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スライム戦再チャレンジ 冒険者レベルD級相当に

「よーし、おまえら、今日から実戦前提の訓練にはいるぞ」


「「「おおお!」」」


「おまえら、先日スライム相手に恥さらしたよな」


「父ちゃん、それ言わないでくれよ」


「一生もんの恥だっての。学校でう◯ちもらしたのと同じ程度のな。覚悟しとけよ。死ぬまでからかわれるぞ」


「えええ、ショック」


「だいたい、なんの用意もしないでスライムの群生地につっこむ馬鹿がどこにいるんだよ。スライム自体は弱小だが、群れをなせばなんだって対処は何倍も難しくなる」


 いや、反論ございません。


「まず、戦闘に入るに当たって最も重要なものはなんだ?」


「そりゃ、剣とか魔法とかの攻撃力だろ」


「だから、おまえらは素人だっつーの。まずは、索敵だろ」


「あああ、そりゃそうか」


「索敵スキルには二つある。気配察知と魔法探知だ。どう違う?」


「同じじゃねえのかよ」


「全く違う。気配察知は、五感のうち視力・聴力・嗅覚・触覚を活用するスキルだ。おまえら、獣の五感が人間より非常に優れていること知ってるよな?」


 例えば犬。

 犬の嗅覚は、人間の約百万倍から一億倍。

 ただし、距離は前後約一〜三m程度。


 コウモリ。

 四十万Hzの超音波を聞くことができるらしい。

 人間は子供で約二万Hz、お年寄りだと一万Hz以下。


 鷹

 一km以上離れた上空から小動物を見つけられる。

 ダチョウ

 視力は二十を超えている。

 四十m先のアリの動きも見えると言われている


「そのへんにいる犬猫鳥程度でも五感は非常に優れているわけだ。それが魔物なら? 通常の動物よりもずっと五感が強化されている」


 おおお。



「それから厄介なのが、触覚だ。空気の動きとかを読み取る力。さらに、殺気を読んでくるのもデフォだ」


「殺気って、都市伝説じゃないのかよ」


「おまえら、さんざん訓練しておいて殺気が読めないのか?」


「父ちゃんがおっかないのはわかるぜ」


「うーん、ジャイニー、ちょっと立ってみな」


「いいぜ? 何する……うげっ」


「わかったか? 今、儂はお前を殺す勢いで殺気を出した」


「父ちゃん、わかったぜ……漏れそうだからやめてくれ」


「他の二人にも味あわせてやる」


「「ふぉぉぉ!」」


 ホントだ。ちびるぐらいおっかいないぞ。


「慣れてきたらな、殺気の揺らぎを判断しな。それで相手の攻撃タイミングをはかる稽古をするぞ」


 殺気を捉える訓練は奥が深かった。

 そのうち、目をつぶって殺気を捕捉しろなどという無茶振りをし始めた。


 でも、父ちゃんズは目を瞑っていても攻撃を避けることができる!


「いいか、魔物は特に殺気に敏感だ。これらを察知する訓練を始めるぞ。そうすれば、気配察知スキルが生じる。あとはレベル上げだ」


 ◇


「次は魔力探査だ。その名の通り、相手の魔力を探査する。注意が必要なのは、基本的にこちらも魔力を放出して相手の魔力を捕捉するってことだ」


「なんで注意が必要なんだ?」


「相手に気取られるだろ。魔力探査は相手に自分の場所を教えるようなもんだ」


「使えねーじゃん」


「これもな、レベルが上がると近距離ならば自然と魔力を感じ取れることができるようになる。するとな、閉所なんかだと目を瞑っていても周囲が見えるようになるんだ」


 この世界にも暗視メガネ魔導具があって、そのメガネごしに覗いている感じらしい。


「それとな、遠距離探査ならば、魔力探査は気配察知よりも数段優れている。だから、使い分けだな」

 

