
「あのときの俺たち・・あの時はあれが精一杯で、だからあれはあれでよかったんだ」
「あれはあれでって、あれってなに」
「あれはあれだよ」
「それじゃ答えになってないわ」
「あ~めんどくさいな つらい別れもあったけどあんときは楽しくていい思い出だった・・てこと」
「回りくどい言い方しないで始めからそう言えばいいのに」
「いま思えば年齢に応じた恋愛ってものがあるのかも知れないな おれ若い時の恋愛も結末はどうあれ悪くなかったなって思ってるんだ」
「そうね、私たちのあの恋愛もあの時でなければ体感できなかった大切な思い出よね」
「いい思い出だったなんて言ってる俺たちは年くって成長したって事か」
「ピンポーン正解、雅和は頼もしい立派な殿方に成長なされ佐知は嬉しゅうごじゃります~」
「急になんだよそれ、日本語おかしくなってるぞ」
二人して昔話を笑って話せるようになった佐知は先が見えない霧が少しずつ晴れて行くような気持ちだった。別離から今なお繋がる雅和との関係を生涯失くしたくないと心から思っていた。




