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魔鋼鉱山

【鍛冶スキル】


 魔道具スキル。

 魔道具用に作成されたものに魔法陣を記述すること。


 では、魔道具用に作成されたものとは?

 素材は魔鋼である。

 魔鋼鉱山でとれた魔鋼石を製錬して魔鋼を取り出す。

 その魔鋼を加工して様々な形状にする。

 製錬と加工、それが鍛冶師の仕事であり、鍛冶スキルと呼ばれるものだ。


 鍛冶スキルはまだ俺には発現していない。

 だから、魔道具を作るには鍛冶師の助けがいる。


 ところで、魔道具に使用される魔鋼。

 魔鋼鉱山から採取される。

 その鉱山がこの伯爵領にある。


 レナルドのガマ母が贅沢できるのも、この鉱山のおかげである。


 ただ、この鉱山は割と隣領や隣国のそばにある。

 だから、昔から争いが絶えない。


 それを跳ね返してきたのが、歴代の伯爵。

 現伯爵も強大な魔力の持ち主である。

 何しろ、一人で千人の軍隊に相当する、とまで言われているのだ。


 隣領は対抗できるだけの経済的軍事的余裕がない。

 隣国は仮に千人単位の軍隊を国境近くに集めれば、それはすぐに王国の感知することとなり、王国全体の反発を招く。

 ということで、この鉱山は平和を保っている。


 ◇


「うぇっ、暗くて見えねえ」


「坊ちゃま、坑道は入り組んでるでしょうが、本当に大丈夫ですか?」


 俺達ガッキーズは魔鋼鉱山に来ていた。

 今は深夜。

 鉱山を覗き込むと漆黒の闇だ。


 鉱山に来たのは、魔鋼を掘削するためだ。

 この鉱山、伯爵家の重要な収入となっている。

 しかし、その収入は母親の贅沢に消費されているのだ。


 俺はそんなことを使用人の噂話で知った。

 そんな無駄遣いをするぐらいなら、俺に魔鋼を渡せ。と強く願っていた所、俺にはありがたいスキルが発現した。


 鉱脈レーダー。採掘スキル。金属回収スキル。


「問題ない。今、鉱脈レーダーを稼働させたところだ。俺の頭には坑道が表示されている」


 スキルレベルが低いせいか、坑道全部というわけにはいかない。

 二十m程度の距離しか表示されないが、今のところは我慢するしかない。


「一応な、曲がり角には目印をつけておいてくれよな」


「スキニー、頼んだぜ」


「了解!」


 俺達は各自ファイアを灯しながら慎重に進む。


 坑道の入口付近にはほとんど魔鋼がない。

 魔鋼と言っても、魔鋼の塊がごっそりと顔を覗かせるというわけではない。


 鉱石に薄く分布しているのだ。

 だから通常は、大量に魔鋼鉱石を掘削採取し、そこから魔鋼を抽出することになる。


 当初は俺もその手順を繰り返していた。

 マジックバッグの容量が小さく、鉱石を掘削→バッグ満杯→魔鋼抽出して、スキニーのマジックバッグに放り込んでいた。


 だが、金属回収スキルのレベルが上がり、鉱石を掘削しなくても坑道の表層から魔鋼を直接抽出することができるようになった。


 現状では坑道から深さ1m程度までに含まれる魔鋼を抽出できている。レベルが上がれば、更に深い層に含有する魔鋼を抽出できるようになるだろう。



 そうやってどんどんと魔鋼を抽出していくと


「あれ? こんなところに空間があるぞ?」


「空間?」


 俺は坑道から外れた場所に部屋のようなものがあるのに気づいた。


「ふたりとも、ちょっと坑道を掘削してみる」


 俺は掘削スキルにて坑道に横穴を掘り出した。

 

「坊っちゃん、これ扉か?」


 ちょっとした空間が現れ、そこに扉があった。


「だな。中に入るか」


 鍵はかかっていなかった。

 俺達は扉を開け中に入ると


『カチャ』


 扉が自動的に締まり、鍵のかかった音がした。


『ウガ!』


 同時に部屋に響く獣らしき唸り声。


「う、畜生! 閉じ込められた! 油断してたぜ!フォーメーションを取れ!」


 俺はとっさに盾をかまえ、その獣らしきものに挑発をぶつけた。


『ドガッ!』


 獣がぶつかってきた。

 物凄い衝撃だ。

 俺はずるりと後退りした。

 だが、かろうじて獣の突進を受け止めた。


「坊っちゃま、魔物です!」


 スキニーがその隙にナイフ攻撃をする。

 

