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スタンピード注意報3 対策会議

 午後からも続々と兵士が集まりつつある。

 夕方頃、第1回の対策会議が開かれた。

 俺も父ちゃんズとともに伯爵代理として参加。

 その場でみんなに紹介された。


「(え? あれが伯爵の嫡男? 本当に醜いエロ豚じゃなくなったんだな。というか、まるで別人というか、稀に見る美少年じゃないか)」


 ほうぼうでヒソヒソ話が。

 俺の変わりようは昨年の寄り子懇親会で披露している。

 また、俺の領の周囲ではそれなりの噂話が飛び交っている。


「(伯爵は病気療養中ということだが、武力的にどうなんだ?)」


「(それがな、脇を固めるあの二人。領軍の司令官と副司令官が伯爵並の武力の持ち主だという噂だぞ)」


「(信じられんな。伯爵は王国有数の魔導師だぞ。それが二人も現れたってことか?)」


「(いやいや、あの二人は剣技とかは優れているが、魔力は今ひとつという評判だったろ。どうなってるんだ?)」


「(私は、女神教会の動向にも興味がある。真実教会が押されているという話だが)」


「(それもな、教会の産品である回復薬がとてつもなく優れモノだというじゃないか)」


「(それは本当だぞ。女神教会の回復薬はフェーブル街の冒険者ギルドで販売されている栄養剤と同等だと言われている。私も一つ手に入れて使用したが、中級回復薬並の効果がある。しかも二百ギルと馬鹿みたいに安い)」


「(ああ。うちでも評判だ。だが、冒険者ギルドでは長蛇の列ができていて早朝にその日の分が売り切れる。女神教会では信徒になる必要がある。つまり、入手が難しいんだ)」


「(なるほど。しかし、販売数が増加すれば真実教会は駆逐される勢いだな)」


「(先日、流行り病がフェーブル領全体に流行したが、女神教会とあの伯爵代理が中心となってあっと言う間に鎮火させたらしいぞ。真実教会は出る幕がなかったという)」


「(うちでも調べてみたんだが、真実教会は続々と女神教会に転向しているらしい。二十近くの真実教会領があったんだが、今や3つ程度にまで減ったと報告がきたぞ)」


「(なに、それでは真実教会も焦ってるんじゃないか?)」


「(ああ。ここ数ヶ月ほどでバタバタと転向していくもんだから、対策のとりようがなかったらしい)」


「(もともと各教会は独立性が強いからな)」


「(ああ。真実教会本部が対策を立てようにも限度はあるな)」


「(それでもな、裏でいろいろ動いたらしいぞ。中には武力で脅したところもあるという)」


「(ほう。真実教会の『裏』の部隊か?)」


「(そこまではわからんが、多分そうだろう。だが、襲撃の翌日、襲撃者が処刑されて吊るされたらしい)」


「(何? 真実教会の裏の部隊は残忍さとその武力の高さで恐れられているが、それを一蹴したのか。ただの地方の神官たちが)」


「(どうもな、女神教会の裏の部隊がとんでもなく強いらしい)」


「(ああ。うちの報告でも正体がまるでわからん謎の部隊という)」


「(改良馬車の件といい、あの領は急速に強化されているな)」


「(うむ。その中心にいるのがあの伯爵代理だというのが専らの噂だ。回復薬も改良馬車もあの少年が開発しているらしい)」


「(まだ成人前だろ? 超一流の薬師であり鍛冶師ということか?)」


「(しかも、冒険者ギルドでB級判定されたらしい)」


「(は? 2年前には勇者候補と決闘して瞬殺されただろ? スライムにやられたって笑い話になってただろ?)」


「(ああ。その少年だ。この2年の間に劇的な変化が起きたんだな)」


「(伯爵にしても、昔は周辺では誰もが知る美丈夫だった。無論、魔導師としての実力は王国中に知れ渡っていた)」


「(カエルの子はカエルってことか)」


「(それは違うぞ。先の流行病の件だけじゃなくて、領内のいろんなことを劇的に作り変えている。いい方向にな。領民も手のひらを返したように伯爵代理を称賛し始めているぞ)」


「(フェーブル家って聞けば、誰もが知る嫌われ家族だったのにな)」


 ◇


 対策会議で方向性が決まった。

 現地でダンジョンから魔物が溢れたところを一網打尽にする。


 ダンジョンは定期的にスタンピードを起こす。

 対策をとらずに指をくわえているだけなんてない。

 ダンジョンが発見されれば、まずはその周囲を要塞化する。


 今回対象となるダンジョン、場所にちなんでリンドーダンジョンは3層の擁壁で囲まれている。

 ダンジョンを中心に半径50mの擁壁。

 半径200m、そして半径500mの擁壁。


 その50mの擁壁に全員が集合してダンジョンから飛び出した魔物を袋叩きにするというシンプルな作戦だ。


 スタンピードが起こるときはダンジョン内の魔素濃度が異常に高まる。

 人間がその中に入ると魔素中毒を起こす。

 その結果、気絶するだけですめばいい。

 中には死亡したり、パーサーカーとなって魔物と一緒に暴れ出す者もいるのだ。


「レナルド君。君のところの領軍は付近にも評判が伝わっている。非常に期待しておるぞ」


「は。領軍のよりすぐりの精鋭魔導師達です。必ずやお役にたってみせましょう」


 擁壁の上から中長距離レンジでタコ殴りする作戦だ。

 魔導師や弓部隊が中心となる。

 ただ、秘匿兵器はお披露目しない予定だ。

 手の内をさらけ出す必要はない。

 どうしようもない場合には繰り出さねばならんが。


 おそらくだが、父ちゃんズの攻撃であらかた討伐されるんじゃないか。

 うち漏らしは百人の領兵魔導師が個別に潰してくれるだろう。

 俺はかなり楽観的な見通しを持っていた。

 それは奢りとかじゃない。

 父ちゃんズたちと何度もシミュレーションを重ねた結果なんだ。


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