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父ちゃんズと剣の練習2

「坊っちゃん、とんでもない魔力量じゃないですか」


 ああ、父ちゃんズにはすぐバレた。


「え、わかる?」


「わかるも何も、魔力が体から溢れて体が発光してますぜ!」


 俺が思っているよりも魔力増進スキルは目立つみたいだ。


 俺達は気にしていなかったが、ある程度魔力のあるものには魔力が見えるらしい。


「これさ、内緒にしてもらいたいんだが。本当の秘匿事項なんだ」


「おお、秘密なら漏らしはしませんぞ」


「ほら、このまえ辺境伯邸に行っただろ? あのとき、図書室で偶然本を見つけてさ。その内容で瞑想ってのを実践してたら、こんなに」


「坊っちゃんが本を読む? あんなに本嫌いだったのに」


「はは……言っただろ。俺達は反省したって」


「それにしても、あまりに急な変化で」


「うーん、神の啓示があった、っていうと信じられる?」


「いや、信じますぞ。神の啓示が辺境伯邸でおきたっていうことですか」


「絶対、内緒にしてほしいんだけど、夢の中に出てきたんだよ、女神様が」


 俺もある程度、父ちゃんズに真実を話してみることにした。


「おお。女神様ですか。でも、教会の教えではあまり女神様は見かけませんな」


「あ、真実教会かな? 違うよ。女神教会の女神様だよ」


「女神教会? ああ、領都にそういう教会があるとは聞いていますが」


「え? 知ってるの?」


「詳しくは。地味な教会で確かスラム地区で住民の救済にあたっていると聞いています」


「俺、そこに行きたいんだけど」


「無茶言っちゃいけませんぜ。スラム地区なんざ、まっとうなものがしかも貴族の嫡男である坊っちゃんが行くようなところではありませんぞ」


「でもさ、女神様が言うんだよ。女神教会をよろしくって」


「え? 女神様が……」


「頼むよ」


「うーん、わかりました。まず、私どもで現地調査します。その上で、私どもの護衛と一緒に向かいましょうや」


「ああ! 頼んだよ!」



「じゃあ、坊っちゃん。儂らにもその瞑想というやつを教えてもらえませんかな」


「喜んで! ただね、この瞑想ってやつまで教えるとなると秘密保持の契約魔法を結んでもらいたいんだ。君たちを信用してないわけじゃない。相当信用してるんだけど、秘密度が高いからね」


「おお、そりゃそうですな」


 ◇


 一週間後。


「坊っちゃん! この瞑想っての、すごいですな! 儂らそんなに魔力が強くありませんが、魔力が体の奥底から湧き上がるような感じがしますぞ!」


 父ちゃんズは、物理的な武力は非常に強い。

 しかし、魔力が見劣りがしていた。

 もともとは王立騎士団の団員であったが、

 魔力が劣るため出世競争ではやや冷遇されていた。


「ですな。実際、魔力が増強しております。火魔法を剣にまとわせてですな……フン! ほら、この通り」


 これはスキニーの父ちゃんだ。

 演習場には人に見立てたカカシが立っている。

 魔法で強化されており、簡単には破壊できない。

 しかし、そのカカシを見事一閃で両断した。


「おお(パチパチパチ)」


「今なら、王立騎士団の団長も狙えますかな、ガハハ!」


 父ちゃんズは二人共魔力が驚くほど増強していた。

 それはそばにいる俺にもすぐに感じ取れた。


「坊っちゃん、どうですかな、領軍の兵士たちにも瞑想をやらせたら」


 一応、兵士たちもこちら側だったんだよな。

 父ちゃんズがフェーブル伯爵に最後まで忠誠を忘れなかったから、領軍も制御されてたんだ。

 

 イヤイヤやっている人も多かったろう。

 だからこそ、この魔領増進訓練でがっちり彼らの気持ちをつかみたい。


「ああ、ぜひやらせてやって! でもさ、この瞑想で魔力を増進させるには俺がついてる必要があるんだよ。俺がいなけりゃ、ただの精神リラックスの方法ってだけだからね。それと、秘密保持の契約魔法を取り交わしてもらいたい」


 瞑想って言っても魔力増進スキルだからな。

 

「了解しましたぞ!」



 実際に領軍兵士に瞑想の時間が取り入れられた。

 兵士たちとしても願ったりだ。

 厳しい鍛錬の時間の一部を瞑想にあてるのだから。

 楽して魔力が増進する。


 それに、即効で魔力が向上するのを実感する。

 当然、兵士たちは大盛りあがりだ。


 なお、兵士になるには剣士スキルが必須。

 あと、なんらかの魔法が使えるのは当然となる。


 そもそも、魔法は殆どのものが使える。

 でも、魔力を向上させるのは難しい。

 ちゃんとした指導者と厳しい訓練を必要とする。

 それなのに、瞑想であっけなく魔力が向上する。

 嬉しくないはずがない。


 ◇


 瞑想の時間はただ瞑想を組んでるだけじゃない。

 父ちゃんズの説教タイムを組み込んだんだ。


 説教といっても、お叱りタイムじゃない。

 お坊さんの説法とか講話みたいなものだ。

 昔なら道徳とか修養とか言われた時間だ。


 父ちゃんズは王立騎士団ではそこそこのポジションにいた。

 だから、部下への演説に慣れている。

 年齢はアラフォーでそこそこ年を食ってる。

 内容も深みがある。


 この世界の平均寿命は三十歳ぐらいだという。

 四十代だと老人の仲間入りといっていい。

 そもそも、十五歳で成人。

 十二歳ぐらいで結婚して子どもを産む人もいる。

 四十歳で孫がいるっていうのは普通のことなんだ。



 父ちゃんズの説教には説得力がある。

 これを瞑想の時間に行うと心に染み渡ってくる。


 だいたい、父ちゃんズは騎士道精神の鑑。

 謹厳実直の人だからね。

 俺たちにも自省を促し、謙虚な気分になれる。

 実際、普段でも礼儀正しくなったと言われた。

 俺の場合は中身が入れ替わったからだけど。


 他にも、精神的なタフさが身についた。

 俺なんかだと、瞑想中に精神異常耐性が発現した。

 睡眠、混乱、麻痺攻撃なんかは効きにくい。

 

 ジャイニーたち、兵士たちにもそれなりの耐性が備わったんじゃないかな。

 ジャイニーなんか煽りに凄く弱かった。

 今は落ち着きが出てきた。


 他にも説教で重視したのは他人に自慢しないってこと。

 自分の手の内をみせないってことだな。

 これ、戦いでは重要だよね。

 俺達が急速に力を身につけ始めていることを隠す意味合いもある。

 不自然な思惑をもたらさないように。



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