メイド長の憤慨と行く末・メイド達のおしゃべり
【メイド長の憤慨】
なんてこと! 落ちぶれたとは言え、由緒ある家出身の私を奴隷に落とすなんて! しかも、あのエロ豚が!
私は憤りが収まらなかった。
確かに、少しは館のお金を使いはした。
でも、それは正当な対価よ。
私はこの館を切り盛りしている。
私がいなければ、この館は機能しない。
そして、私は奥様に代わってお館様の面倒も見ている。
そんな私に正規のお給金以外のボーナスが支払われる。
当然のこと。
しかも!
メイドは私をこき使ってもいいって!
メイドは私が今まで懇切丁寧に指導したことも忘れ、無茶苦茶な振る舞いをしてくる。
恩を仇で返す。まさにその言葉通り!
確かに、私の指導が丁寧すぎて辞めていった娘もいる。
でも、ここは領政の中心地。
甘ったるい考えで勤めて欲しくないわ。
しかもよ!
奴隷は私の家族にまで及んだ。
二親等以内。
祖父母、父母、兄弟姉妹、夫、子供にまで及んだ。
横領の片棒を担いだとかで!
彼らはなんにも知らないのに!
え?
私が不相応な金をばら撒いていて、おかしく思わないなんてことはない?
ふざけるな!
「君さ、全く反省の色がないよね」
しばらくしてからあのエロ豚に呼ばれた。
そして宣告された。
私のポジションは下働きに格下げ。
メイドでさえない。
館で最も下の地位。
「殺さなければ何してもいいよ」
その日から過酷さが猛烈にアップした。
朝の五時に始まり、夜中の一時まで。
休む暇なしに働かされる。
その間に数々のいじめに会う。
「貴方のせいで私の友達が!」
「自殺した子もいるのよ!」
そんなこと、私の知ったことではない。
どうにかしてここから抜け出さなくては!
そして、とうとうその日がやってきた。
ここを抜け出せる日が!
「君さ、炭鉱へ行ってもらうから」
どういうこと?
炭鉱奴隷ってこと?
死んだほうがましだっていう?
私は由緒正しい家柄のお嬢様なのよ。
何、この扱いは!
【メイド達のおしゃべり】
「なんだか、領が凄い勢いで変わっていくわね」
「ほんと。私的には生活便利魔道具が館の随所に装備されたのが嬉しい!」
「寒い朝なんかに如実に実感するよね」
「うん。布団からすんなり出られるし、冷たい水で洗濯しなくてもいいし」
「それに、水荒れしててもすぐに回復薬で治療してもらえるし」
「食卓も大変化よね」
「前だとこっそり食べてた甘味。毎日堂々と食べられるようになった」
「そうよね。三時のおやつなんてのができて、メイドの私達も休憩できる」
「ほんとに、坊ちゃま、マジイケメン」
「やっぱり、私がお仕えしてきたお陰ね」
「私が育てたってやつ? よく言うわね。あなた、昔は坊ちゃまに警戒心むき出しだったでしょ」
「だよね。私たちが坊ちゃまを見直しても、1人だけ疑ってたもんね」
「えー、そんなこと絶対にない! 私は昔から坊ちゃまのことを信じていいたわ」
「はいはい。あなたの行く末はメイド長ね」
「絶対に違う!」
「メイド長もさ、下働きに落とされて殺さない以外何してもいいってことになって、私達散々恨みをはらせたわよね」
「うん。彼女のせいで不幸になった娘たちもこれで浮かばれるかしら」
「今じゃ、炭鉱奴隷に売り払われたものね」
「死ぬより辛い炭鉱奴隷。しかも、女でよ。いろいろ大変そうね」
「荒くれ者ばかりだし。まあ、控えめに行って地獄ね」
「こうやって見ると、坊ちゃまって優しいときは優しいけど、裏切りには容赦しないわね」
「そうよ。だから、あなた。昔の自分を偽っていると、そのうちメイド長みたいになるわよ」
「ちがーう! 私は偽っていない!」




