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俺の宣言 領政方針 フェーブル領概要

「じゃあ、会議を始めるか」


 館の会議室でみんなに集まってもらった。

 ガッキーズの二人、領軍トップである父ちゃんズ。


「この四人は俺の最も信頼する仲間だ。この先も基本、トップ会議となれば俺とこの四人になる」


「おお、坊っちゃん。第一回領主代理会議ってことだな」


「そうだ、ジャイニー。でな、俺はこの領の統治テーマを発表したい」


 俺が彼らに示したのは

 最重要テーマ

  食と安全の充実

 重要テーマ

  教育強化

  利権の打破

  

「食と安全はわかりますな。今まで坊っちゃんがこの一年ほど活動してきた方向ですな」


「うむ。この領から飢えをなくしたい。そしてできるならば量だけじゃなくて、質もな」


「お菓子とかを充実させるんですね」


「スキニー、それだけじゃないぞ。俺の頭には様々なレシピが渦巻いている。酒とかもな。すごいの作る予定だ」


「これは楽しみですな」


「で、安全は」


「安全保障とは端的には外敵からの防衛のことだな。ところでレポルト司令官。王族や貴族が一番頭を悩ませていることはなんだろう」


 レポルトとはクレール・レポルト。

 ジャイニーの父親だ。


「いろいろありますが、なんといっても借金ですな」


「なぜ借金がかさむ?」


「戦費ですな。兵士を育成あるいは雇用・徴用するには莫大な金が必要だ」


「そうだ。安全保障の一つとして外敵からの備えがある。だが、兵士というのは大変金がかかるものだ。しかも、常備軍となると金を使う一方になる」


「我が領軍も規模は百人ぐらいですな」


「まあ、それは父上が規格外の魔導師だったからできたことだが、それでもこの領の規模なら常備軍数百人というところだ」


 常備軍は人口比で一%というところが限界とされる。

 つまり、人口六万人程度の我が領では常備軍は六百人が限界ということだ。


 それ以上は農民とかの徴用で五~十%程度に膨れ上がる。

 それでも三千人から六千人。

 六千人が兵士になるという事態は、それこそ領存亡の危機の場合だ。



「だが、俺は諸君の知っている通り、資金力は無限にある」


「ああ、坊っちゃん。それこそチートだよな。鉱山で魔鋼だろうが金銀だろうが掘り放題だもんな」


「そうだな。俺のマジックバッグにはうなるような魔鋼・金銀が眠っている。俺はこれを使って領軍の量・質ともにパワーアップしていきたい」


「「「おおお!」」」


「質は大丈夫だ。武装魔道具の開発が順調だ。数さえ揃えれば、素人でもすぐに戦場に出られる」


「坊っちゃん、質は確かに大事だが、武器だけじゃなくて兵士の数も必要ですぞ」


「うむ。そこが頭の痛いところだ。我が領は広い。そこをあまねく防衛する必要がある」


「伯爵の睨みは非常に大きかったからですな、伯爵が隠遁した情報を知ったら、周囲の馬鹿どもが騒ぎかねんですな」


「そのとおり。きっと周囲は俺を舐めてかかるだろう。体制は早急に考えていこう」


 ◇


「次は教育強化だが」


「うちの領では教育が盛んになってきてるぜ?」


「ああ。フェーブル街ではな。だが、領には百以上の村がある。遍く教育を施したい」


「やはり、人材の問題ですな」


「全くそのとおり。フェーブル領は決して大きな領じゃない。それでも、人材が本当に枯渇している。あらゆる方面で人材が求められているんだ。これについては試案がある。のちほど検討してみよう」


「了解」



「でだな、最後の利権の打破」


「これはある意味、国防よりもやっかいそうですな」


「うむ。大きく言えば、村利権・ギルド利権・王族・貴族利権・教会利権がある」


「それを打ち崩すっていうのか、坊っちゃん、大変だぜ。特に教会はやっかいそうだ」


「そのとおりだ。しかし、領の発展を考えると、絶対に避けて通れない。すでにいろいろな利権団体を俺達は脅かしつつあるからな」


「波風が立っていないのは、魔道具ギルドと冒険者ギルドだけだろう。魔道具ギルドはドワーフつながりだし、冒険者ギルドは栄養剤でむしろ感謝されている」


「薬師ギルドはギルド長があれですから、消極的賛成みたいですけど」


 あれとは、ギルド長が女神様の悪口を言ったために、激怒した黒猫によって『不敬者』なる刻印を額に押された件をさす。


「うむ。とにかくだ。総論はこんなところだ。では、続いて各論に入っていこう……」


 激論はその日遅くまで続いた。



【フェーブル領概要】


「ジャイニー、今日は地味な勉強すっぞ。寝たらゲンコツな」


「父ちゃん、オレ、寝たことなんてねーぞ!」


「よしよし、そこ言葉覚えておけよ。じゃあ、フェーブル領の概要を話すな」


「うげ。つまんなさそー」『ボカッ』


「いてーな!」


「ああ、起きてたか。よし、フェーブル領は東西・南北、どれくらいの大きさか?」


「それぐらい知ってるぜ。東西は歩いて四時間、南北は七時間ぐらいだろ」


 (天の声: だいたい東京二三区程度の広さ。

  大阪平野の二分の一程度の面積)


「そうだな。それは大人が普通に歩いた場合な。東西二十km、南北三五km程度といったところだな。ただ、それには山岳地帯は除外されてるな。それと西側の森・草原地帯が含まれていない」