『ガチン!』『ウギャ!』


 おお、効いているぞ。


「これ、表面が固いですよ。気を付けて」


「まかせろ!」


 ジャイニーが得意の火魔法攻撃をしかけるが


「馬鹿!狭い空間で火魔法を使うな!」


「クソッ、オレの見せ場だってーのに」


 ジャイニーは剣に火を纏わせ獣に切りかかった。

 火魔法は見栄えがいい。

 ジャイニー自身は土魔法が得意なんだが、やたら火魔法を使いたがる。


 魔物の注意が二人に行きそうになる。

 俺はさらに挑発スキルで獣の行動をコントロールする。


『ウガアア!』


 風魔法風刃をまとったスキニーの短剣が獣の首をとらえた。


『ブシュ!』


 首を半分切断したところで


『ズシャ!』


 ジャイニーの締めの袈裟懸けが獣を両断した。

 魔物は黒い霧となって消滅した。

 同時に扉から『カチャッ』という音がした。

 扉が開いたようだ。

 後には拳大の魔石が転がっていた。



「「「ハアハア」」」


「とっさの対応としちゃまずまずだったな」


「父ちゃんズの教え通りに動けたぜ」


「ジャイニー、狭い空間で火魔法使うときは慎重に、ってさんざん言われてただろ?」


「へへ、ちょっと慌てたぜ」


「これ、なんていう魔物だったんですかね」


「うーん、何だったんだろ?」


「魔石があるから、これを鑑定してもらえばわかるんじゃね?」


「だな。そのうち冒険者ギルドにでも寄ってみるか」



 俺達は部屋を見渡した。

 案外広い。

 学校の普通の教室の倍はありそうだ。

 高さも三m以上はある。


「お、宝箱じゃないか!」


「なんだよ、まるでダンジョンだな」


 俺達はダンジョンを攻略したことはない。

 ただ、ダンジョンでは時々宝箱があるとは聞いていた。


「ヘヘヘッ、開けていいか?」


「待て、ジャイニー。罠に気をつけろよ」


「そうですよ、父ちゃんたちに言われているでしょ」


「ううう、わかったよ。まずは、扉が開くか確認して……よし、退却動線は確保したぞ。じゃあ、横から剣でつついてみるわ」


 慎重に宝箱をツンツンしてみる。


『プシュッ!』


「うわっ、毒ガス?」


「みんな、退却しろ!」



「オレ、ちょっとガスを吸っちまったぜ。頭がクラクラする」


「俺も」「ボクも」


 すぐに部屋の外に出た。

 だが、三人とも少しガスを吸って頭を抱えている。


「……あれ? 俺、毒耐性が発現したぞ。頭の痛みが引いてきた」


「あ、そういえば僕も徐々に不快感がなくなってる感じ」


「ホントだ。オレもだ」


 三人とも毒耐性がついたようだ。

 女神の加護のお陰で耐性がついたようだ。

 そう体内アナウンスが解説してくれた。



「女神様々だぜ」「感謝」


「毒耐性がついたんだ、ちょっと扉を開けてみるぞ」


「坊っちゃん、いいぜ」「坊ちゃま、ラジャー」


 俺はそっと扉を開けた。

 風が部屋の中から漏れてくる。

 変なニオイがするが、俺にはなんともない。


「おまえら、どうだ?」


「問題ないぜ」「毒耐性効いてますね」


「よし、中に入るぞ」


 中に入ると、宝箱から光が漏れてくる。

 側によると、中に何かが入っているのが見えた。


「よっしゃー、いよいよお宝だぜ!」


 中に入っていたのは、

 大剣、ナックル、杖、盾だった。


「おい、これ、魔導具みたいだぞ」


 俺は盾を手に取ると、『これは魔盾です』

 という体内アナウンスが流れてきた。


「おまえらも手にとってみなよ」


「ホントだ」「確かに」


 ジャイニーは大剣、スキニーはナックルを取った。


「だけどな、この魔杖。多分、俺では使いこなせんぞ」


「ああ、俺も魔杖のレベルが高すぎてフィットしないってアナウンスが流れている」


「魔杖はちょっと保留ですかね」


「うん、俺達のレベルが上がるか、それとも誰かふさわしい人物が現れるまでな」


 ◇


 俺達はその後も暇を見つけては坑道に潜った。

 金属回収スキルもレベルがあがって、坑道から二m程度の深さまでの魔鋼を抽出することができるようになった。


「おい、見ろよ。魔物が湧いてるぞ」


 突然、俺達の行方を遮ったのはゴーストだった。


「ゴースト? 幽霊系魔物ですか。普通の魔物とは違う意味で怖いですね」


「ゴーストとかは火魔法が有効だったよな」


「ですね。いっちょやってみますか?」


「オレにやらせろよ。最近、火魔法がいい感じになってきたんだ。いいか?」


「空間も広いし、窒息の危険はないだろう。いいぜ」


「じゃあ、ファイアフレーム!」


『ブオ!』『ギャア……』


「お見事」「一発で霧散しましたね」


「魔物が出たってことは?」


「この鉱山、いよいよ魔鋼がなくなってきたってことじゃないですか?」


 鉱石中の魔石は魔素を吸い取る性質がある。

 普通の洞穴とか鉱山は魔素が溜まってダンジョン化しやすいといわれているが、魔鋼鉱山はダンジョン化しないらしい。


 しかし、魔鋼密度が薄くなれば、坑道のような閉鎖空間はすぐにダンジョン化する。つまり、魔物が湧いてくるのだ。


「結構、魔鋼を採取したよな?」


「結構どころじゃないですね。僕のマジックバッグ、パンパンに近いですよ」


「大きさどれぐらいだっけ」


「マジックバッグのレベルが成長中ではっきりとはわかりませんけど、四mの立方体ぐらいですか」


 ふむ、八畳の部屋を一回り大きくした感じか。


「坊っちゃん、一生分はあるんじゃねえか?」


「うーん、大量であることは間違いないか」


「どうしますか、帰りますか?」


「だな。まだあるんだろうけど、効率悪いもんな。もう少し掘削系のスキルが向上したら再度訪れるか」


 

 俺達は陽気に歌いながら帰途についた。

 だが、その後が大騒動だった。


 鉱山から魔物が出た、つまりダンジョン化した。

 ということで魔鋼鉱山の入山がストップした。

 伯爵領経済に大打撃というか、レナルドの母親的に大打撃なんだろう。


 魔物は幽霊系のゴーストとかが多い。

 なので鉱員が気味悪がって誰も働きたがらない。

 だから、事実上の廃坑になってしまった。


 実は、その奥には新たな魔鋼があるのだが。

 それは俺達が鉱山再アタックしたときに判明した。



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