 ◇


「よし、じゃあ気配察知も魔力探査もできるようになったとしよう。次は?」


「なんだよ。相手を捕捉できるんだから攻撃しかねーだろ」


「ジャイニー、おめえは本当に脳筋だな。戦場で真っ先に死ぬタイプだな」


「チェッ、じゃあなんだよ」


「気配隠蔽スキルを身につけること。つまり、相手に見つからないように接近して先に相手を捕捉すること」


「「「おお、確かに!」」」


「これには魔法スキルで気配を消すということもある」


 前世地球の戦闘機の攻撃スタイルだよな。

 相手をレーダーで捕捉、ステルスで忍び寄る。


「が、それ以前に相手の死角から近づくということも大切だ」


「死角か」


「例えば、風下から近づくとかは基本だな」


「なるほど、ニオイで察知されないようにか」


「そうだ。相手の五感を甘く見ちゃいかん」



「でな、次は攻撃といきたいところだが、その前に防御だ」


「だりーな」


「土魔法で岩ドームを作って迎撃するって手もある。だがな、岩ドームを作るには時間がかかる。即応性がないんだ。しかも相手のレベルが高い場合はドームを破壊されて一方的に攻撃を受ける」


「タコ殴りされるな」


「うむ。結界魔法で身体を囲うという手もある。しかし、土魔法以上に難易度が高い」


「じゃあ、どうするんだよ」


「現場では風の向き、太陽の方向とかを気にしつつ有利なポジションを取り、木の上とか高い岩場とかからロングレンジで狙撃する。狙撃後は離脱か、あらかじめ地面に穴でも掘って隠れているか」


「おお、安全そうだぜ」


「だがな、そんなうまい状況はなかなかないぞ。獣にせよ魔物にせよ、移動速度が半端ない。時速百km以上の奴がバンバンいるんだ。百m離れていても、数秒で駆け抜けてくる。数十mの距離なら、瞬きする瞬間に目の前だ」


「ええ? スライムなんてノッそいぞ?」


「だから、スライムは初心者向けって言われてるんだろうが。あのな、スライムの次っていうと一角ウサギが対象となるだろ、普通」


「「「ああ」」」


「一角ウサギは短距離走に特化した魔獣だ。森で見かけたら次の瞬間には眼の前に突進してきやがる」


「「「まじかよ」」」


「でな、額の一本ヅノ。その尖った先端でブッスリと刺してくるんだ。当たりどころが悪けりゃ即死さ」


「「「えええ」」」


「どうにかなんねーのか」


「そこでだ。タンクというポジションが重要になる」


「タンク?」


「防御の得意なメンバーを入れるんだ。防御の仕方は二つ。防御力の高い盾で攻撃を防ぐ。もしくはひらりひらりと相手の攻撃をかわす」


「だけど、相手がタンクを攻撃するとは限らんだろ?」


「タンクが重要なのはな、相手の攻撃をこちらに向かわせるスキルを持ってることだ。挑発スキルとかだな。魔物とか魔獣とかは脳筋が多くてな。相手を煽ると即座に頭に血がのぼりやがる。そしてタンクを目の敵にするってわけさ」


「なるほど。挑発して攻撃をコントロールするわけか」


「そうだ」


「どうやってそんなスキルを手に入れるんだよ」


「今まで説明した気配察知、魔力探知、気配隠蔽、挑発とかはな、戦闘する数をこなしていけば、普通に発現していくもんだ」


 こうして、父ちゃんズの講義は続く。


 ◇


「スライムめ! 容赦しねーぞ!」


 俺達は講義後にスライム相手に訓練をはじめた。


 その前に装備だ。

 まず、盾。

 動きやすいように革製の防具。

 金属製の防具は初心者向けではない。

 火魔法や氷魔法にとことん弱いからだ。

 木製のお手製の槍と弓。

 (金属製だと、スライムの体液で溶けてしまう)


 これで散々スライムを狩っていると、スライムは俺達を見ると逃げるようになった。



「ああ、レベルが上がってきた証拠だな。特にスキニー。このところの実力の向上は目覚ましいな。ちゃんと、立ち回りができている。では、三人とも。そろそろ、一角ウサギにチャレンジするか?」


 この世界の人はこうしてレベルを判断するらしい。

 ステータスオープンしても人の強さは数値化されていない。

 スキルにレベルも表示されない。


 だけど、スライムが逃げるようになったということは、明らかにその人の実力がスライム以上になったということなのだ。

 魔物は実力差に敏感なのである。



 そして、その頃には俺達には気配察知、魔力探査、

 気配隠蔽、挑発スキルが発現し始めた。

 

 対象も、スライム、一角ウサギときて、グレイウルフあたりまで狩れるまでになってきた。

 冒険者ギルドだとD級認定されるレベルだ。



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