「ああ、森と草原も領の一部か。誰も住んじゃいないし、魔物狩りぐらいだもんな、行くとしたら」


「そうだ。そこを十五kmぐらい西に行くと大荒野地帯だな。魔素が少なすぎて生き物は生存不可能だったが、シスターがあそこを花畑に変えた」


「すげーよな。聖女様だよな」


「うむ。怖れ多い方だ。ところで、領内にはあまり山っぽい場所はないが、北部には見えてるな?」


「おお。北の山を越えるとフィルマン辺境伯領。俺達が遊びに行くところだな」


「馬鹿。辺境伯寄り子貴族子弟の懇親会だろ」


「へへ。東北にも山があるな。そこに閉山となった魔鋼鉱山がありその向こうに隣国とジェレ子爵領。エレーヌのとこだな」


「だな。坊ちゃんの今はなき元婚約者の実家だ」


「父ちゃん、ひでーな。勝手に殺すな」


「坊っちゃんとの婚約を解消するなんざ、とぼけた娘だからな。それくらいでいーんだよ。あ、よそでは言うなよ?」


「そんな失礼なこと言えねーよ」


「東南や南は隣領の境がわかりにくいが」


「全部見たわけじゃねーけど、川が多いんだろ?」


「うむ。概ね、その理解であってる。ところどころが曖昧で隣領と紛争地帯になってるがな。じゃあ、続いてカールマン王国についても」


「俺達の属する国の名前だな」


「ああ。ただ、よその国と違って王権はあんまり強くない。もともとは魔族の国の侵略に備えるために多くの領主が結束した国だからな」


「王様は仲裁者みたいな感じだって聞いたぜ」


「それもあながち間違ってない。それぞれの領主の権限が強いから、どうしても衝突しやすいからな」


「わかるぜ。あのファッキン子爵野郎とも代々魔鋼鉱山で争ってきたんだろ?」


「ああ。あれはファック野郎だからな。娘と婚約したときは耳を疑ったぜ。何か裏があるんじゃ、とか言われてたが、早々に婚約解消とはな」


「良かったじゃねーか。昔はあの女、かわいいと思ったんだが、昔のオレは目が曇ってたな」


「いや、それはみんなそう思ってるぞ。小さい頃は可愛くても成長するとブサイクになるってことがあるからな。多分、それじゃないか?」


「父ちゃん、ブサイクってほどじゃねーだろ」


「ちょっといいすぎか? まあ普通の庶民顔だけどな」


「ああ。貴族って感じの顔じゃねーな。養子だって話だけど」


「そうだな。では、フェーブル領に話を戻すぞ。フェーブル領と領都であるフェーブル街。人口は?」


「領は六万人ぐらい。街は一万人ぐらい?」


「正解。じゃあ、千人以上の人口のある村は?」


「三つあるな」


「よし。じゃあ、領の中に村は幾つある?」


「百十七。その他に女神教会領が一つ。真実教会領が十五あったが、真実教会領はいくつかが女神教会領に転向してるからな。今はちょととわからん」


「おお、詳しいじゃねーか。おまえにしては上出来だ」


「へへへ。伊達に女神教会に入り浸ってねーよ」


「有名だよな。かわいいがいるって」


「へへへ、照れちゃうぜ。レベルのクソ高いのが二人いるけどな、セリーヌってのがオレのイチオシ。スキニーは片割れのロザリー推しだな」


「ああ、シスター含めあの三人はちょっとこの辺じゃ見当たらないぐらいの美形だな。じゃあ、街の話。街は外壁で囲まれている。しかし、これを過信しちゃいけない理由は?」


「戦争になると魔法がばんばん飛び交うから、外壁は防御魔法がかかってないとすぐに壊されるし、そもそも魔法が外壁を飛び越えるからだな」


「うむ。それは常識だな。外壁は魔物とか不法滞在者対策にはいいんだが、結局、街は結界魔法だよりなんだよな。というか、外壁まで敵が及んだ段階でかなりマズイ」


「ああ。オレ達の生活拠点ごと破壊されるからな。基本は街の外で戦うだろ?」


「そのとおりだ。続いて村について少し。村の土地は誰のものだ?」


「教会領を除けば、領主様のものだな。それを村に貸し与えている。そして、村が村人に農地を貸し与えている」


「よしよし。村は特殊な地域でな」


 さらに父ちゃんの講義は続く。


 村の土地に個人所有のものはない。

 領主のものである。

 領主は村に土地を貸し与える。

 村は自治組織の性格が強い。

 これがなかなかやっかいなんだが。

 村は話し合いで個人ごとの耕作場所を決める。

 生産物は村の所有物になる。

 村はそこから領主に税を払う。

 村は個人ごとの収穫高に基づき個人に金を支払う。

 

 貸し与えた土地はランク付けがなされてある。

 領主はそれに基づき収穫高の評価をする。

 数年に一度、不公平感をなくすために総取っ替えをする村も多い。

 

 不満があれば村・領を出て未主の土地を開拓する人もいる。

 しかし、殆どのケースで失敗している。


 領全体の人口は六万人ぐらいか。

 この世界では人口を正確に把握していない。

 領主の仕事は主に税の取り立て、裁判、防衛となる。

 そのうち税の取り立ては村単位で行う。

 村ごとに毎年大まかな作地面積が調査され、それに基づいて村ごとの税が決まる。



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