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エレーヌ 魔鋼鉱山

 先日の伯爵邸ではヘマをしたわ。

 なぜだかわからないけど、物がなかった。

 中級回復魔法魔導具、中級清浄魔法魔導具、

 中級マジックバッグの三つの聖女魔導具セット。

 それと天界言語巻物中級編。


 パニクったから、私はちょっとヘマをした。

 私って、昔から天然なとこがある。

 ドジっ子ね。てへっ。


 問題ない。

 十分カバーできる。

 最終的には教会本部の地下図書室にある

 聖女最終セットを奪取できれば私の勝利。


 でも、その前に取っておきたいものがある。

 魔鋼鉱山にある、聖女パーティセット。

 魔杖、魔剣、魔導グローブ、魔盾。


 特に魔杖。

 これがあると私の魔導師レベルがすぐに上がる。

 神聖魔法が発現するために是非とも欲しい。

 私には神聖魔法が眠っているのだ。


 訓練を重ねれば発現する。

 でも、長期に渡り地味な訓練を続ける必要がある。

 そんな努力は私には似合わない。

 もっと華麗にスマートに。

 それこそが世界一の美少女である私にふさわしい。


 ◇


 私はようやく伯爵邸での精神的ダメージから回復した。

 そして、再びディオンを連れて魔鋼鉱山を訪れた。


 あ、子爵の魔鋼鉱山侵攻は大失敗したわ。

 だから、私は隠密に行動する必要がある。


 時間は夜。

 だって、昼だと鉱夫がいるでしょ?

 


「え? なんだって? 鉱山は閉山してる?」


 わざわざ夜に行ったかいがなかった。

 なんと魔鋼鉱山は廃坑になっていた。

 なんで? 聞いてないわ。


「おい、エレーヌ。ちょっとやばいぞ。廃坑になったってことは、魔鋼がとれなくなって魔物が出現し始めたってことだ」


 廃坑ルートはゲームでやったことがある。

 鉱山が段々と魔鋼が取れにくくなる。

 それに反比例する形で魔物が出てくるのよね。


 でもどうしよう。

 私は魔物にはなんの力もない。


「エレーヌ。心配することはないさ。僕が誰だと思ってるんだ。勇者だぞ」


 勇者候補なんですけど。

 そう思ったけど、それは心に留めて。

 ディオンは自分が勇者であることに全くの疑いをもっていない。


 勇者候補は王国に何人もいる。

 ディオンはそのうちの一人なのだ。

 今後、厳しい審査をくぐり抜ける必要がある。


 大丈夫かしら。

 最近、あんまり訓練とかしてないみたいだけど。


 ◇


「はぁはぁ」


 出現する魔物を討伐しながら(ディオンが)

 ようやく隠し部屋の前にきた。


 ゲームでは、伯爵邸同様、坑道はゲームをクリアするごとにルートが変化する。

 だから事前調査が必要。

 でも、今回は一気に隠し部屋にきちゃった。


 ていうか、偶然なんだけど。

 ここの魔物って、幽霊系が多い。

 打撃は効かない。

 だから、特に火魔法に頼ることになる。

 ゴースト系の弱点だから。


 ディオンは火魔法得意。

 でも、数が多すぎる。

 高価な魔力回復薬をグビグビ飲みながら坑道を進む。

 その結果。道に迷った。



「ディオン、しっかりしてよ!」


「いや、エレーヌ。僕の頭にはちゃんと坑道が刻み込まれている。大丈夫さ」


 私は見逃さなかった。

 ディオンの目が泳いだのを。

 私はものすごく焦った。

 でも、どうしようもない。


 と思っていたら、偶然隠し部屋を発見したんだ。

 流石、私。

 この世界の主人公だからね。

 幸運値が天元突破してるはず。

 ディオンって本当に役立たず。



「ディオン、ここにはボスがいるはずだから気をつけてね」


「おし、まかせろ! ちょっと回復薬を飲んで、少し休憩してから突入……」


「あれ? 扉が開いている……あれ? 宝箱の蓋も開いている……」


 扉の中は薄暗かったけど、私は夜目がいい。

 中を見渡すとすぐに宝箱を発見した。

 蓋が開いている。

 それの意味することは。


 めちゃ嫌な予感がした。

 すでに宝物は盗られた後?


 中に入る。

 ボスは出現しない。

 宝箱の側による。

 中を覗き込む必要はない。

 中はすぐに見える。

 空っぽな中身が。


「ええええ!? 魔杖が盗られた!」


 私は大パニックに陥った。


「エレーヌ、静かに! 魔物が寄ってくるぞ!」


『ガオ』


 ディオンの声とともに、何か黒くてでかいのが

 部屋の中に入ってきた!


「ディオン! 腐った死体よ!」


 鼻のもげるニオイが漂ってくる。

 しかも、一体ではない。

 三体。

 こいつらは動作は遅いけど、

 やたら体力がある。

 それと、毒攻撃がやっかいだ。


「クソッタレ! ファイアウォール!」


 ディオンはすぐに火魔法結界を貼った。

 

「ファイアストーム!」


 それからファイアストームによる範囲攻撃。


「どうだ! あ? ゴホゴホ」


「ディオン、火魔法連続して使っちゃダメ! ああ、息苦しい!」


 どうやら一体はその攻撃で消滅したようだ。

 しかし、燃え上がった炎から黒炎が立ち込める。

 部屋の酸素が薄くなってきた。



「エレーヌ、奴らはひるんでいる。今のうちに部屋の外へ!」


 言われるまでもない。

 ここにいたら魔物にやられる前に窒息する。


「痛い!」


 部屋から出ようとした瞬間、

 私のおしりに激痛が走った!


「エレーヌ、動くな!」


 ディオンが剣を振りかぶったかと思うと

 私の背後に振り下ろした。


「エレーヌ、こっちだ!」


 ディオンは私を抱きかかえると

 一目散に逃げ出した。

 ルートを覚えているというのは嘘じゃなかった。



「はぁはぁ、うう、お尻が痛い」


「エレーヌ、腐った死体に噛みつかれたんだ」


「ええ? じゃあ、この痛みは……」


「そうだ、負傷と毒による痛みだ」


 なんてこと。

 伯爵邸騒ぎのあと、またもや噛みつかれた。

 しかも今回もお尻!

 エロガキの呪いでもかかっているの?

 乙女の大事な部分に怪我させるなんて!


「ちょっと待ってろ。回復薬と消毒薬をふりかけるから」


 ディオンは私に向かってお尻を出せ、なんてセクハラをぬかした。

 もちろん、頬をひっぱたいてやったわ。


 渋々の顔をして、ディオンは服の上から薬をふりかけた。


「いてて。まだ痛いわよ?」


「ああ、やっぱり効果が中途半端だ」


 頬に手形を付けたディオンがそう答える。

 ホント、役に立たないわね。


「もうないの?」


「坑道で散々使ったからな。残念だけど、自領に戻るまで我慢してくくれ」


「なによ! 使えない人!」


 私は痛いお尻を我慢して自領に戻った。 

 もちろん、ディオンに抱えてもらって。

 彼は使えない勇者候補だけど、体力だけは半端ないのよね。



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