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付近の農村から出稼ぎ2

【現場に到着】


 街に近づくと結界登録なるものをした。

 この街は結界で守られているんだと。

 外壁も見当たらないのだけんど、結界があるから不要なんだと。


 結界の中に入るとよく整理された農地。

 そしてその向こう側に立派な塔が見える。

 この塔、立派ってもんじゃない。

 かなり遠くから見えていたんだ。

 近くで見ると天に届くんじゃないか、というような高さだ。

 これが女神教会の本拠建物だという。



「この中にシスターがいらっしゃるのか」


 聖女様は他にも有名なことがある。

 えらく別嬪さんだそうだ。


 そう思っていたら、物凄い別嬪さんが現れた!

 天使のような二人の少女を引き連れて!


「みなさん、私が女神教会のシスターです。ようこそお越し頂きありがとうございます」


 ああ、これは天界の声だ。

 耳を癒やす涼やかな天上の声。

 確かにシスターは聖女様だ。

 ご尊顔は後光が眩しすぎてひと目見たときはクラクラした。

 それに周囲が清浄されたような気がする。


 横を見ると、村の人たちはボケーと口を開いている。

 見とれてるんだ。

 気持ちはよくわかる。

 オラもそうだからな。


【宿舎】


 さて、その日はオラ達の宿舎に案内されておしまいだ。

 街は実に清潔だった。

 普通は馬糞とか落ちているもんだが、全くない。


「清浄分解魔導具でそういうものはすぐに処理されるんですよ」


 はあ。

 清掃用の魔導具があるのは知っている。

 だけんど、魔石が高価だからお貴族様しか使わねえと聞いたんだけんど。



 矢印に誘導され、俺達は住居部分に入った。

 住居部分はさらに強固な壁と結界に囲まれている。


 街は地面が固化魔法で固められていた。

 建物もウォール魔法と固化魔法でできているのだろう。


「なあ。ちょっと凄すぎじゃないか?」


「ああ。さすが聖女様のお暮らしになる場所ということか。オラ、真実教会の本部はみたことないけんど、オラの知ってるどの教会よりも立派だ」



 自分の部屋というか四人部屋なんだが、これまたすごかった。

 生活魔導具のオンパレード。

 灯り、冷暖房、清掃、温冷水、トイレ、

 これらが全て魔導具だった。

 最初は使い方がわからない。

 係の子供が使い方を教えてくれた。

 もう緊張して汗だくだ。


 あと、強固な個人金庫とロッカーが割り当てられた。

 ロッカーを見ると、作業衣が二着ある。

 オラたちは普通服なんて一着しかもってない。

 農作業も寝るときも冬も夏もこれだけで過ごす。

 服は凄く高価なんだ。


 それが2着惜しげもなく与えられた。

 聞くところによると、冬用夏用があるという。

 汚れは魔道具でキレイになるという。

 破損したらすぐに交換してくれるという。



【風呂】


 風呂にも入ってみた。

 生まれて始めてだ。

 入り方がわかんね。

 だいたい、裸になるのが恥ずかしい。

 タオルは入口で貸してくれる。

 そのタオルで身体を隠して風呂に向かう。


 中は矢印通りに進めばいいみたいだ。

 なになに、まず清浄シャワーを浴びると。

 おお、これだけで綺麗になった気がするぞ。


 で、次は一列に温水魔導具が並んでいる場所か。

 そこで石鹸で身体を洗ってくれ?


 石鹸って。

 この固いやつか?

 オラはムクロジ石鹸しか知らんぞ。

 どうすればいいんだ?

 まず、お湯に浸して身体にこすりつける?

 こうか。

 それからタオルでこすり洗いをすると。


 おお、清浄シャワーを浴びたばかりだ。

 なのに、まだまだ汚れがあるようだ。

 すぐに桶が真っ黒になったぞ。


 で?

 桶のお湯が黒くならないようになったら終了?

 うーむ。

 何度やっても黒いんだが。



 ふう。

 五回めでようやくお湯が黒くなくなった。

 これでタオルを頭の上に乗せて入浴か。

 広い湯船だな。

 二十人は入れそうだ。

 俺の家と同じ位の広さでないか?


