時を止めて
クリスマス商戦も佳境に入り町中がクリスマス一色に染まっていた。❌で埋め尽くされたカレンダーの23日に思い切りバッテンをつけた。すぐ隣の24日の数字には二重の花丸がついていた。
やったあ 明日は待ちに待った花丸の日、ドキドキして今夜は眠れそうにないわ
24日の朝は人生で一番の早起きの日となった。
まだ3時半、まだ4時、まだ5時 ああ~もうだめ眠れない・・
たまらずベッドを飛び出した。壁にかけた勝負服が飛び起きた反動でヒラヒラ踊って見えた。
繁華街の町はいつも以上の輝きをまして賑わっていた。光のイルミネーションが凍てつく季節を変え明るい気持ちにさせた。
佐知は待ち合わせのホテルの前で雅和を待っていた。そこへ突然サンタクロースがやってきて袋からメッセージを取り出し差し出してきた。サンタは封を切るジェスチャーをして見せた。
「開けろってこと 中を見てもいいの」
サンタは両手で丸を作り頷くとコミカルなステップを踏み去っていった。このサンタが真砂子の彼氏龍一とは予測できないサプライズだった。
佐知は凍えた指先でそのメッセージカードを開けた。
/1102号室にて君を待つ雅和/
カードを握り締め雅和が待つ部屋へ駆け出していた。
案内ボードの矢印→を頼りに1102室に進んでいった。1102を確認すると急に鼓動が乱れだはじめた。ノックの後、開いたドアから雅和が姿を見せ手を差出し招き入れてくれた。
部屋に入るとそこには青々としたツリーがあった。
「佐知と俺のクリスマスツリー 君に贈るクリスマスプレゼント 今年はライトだけにしたんだ 二人で毎年少しずつ飾り付けてツリーをいっぱいにしよう」
「私たちの二人のツリーなのね、素敵なプレゼントありがとう 雅和とのクリスマス・・わたし昨日から緊張して体の振るえがとまらないのよ」
「俺も心臓がバクバクしてた」
「雅和は初めてじゃないのに、おかしいわ」
「おかしくないよ、今年のクリスマスは特別なんだ 佐知と同じ俺にとっても異性と過ごす初めてのクリスマスだと思っているから」
二人はホテル内のレストランでクリスマスディナーを堪能し明かりを落とした部屋でツリーを見つめていた。眩いばかりのオレンジの光たちが勢いよくツリーを駆け廻っていた。それは高鳴る二人の鼓動と同じだった。そしてそれは愛の世界にいざなう女神の鼓動のようだった。
二人だけの宵の扉が開こうとしていた。雅和は佐知の手からワイングラスを取り上げテーブルに静かに置いた。その瞬間、体が引き寄せられ佐知は雅和の腕の中に抱かれていた。
「さち 君が欲しい でもイヤだって言われたらツリーを眺めながら一晩中君を抱きしめて朝を迎えようと決めてきた」
「ごめんなさい 私こういうの初めてだから」
「謝らないでいいよ 佐知の気持ちはちゃんと伝わっているから」
雅和の大きな胸に抱きしめられ佐知の緊張は少しずつ解れていった。突然雅和の硬い芯が体をはうような感覚に佐知は身体を硬直させ震えだしていた。しかしそれは拒絶ではなかった。佐知自身がはじめて覚える体の変化と欲情だった。
「・・今夜は抱いていいのよ 私を・・」
「ずっと佐知が、君がほしかった 佐知」
繰り返し何度も佐知の名を呼び続ける雅和に佐知も又、爪を立て応えていた。会えなかった寂しさを埋めるように心と体を重ねあっていた。熱く潤った体を攻め続ける雅和の首筋にボクサーのようなほとばしる汗が見えた。
私が・・男の人を求め欲しがっている・・
もうひとりの自分に戸惑いながら佐知は挑発するように雅和の肌に唇を這わせていた。このまま地の果てまで落ちてしまってもいいとすべて受け入れた体は夜露に濡れたブロッサムピンクの薔薇と化していた。二人の体にすべてを溶かしてしまう熱い化身が荒波となっておい被さっていた。その波は大きく寄せては返すを終わりなく繰り返した。
「心が入ると男女の愛ってこんなに違うんだね 君が愛おしくて涙がでそうだった、俺こんなの初めてだから」
「私もよ こんなに胸を 身体中を振るわせる愛があるなんて・・初めて知った」
狂おしいまでの一夜が終わろうとしていた。二人は体を縛り付けたように抱きあい深い眠りについた。




