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促成栽培スキルと酒造スキル

 こうして土地を確保した。

 では、次は実際にリンゴを栽培するわけだが。


 リンゴは山間部に生えている。

 平地でも栽培できるよう品種改良できないか。

 次に収穫量も多いように改良できないか。


 そう考えていくとどんどんと欲がでてきた。

 ついでに、甘い品種も作っておこうか。

 こちらはいわゆる果物用途として。



「リンゴに限らず、この手のは挿し木でふやしていけるはずだ」


「挿し木って?」


「茎や葉、根などの植物体の一部とかをな、地面に挿していくやり方さ。まあ、まかせろ」


 ゲルトンさんは山間部の野生リンゴ群生地で何本かの枝を採取した。


 採取する枝もなんでもいいわけじゃないようだ。



「じゃあ、挿し木を始めるか」


 俺達は女神教会の開墾したばかりの土地に戻った。


「それからどうするんだ?」


「まずはね、促成栽培を試してみようかと。あと並行して品種改良も」


「促成栽培と品種改良? 坊っちゃん、そんなスキルもあるのか?」


「ああ、栽培関連の魔法・スキルがいくつか発現してね」


「本当に坊っちゃんって何者なんだ? ちょっといろいろと突き破ってるな」


「ははは」 



 もちろん、促成栽培も品種改良もやったことない。

 成功するのかどうかは未知数だ。

 ただ、植物の成長過程は普通に知っている。

 それを早送りさせるような感覚で魔法を発動させた。


 すると、木が眩しく発光。

 目に見えるような形で枝から葉が出てきた。


「おおお! 本当に促成栽培じゃねえか。あっという間に成長していくぜ!」


 次の日に見てみると木が伸びている。


「これなら、苗の植え替えができるな」


 生きのいい木を選択し、どんどんと植え変えていく。

 そして、俺はこのタイミングで品種改良魔法を。

 ちょっとまごついていると、魔法ガイダンス。

 俺の望むイメージをもって魔法を唱えるんだと。


 リンゴのイメージはもちろん持っている。

  平野部に順応する

  多くの個数が実る

  一部は甘味たくさん

 というイメージを枝に投影した。


 水と肥料を与えたうえで、再度促進栽培スキル。

 品種改良魔法とこれを毎日繰り返したところ、

 二週間もすると花が咲いた。



「促進栽培スキル、パねえな。成長が早すぎる」


 リンゴの木って、リンゴの収穫まで数年かかる。

 木になる果実はそれが普通だと思う。

 それが二週間で花が咲くところまで来た。

 積極的に受粉させて、しばらくすると実が結実し始めた。


「しかも、品種改良魔法も上手くいっているようだ」


 リンゴの実がたわわに実っている。



 ところが、ここまでうまく行ったのに、

 ある日、見に行ってみると大量の虫と鳥が。


「くそっ」


 と思ったが後の祭り。

 さすがは異世界。

 害虫の食欲がありすぎる。

 大量にあったリンゴの実がすっかりかじり取られていた。


「品種改良に虫予防を追加しなくちゃ」


 虫がよりつかないよう品種改良した。

 それと結界がかかっているのに鳥が侵入する。

 鳥対策は木全体にネットをかけた。



 そこまで行くと、今度は葉に黒い点々が。

 そして黄色くなって枯れ落ちてしまった。


「今度は病気かよ」


 またもや、品種改良だ。

 病気に強い品種。



 何度か病気や虫とかの対策を施した。

 なんとか三ヶ月後にリンゴを収穫できた。


 リンゴの種類は本来の酸っぱい山リンゴ。

 それと、甘さを追求したスィートアップル。


「おお、大量のリンゴがとれたの!」


 大だるに三杯ほどの山リンゴと

 大だる一杯弱の甘リンゴを収穫した。


「これでシードルは行ける?」


「問題ないじゃろ。果実酒はどれでも基本は同じじゃ。果実で種酵母を作って増量して果実ジュースとともに発酵させる。基本はこれじゃ」


 俺も酒造を教わりつつ、シードル作りはゲレオン主導で進んだ。



「どうかの?」


 仕込んで二週間ほどで発酵が完了した。

 そのあと、数ヶ月ほど熟成。


 発酵スキルも熟成スキルも芽生えたが、使用せず。

 自然にまかせて酒作りをすすめることにした。

 もう少し経験を重ねる必要を感じたのだ。

 それかららスキルを使用したほうがいいように思ったわけだ。


 ◇


「おお、これがシードルか」


 ゲレオンさんたちと試飲会だ。

 シードルはまさしくリンゴジュースの色をしていた。

 澄んだ淡い黄金色というべきか?

 

「シードルはの、リンゴの品種などでピンク色とかもっと濃い黄金色とかになるのじゃ」


 ふむふむ。

 香りは。


「おお、リンゴの香りだ」


 なかなか爽やかな香りがする。


「では、一口……うむ。リンゴ風味たっぷりの果実感、爽やかな甘味と酸味、仄かな苦み。軽い炭酸味。かなり美味いぞ。アルコール度数は(前世のビールより低そうだ)三%とかそんな感じかな」


「いい出来じゃろ」


「うん。酒っていうより、ジュースって感じのほうが強いな」


「その辺は造り方次第じゃの」


「元となったリンゴ、あの酸っぱさはアップルパイにしてみたいね」


「いけると思うぞ」


「あとさ、この甘リンゴ。甘味が凄いね」


 前世でも甘いリンゴがあったが、タメをはるな。


「儂も驚いたぞ。こんなに甘いリンゴというか果物は初めてじゃ。この甘味はもう蜜って感じじゃろ」


「酸味もわずかに残っているな」


「うむ。いいアクセントになっておる」


「独特の芳香も素晴らしい。果汁もたっぷりでシャキシャキ感もある」


「でな、これが甘リンゴで作ったシードルじゃ」


「すっごいね、高級なリンゴジュースって感じ。特に芳香が素晴らしい」


「ああ。高級ワインのように香りが重層的だ。儂の好みでは酸味がもう少しあるとな。ちょっとキレがないが、舌触りはかなりのもんじゃろ」


「ああ。これは美味しすぎる」


「シードルも甘リンゴも大成功じゃの」


「ああ、リンゴ園、バレないようにしなくちゃね。一応、結界と柵で囲ったけど、もっと囲いを厳重にしなくちゃ」



「ただね、いわゆるF1品種にできるんだよ」


「なんじゃそりゃ」


「このリンゴの種からは質の悪いリンゴしか生まれないってこと。魔法の設定でオンオフができるんだ」


「そりゃ、便利じゃの。勝手に広まることはないってことか」


「だね。挿し木で増やしているから、そこは気をつける必要があるけど」



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