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冒険者ギルドの女性職員

「ねえねえ、今日さ窓口にすっごい可愛い男の子来てたでしょ?」


「あー、三人組の子の一人ね? びっくりしたわ。さすがに若すぎるけど、天使みたいに可愛かったわ」


「どこの子かしら。髪と目は茶色でいかにも庶民なんだけど、雰囲気は庶民って感じじゃないわよね」


「そうなのよ。身なりも質がいいし。でも、貴族としたらちょっと立ち居振る舞いが粗いかな?」


「金持ちのドラ息子ポジションかしら」


「わかんないけど、それよりも妙に落ち着いてなかった?」


「そうよ。ギルマスが応対しているのをチラチラ見てたんだけど、冒険者登録後、まるでベテランの冒険者みたいな態度でゴロンと魔石を取り出して鑑定してくれ、って。その魔石があんまり見たことのないもので、ギルマスが鑑定士のところに聞きにいったのよね」


「そうね、凶悪な魔物だと出現したりすると危険の兆候につながったりするもんね」


「最悪、スタンピードとかあるもんね」


「驚かさないでよ。で、大丈夫だったの?」


「結局はさ、たまたま森の表層に現れた魔物ということみたいね」


「なんて魔物?」


「スケルトン・ナイト。C級の魔物」


「へえ、確かに珍しいわね。ていうか、名前は知ってるけど、討伐記録ってあるのかしら」


「ここ十年ではこのギルドではないわよ」


「そうなの? 彼、冒険者の初心者じゃないの?」


「同行者が優秀だったみたいよ」


「あなた達、無駄話をしない。ちょっと可愛い男の子が来るとすぐこれなんだから」


「あっ、チーフ。へへへ」


「一応ね、ギルマスから言われたから情報を共有しておくわよ」


「ギルマスから?」


「あの子は領主様の長男よ」


「え? あの悪たれエロガキの?」


「噂と違うじゃない。確か、ブロンドヘアで目は青色じゃなかった? いかにも貴族色の」


「ギルマスが言うには、目と髪は魔法で変えてるんじゃないかって」


「変身魔法? 確かに使える人いるし、街にはそれで生計たててる人もいるけど」


「詳しくはわからないけど、領主様の息子ってわかると色々差し障りがあるでしょ。それを嫌ったんでしょ。名前も偽名登録だしね。シールドって」


「ああ、本名は確かレナルドだったはず。でも、醜い傲慢エロ豚ってあだ名もついてたよね?」


「そこは私にはわからないわ」


「変身してまでわざわざ冒険者ギルドに来る意味は?」


「そこよ。彼ら、ビッグなおみやげを持ってきたのよ」


「おみやげ?」


「彼らオリジナルの回復薬を売りたいんだって」


「は? オリジナルの回復薬? 薬師レシピじゃないわけね? 彼は薬師スキルがあるってこと?」


「知らないけど。卸値百ギル、販売価格が二百ギルだって」


「二百ギル! 安っ!」


「しかも、薬師ギルドのより効能が高いらしいわ」


「マジ? 薬師ギルドと戦争ね。というか、私、いくつか欲しいわ」


「一応ね、栄養剤ってことにするみたいよ」


「あー、そんなの建前じゃない」


「まあ、すぐにバレるわね。でもさ、少なくとも冒険者はどっちを選ぶかすぐわかるよね」


「どっちにせよ、薬師ギルドの回復薬は冒険者の高ランクか金持ちしか買えなかったんだから」


「でも、冒険者の高ランクだって薬師ギルドのは買わなくなるわよ」


「確かに。効能が本当だとしたらだけど」


「ギルマスの話によると、彼の古傷が一発で治ったんだって」


「古傷って、右腕の傷跡のこと? あれが治った?」


「後で見てご覧よ。傷跡が綺麗サッパリなくなっているから」


「うわっ、薬師ギルドの薬だと中級回復薬でも治らないかもっていわれてたのに。こりゃ、争奪戦になりそうね」


「一応は一人一日に一本で販売総数は一日百本。譲渡は家族間のみ、転売禁止っていうルールがあるみたい」


「転売禁止って。どう判断するのよ」


「わかんないけど。契約魔法を結ぶみたいね」


「へえ、本格的ね。それ、私達も買えるかしら?」


「毎日はムリだけど、買えるみたいよ」


「ああ、良かった。で、なんで冒険者ギルドに持ち込んだの?」


「薬師ギルドのこともあるけど、他にも教会とそれから領主様が怖いみたい。内緒で扱いたいみたいよ」


「領主様(笑)息子なのに」


「領主様、強欲で有名だもんね。バレたら取り上げられそうだよね」


「まあ、間違いないでしょ。彼はね、領民を助けたいから、って言ってるわよ。冒険者に専任講師をつけることも提案したそうよ。冒険者の死亡率を下げるために」


「マジ? めちゃいい子じゃん。評判と全然違う」


「そこなんだけどさ、心を入れ替えたって噂が流れてるわ」


「そうなの? そういえば、彼らの噂って昔はよく聞いてたけど、今はなくなったわよね。スライムに負けたって噂は流れてきて一時笑いものになったけど」


「今はかなりの腕みたいよ。FクラスじゃなくてEクラスから始めるみたいだけど、ギルマス曰く、Cクラス相当の実力があるみたいよ」


「え? ホント? Cクラスって普通の冒険者じゃなかなかなれないわよ。スライムに負けたのって半年ぐらい前じゃなかったっけ。男子三日会わざれば、ってこと?」


「だとすると、彼が痩せた理由も辻褄が会うわよ。単純に厳しい訓練をしているってこと」


「なるほど。それにしても」


「彼ら、いくつ?」


「全員十二歳かそこらよ。ギルマスの想像だけど、スケルトン・ナイトも彼ら自身で討伐したんじゃないかって」


「マジ?」


「そう言えば、婚約破棄したって話もあるよね」


「ああ、スライムに負けたちょっと前ね」


「あー、お貴族様じゃなければ将来性抜群のイケメンになるのに」


「いや、貴方、十歳近く年上じゃないの」


「愛があれば、年の差なんて」


「はいはい。妄想してなさい」



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