最終回
さて、俺達はめでたく20歳を迎えた。
本日は3組の合同結婚式がある。
俺とブランシェ
ジャイニーとセリーヌ
スキニーとロザリー
の3組だ。
結婚式は女神教会の大聖堂で執り行われることとなった。
完成したばかりの高さ100mもの大聖堂である。
領や関係する他領から大勢の人々が集まり、祝福の声が響き渡る。
結婚式の最中、突如として天空が開け、まばゆい光が降り注いだ。
女神様からの祝福の光だった。
女神様は3組の結婚を直接祝福されただけでなく、それぞれのカップルに特別な祝福を与えられた。
俺とブランシェには「永遠の絆の祝福」が。
互いの心が永遠に結ばれ、どんな困難も共に乗り越えていける力を授かった。
ジャイニーとセリーヌには「慈愛の祝福」が。
二人の愛が周囲の人々にも良い影響を与え、幸せを広げていく力を得た。
スキニーとロザリーには「敬愛の祝福」が。
相手を思いやり、新たな人生を歩み始める力を授かった。
結婚式の後、盛大な祝宴が開かれた。
フェーブル領の住民たちも大勢参加し、領主である俺たちの結婚を心から祝福してくれた。
黒猫たちも祝宴に参加し、それぞれの得意分野で祝宴を盛り上げた。
マルコシアスも、もはや完全に更生を遂げ、祝宴の警備責任者として活躍した。
シスターは相変わらずポンコツながら、3組の結婚式の司祭を務め上げた。
時々噛みながらも、なんとか無事に式を終えることができた。
こうして、新たな時代の幕開けとともに、それぞれが新しい人生を歩み始めた。
女神様の祝福のもと、幸せな未来が広がっていく。
俺の火炙りはなかった。
火炙りの刑に処せられたのはエレーヌだった。
しかし、エレーヌは半分悪魔に蝕まれた結果なのか、火炙りの炎が全く効果を示さなかった。
彼女の体は炎に包まれても、一切の苦痛も傷も負わなかったのだ。
そこで、マルコシアスと同じ方法を使った。
より強力なリジェネをかけ続けたのだ。
生命力を常に回復させることで、魂の浄化を進めていく方法である。
マルコシアスはこれで2年間の地獄を味わった。
エレーヌは3年間かかった。
その間、彼女は常に生命力を回復され続け、魂の中の悪魔の部分が少しずつ浄化されていった。
中級悪魔以上に醜い魂を持っていたということだ。
それだけ浄化に時間がかかったのは、彼女の魂が想像以上に深く汚染されていたからだろう。
魂が完全に浄化してからは、女神様が流石に憐れんで日本に戻してくれたらしい。
そこで、普通のOL生活を送っているという。
異世界の記憶はさっぱり消去された。
都内の商社で働きながら、平凡だが充実した日々を過ごしているとのことだ。
俺は魔王にもならなかった。
実はディオン、勇者候補が魔王を目指したらしい。彼はプライドだけは高く、無謀なチャレンジをしようとしたのだ。
しかし、あの軟弱な実力ではなれるはずがない。
彼の戦闘能力は勇者候補としても格段に低く、魔王になるには程遠かった。
実際、やつは魔族領に入り込んだ瞬間に魔族に討伐されたらしい。
魔族の警備隊に発見され、あっという間に命を落としたという。
そして、魔族の魔法により魔物として生まれ変わったという。
下級の魔物に。
具体的にはゴブリンの一種として転生し、今も魔族領の片隅でひっそりと暮らしているらしい。
シスターは出会ったときからなんだか霞を食べてるような感じだった。
実体が薄く、まるで幻のような存在感だった。
なんと女神様の姪であるという。
あまりのポンコツぶりに地上での修行を命じられたのだ。
失敗続きで周囲を困らせていたため、実地での経験を積むように言い渡されたのである。
女神教会を王国に広めた業績をもって、天界に戻っても良かったのだが、シスターは地上に滞在することを選択した。
人間たちと過ごす日々に愛着を持ったからだという。
セリーヌとロザリーはシスターの眷属であり、半ば天界の存在でもあったが、結婚を機に地上の存在となった。
二人とも天界の力を捨てて完全な人間として生きることを選んだのだ。
レナルドの両親は完全に呪いから開放された。
しかし、呪われたことを深く悔い、全国を懺悔の旅でまわっている。
戻ってきたら、俺は領主代理をやめて元フェーブル領を両親に返し、俺は女神教会街を発展させていくつもりだ。
カールマン王国は正式に第2王子が次期王となった。
第1王子の失脚後、王国会議で満場一致で決定された。
今回の一連の流れだが、元は天空の管理者同士の争いを発端とする。
女神に嫉妬した他の女神が仕掛けた騒動だった。
その女神は長年、現女神の地位を妬んでいたのだ。
女神教会の惨状をみかねた女神様が俺を転生させることになる。
だが、敵となった女神はあらかじめ転生候補者を予想していた。
その転生候補者を数名にしぼり、俺を含めた全員を不幸に陥れた。
前世での不幸な出来事は、全てこの女神の仕組んだものだったのだ。
そして、不幸にも俺が転生者に選ばれたのだ。
この敵対する女神は異次元の世界に影響を及ぼすほどのスキルを持っていたわけだ。
無論、格式は非常に高い。
にも関わらず、このような惨状を引き起こした。
なぜって?
半分は女神様への妬みだが、半分は面白いからなんだと。
敵対女神は人間を玩具のように扱い、その苦しみを見て楽しんでいたのだ。
主神により、この女神は地獄に叩き落とされた。
神としてあるまじき行為により、永遠の責め苦を受けることとなったのである。
気の遠くなるほどの責め苦をうけたあげく、来世はミジンコかなにかに転生することが決定している。
…………………………
これをもってお話を終わらせていただきます。
長い間、誠に有難うございました。
次作
NNN派遣組合メモ~ 虹の向こうの天界より派遣されてきました
6月1日から連載予定です
お暇がありましたら、ぜひともお読みください