ドワーフ学校その他
【ドワーフ学校】
「では、ドワーフ学校についての詳細を。先にも述べたが、徒弟制度を変革したい、アップデートしたいってのが俺の発想の第一だ。徒弟制度のいいところも取り入れつつ、知識・経験の継承・共有を図っていきたい」
「いいぜ。俺も弟子時代はいろいろ理不尽な思いをしてきた。ありゃ、どうかと今でも思ってるからな」
「これから俺の構想を話していく。異論があれば、どんどん言ってくれ。まずな、弟子時代の期間が長すぎるってのがあるだろ?」
「まあな。最低でも五年はかかるな」
「だからな、まずは初級コースというのを設けたい。そこで二年間の基礎を学ぶ」
コースは以下の三つ。
魔導具スキル 初級
鍛冶スキル 初級
料理スキル 初級
定員は十人で研修期間は二年。
選考試験で受け入れが決まる。
一年目は基礎的な技術や知識を習得し、
二年目は実践訓練、技能検定の合格などが課せられる。
「講師は君たちや技術上位のものがおこなうことになる」
「「「わかったぜ」」」
「研修期間が終わったら、技能検定を行う。検定は研修期間中でもいい。検定基準はみんなで考えてくれ」
「なるほど。親方による恣意的な判断基準を変えると。あと、成長のばらつきも平準化できそうだな」
その後の話し合いで技能検定には
初級 中級 上級 特級検定
を設けることになった。
魔道具に関しては、検定審査委員長は俺。
俺と同等ならば上級、俺を超えれば特級とする。
鍛冶スキルはガリオンが検定審査委員長。
ガリオンを上級の基準とする。
特級に関してはドワーフ長老におこし頂く。
料理スキル
ゲレオンが検定審査委員長とする。
ゲレオンを上級の基準とする。
それぞれのコースで適宜審査委員を増員する。
【大量の磁器とガラス瓶】
「俺は薬師として毎日大量の回復薬を製造しているのは知ってのとおりだ」
B級回復薬(初級回復薬に相当)
現状は1日1立方mを製造可能。
1万本に相当する。
「となると、容器が圧倒的に不足しているんだ」
「なるほど。1日に1万本をどうさばくのかってわけか」
「ああ。最初はツボで薬を持ち運ぶ。問題は購入者にどう渡すかだ」
瓶はリサイクルとする。
初回は預り金百ギルで配布。
領民IDカードを発行してそこに購入登録をする。
使用したら瓶は回収。
その場で清浄魔法をかけて再利用する。
「なくしたりしたら?」
「預り金百ギル没収。さらに預り金百ギルで新しい瓶を貸与」
「転売するやつも出そうだな」
「そのためのIDカードさ。俺は領民には全員IDカードを配布する。そこに購入情報を登録しておかしな真似をするやつを防ぎたい」
「となると、そのIDカードも馬鹿にならん数を製造しなくちゃいかんな」
「ああ。すぐには間に合わん。新しい税法を領に発布し、その段階でカードを領民に配布するつもりだ。つまり、来年以降の話だな」
「なるほど。瓶もすぐには揃えられねえ。回復薬の話ともども、来年以降の話になるな」
「ただ、女神教会や冒険者ギルドではB級回復薬の販売を始めている。今までは容器持ち込みかそれともその場で飲んでもらっていた。しかし、信徒にせよ、冒険者にせよ、人数も限られている。だから、そこあたりはボチボチとIDカードに切り替えていきたい」
「次は容器の質の問題だ。今、みんなが普通に使っているのは陶器の容器だ。ところが、陶器は液体を吸収しやすい。それはいろいろと不都合な問題がある」
「なるほど。何か他の液体が混ざっていたりとかな」
「そうだ。そのために、俺は磁器とガラスの瓶を製造したい」
「ガラスはわかるが、磁器とは?」
「土の中にガラス成分とかが入っている粘土をより高温で焼き上げたものだ。これが見本だ」
「ほう。チンチンと固質な音がするな。随分と固そうだ」
「ああ。水分吸収も無視できる」
「実物があるということはその種の粘土を見つけたってことか」
「うむ。大荒野を捜索しまくって見つけた」
(捜索したのは黒猫達である)
「あんなだだっ広いところから探し当てるのか」
「あそこは案外いろんな鉱石が採れるぞ」
金銀鉱山もあるしな。
「問題は大量生産体制をとれるかだ。ガラス瓶にしても磁器にしても手作りだ。それではとても間に合わない」
「だな。領民六万人、現状で1日1万本の回復薬に対応する必要があるからな」
「ああ。そこで魔道具作りだ。魔道具担当のブルゾンを統括、サブとして俺、スキニー、瓶担当のデリオンとする。大量生産体制は領経営の要とも言える。頼んだぞ」
「おお、まかせろ。腕がなるぜ」
なお、魔道具には位置情報機能が組み込まれる。
流失・紛失を防ぐためだ。
そのための統括センターも設立する。
さらに、ブラックボックス化するため、秘匿機能もつく。
中身を暴こうとするとプログラムが消失。
あるいは自爆して情報流出を防ぐ。
犯罪行為はすぐに統括センターに転送。
キーパーが出動することになる。
「でもな、回復薬を大々的に販売するつもりなんだろ? 薬師ギルドはどうすんだよ」
「冒険者ギルドや女神教会なら目こぼしもされてるが、下手しなくても全面戦争だろ」
「ああ。もとより、そのつもりだ。薬師ギルドとは徹底交戦する。二年以内に領内のギルドは解体、吸収を目指すつもりだ」
「おお。大きく出たな。まあ、薬師ギルド長がヘタレっていう噂が出てるからな」
「ふふ。裏でな、俺達が活躍したんだ」
ちょっと自慢してしまった。
活躍したのは黒猫達だがな。
黒猫情報は簡単に教えられない。
「ほお。坊っちゃんたちがか。いつの間にそんな黒い行動をするように」
「いやいや、少しばかり忠告を与えただけさ。たいしたことじゃない」
大したことあるんだが。
「薬師に関しては力押しということか」
「うむ。そもそも、俺達の回復薬は圧倒的に競争力がある。早晩、うちの領の薬師は立ち行かなくなる」
「領民も大歓迎だしな」
「ああ。そこで薬師ギルドが横槍を入れようものなら、暴動が起こる。自分たちの命に関わることだからな」
なお、回復薬の増産のために薬師養成が必要だ。
だから、ドワーフ学校とは別に薬師学校が欲しい。
しかし、講師が俺だけなんだよな。
どうにかならんものか。
優秀な薬師なんて簡単に転がっているわけない。