「う”う”う”」


 なんだか、図太い声が出てしまった。

 気持ちが良すぎるんだ。


 周りの皆も俺と同じ声をあげてるぞ。

 誰かが気持ち良すぎて歌を歌い始めた。

 オラも唱和した。


 ◇


 うう、しまった。

 あんまり気持ちが良すぎて長湯してしまった。

 めまいがする。

 と思ったら、係の人が回復薬を飲ましてくれた。

 すぐに治った。

 今日は二本めだ。

 手に入りにくいのにバンバン飲ませてくれるんだな。


 それにしても係の人、というか子供か。

 聞いてみると孤児院の子供だという。

 ああ、小さいのに働いて大変だな。

 まあ、村の子供も六歳ぐらいから働くけどな。



【晩飯】


 風呂が終わったら、ガウンに着替えて食堂だ。

 いいか、ガウンだぞ。

 お貴族様みたいじゃねえか。


 しかし、ガウンなどどうでもよかった。

 料理がうますぎる。


「フライドポテトとフルーツグラノラです」


 いや、そんなこと言われても。

 フライドポテトはじゃがいもを油で揚げたもの。

 フルグラはオーツ麦に甘味と油をかけて熱したものなんだと。

 そこに牛乳が掛けてある。


 うーむ。

 馬鈴薯もオーツ麦も貧乏人の食べる食材だ。

 それが油やら甘味やら牛乳やらの高級食材を使って高級料理にしたててある。

 これがちゃんとした食事とするならば、オラ達が村で食べていたものは家畜の餌だ。


「えーと、おかわりいいですか?」


「ええ、ご満足の行くまで」


 俺達はむさぼり食った。

 腹が痛くなってやっぱり回復薬のお世話になった。



【作業】


 翌日から作業だ。

 七時起床。

 七時半から朝食だ。

 なんと全員にお菓子が配られた。

 お菓子だぞ。

 食べたら、めちゃ美味い。

 これがお菓子か?

 脳天を突き抜けるような甘さだ。


 そして、食べると一発で目が覚める。

 どころか、すぐにでも動き回りたくなる。

 

 そして、朝食がまた抜群に美味い。

 フワフワのパンだ。

 これは間違いない、小麦パンだ。

 そこにたっぷりバターと果実ジャム。

 そして、牛乳。

 見たことのないフルーツの盛り合わせ。



 朝食がおわり外に出ると、

 みんながタムロしていた。


「おい、どうだ、ここの生活」


「ああ、言いたいことはわかるぜ。この村、快適すぎる。というか先進的すぎる」


 だが、驚くのはこれだけではなかった。



 土木作業、要するにドカチンだから重労働を想像する。

 

 でも、作業は魔道具が主体。

 通常、魔道具には魔力が必要。

 ところが、この魔道具は魔素充填方式だという。

 オラは魔導具なんざチャッカマンぐらいしか見たことがない。 


 だけんど、魔素充填方式というものが画期的なものであることはわかる。

 使用者の魔力を使うか、魔石を取り付けるか。

 方式は二つしかないはずだ。

 それが、この街では動力源が空中に漂っている魔素だという。

 ということは永久的にエネルギーの心配が不要ということ?

 聞けば、部屋の生活便利魔導具も魔素充填方式だという。


 ああ。

 秘密保持魔法契約を結んだ理由がよーくわかった。

 オラのような田舎者でも、とんでもない価値があることは理解できる。

 お貴族様、王族、真実教会、目の色を変えて秘密を探りに来るだろう。


 オラは想像しただけで魔導具を持つ手が震える。


 秘密の重大さに反して、作業は楽だった。

 オラたちのやっていることは道路作り。

 作業は魔導具がやってくれる。

 オラたちは監督の言われた通りに魔導具を地面にあてていくだけ。


 一応、

  地面の掘り起こし

  石の粉砕

  表面をならして固化する

 この三つは魔導具が違う。

 つまり三人一組で道路を作っていくわけだ。


 流石に全自動というわけにはいかない。

 最初に作った道路と慣れてからの道路とでは見栄えが違うのがわかる。


 とにかく、作業は楽。

 暮らしは最高を越えている。



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