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WAKARE  作者: 佳穏
追憶
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時を止めて3

柳木沢さんは又一人ぽっちになった


間違いなく又一人の生活に戻ったと佐知は直感した。



「柳木沢さんにまたお会いするにはどうすればいいでしょうか 電話番号が分かりません」



「君がまた僕と会ってくれるそれは嬉しいね 電話番号が分からないって、僕は君に幾度も携帯の番号を渡したはずだが」



「申し訳ありません 全て捨ててしまいました ごめんなさい」



「じゃもう二度と捨てないでくれよ これが最後だからな」



柳木沢は携帯番号のメモを佐知の手に握らせた。30分程の柳木沢との会話はしぼんだ心を埋めてくれた。


佐知は家に戻ると一気に疲れが出たのかベッドに体を沈めた。肩先の固い感触に手を伸ばすと出掛けに探していた携帯が枕の下から出てきた。着信が入っていた。小躍りしたが着信履歴は真砂子からだった。雅和だと期待していた携帯電話をふとんに押し込もうとしたとき真砂子からの電話が鳴った。



「電話に出ないからまだ雅和と楽しんでるのかなって でも帰ってたんだね さちも大人の恋愛が出来るようになって安心したわ それでどこに行ってきたの 勿体つけないで教えなさいよ」



「いったい何の話、誰の話しをしているの 分かるように話して ねぇ真砂子」



「大きな声だしてどうしたのよ こっちが聞きたいわ 雅和と旅行に行ってたんでしょ」



「旅行って誰がそんなこと言ってたの」



「龍一が雅和を誘った時に佐知と約束があるからって断られて。そのときに旅行に行くって言ってたらしいよ」



「私はずっと家にいたし旅行なんてしていないわよ」



「雅和どうしてそんな嘘を それならあいつは何をしてたんだ」



「私達クリスマスのあと何度かデートしてそれっきりよ」



「それっきりって どうして」



「最後に会ったとき雅和の携帯にひっきりなしにメールが入ってきてた それからなの 彼と会えなくなったのは」



「さち任せて私が調べてあげる 何か分かったら知らせるから待っていて 心配だろうけどあいつのこと信じよう あまり考えすぎないで待ってて」



「ありがとう、こういう時はやっぱり真砂子だね」



3日後真砂子から電話が入った。思いのほか早い報告に佐知は驚いていた。



「わかったよ 雅和の携帯に電話してきたのは元カノだった」



「昔の彼女・・」



「雅和に彼女が出来たと聞いて復縁をせまってきたそうよ 自分で振っておきながら今になって未練がましく追ってくるなんて最低だわ」



「でも、それが私と雅和の旅行にどうつながるの」



「私と佐知の連絡を阻止したかったんじゃないかな 雅和は佐知に心配をかけたくなかったはずよ だから元カノのことも隠したかったんじゃない

元カノの執拗な電話と泣き落としに雅和は手を焼いていたそうよ それでもあいつ優しいから納得してくれるまで話し合ってたらしい 雅和の気持がもう自分にないと知って というより雅和に自分は遊ばれていただけとわかったのね それで彼女は何も言わずホテルから姿を消したんだって」



「だから会えなかったの? なんだか複雑だわ」



「雅和に大切な恋人がいるって分かったから元カノは消えたのよ 雅和から佐知を思う気持を聞かされた元カノはもう出る幕はないと去っていった 嬉しい限りじゃない」



「・・・・」



「でも雅和が佐知と会えなかったのはそれだけじゃないみたいなの 詳しいことは聞けなかったけど家で色々あるみたいよ」



「そうなんだ、じゃ彼はいま本当に大変なのね」



「もう少し我慢して待ってあげて あいつは佐知に本気で惚れているよ だからデタラメな自分を変えようと努力しているの 今回の件は聞かなかったことにして雅和を信じて待ってあげて さちお願い」



「うん大丈夫、雅和を信じて待つわ」



あの時の電話の相手は女 元カノだった。見え隠れする女の影に佐知は不安は隠せなかったが今は真砂子の言葉を信じて待つしかなかった。


真砂子からの電話のあと雅和から連絡が入った。あまりのタイミングに佐知は真砂子が手を回しているような気がした。



「佐知、この前はごめん」



「雅和に会いたい、ものすごく会いたい」



「俺も会いたかった 明日会おう」



「会えるの」



「ああ、会いたい」



いつも待ち合わせる店で佐知は恋焦がれた雅和を待っていた。約束の時間まで2杯のコーヒーは余裕で飲めそうだった。間が持てなくなってソワソワし出した頃、駆けて来る雅和の姿が窓越しに見えた。



「この前は悪かった ほんとにごめん」



「ううん、いいの気にしないで ねえ雅和、私たちこれからも一緒よね・・離れたりしないわよね」



「俺と佐知はずっと一緒、離れないよ」



「私ね、会えなくなってからあなたの事ばかり考えていたの このままもう会えないのかなって思ったら胸が張り裂けそうになったわ あなたは私の大切な人だからずっと側にいて、私を一人にしないで」



今にも溢れだしそうな佐知の瞳に雅和は言葉を失っていた。



「あっごめんなさい あなたを困らせるつもりじゃ、そんなつもりで言ったんじゃないの」



自分を見失うような付き合いは賛成できないと言った母の言葉が頭を過ぎった。今日もまた雅和の携帯が鳴り続けていた。



「遠慮しないで早く出て」



「うんごめんね」



電話を終えて戻ってくる雅和に佐知は伝票を持って駆け寄って行った。



「今日はもう帰りましょ 雅和いま、お家の事で忙しそうだから」



「真佐子に聞いたんだね、ちゃんと話が出来なくてごめん、家の事が落ち着くまでは暫く会えないと思うけど大丈夫」



「うん我慢するわ」



「今は何も話せないけど一段落したらすべて君に話すから」



「わかったわ 今日はありがとう、無理して来てくれたのよね 我がままいってごめんね 連絡を待っているわ」



「又すぐ会えるようにするから待っていて、本当にごめん」



時が止まってくれたらずっと一緒にいられるのに・・


佐知は涙目で曇った走り去る雅和の後姿を見えなくなるまで見送っていた。


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