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父ちゃんズと剣の練習

 ジャイニーとスキニー、ガッキーズの父親。

 通称、父ちゃんズ。

 彼らは忠誠心が強い

 先代伯爵に伯爵家の騎士として雇われた。

 そして、そのまま伯爵家に残っている


 内心では現状の伯爵家に批判的である。

 だが、最後まで伯爵家につくした。

 これはレナルドの処刑前の記憶から。


 騎士道を具現化する男たちなのだ。

 この世界は、俺、俺の両親を始め、クソが多い。

 貴族も庶民も自分のことしか考えちゃいない。

 殺伐としているのだ。


 その中で父ちゃんズはこの世界の清涼剤だろう。

 一揆は俺達の醜さを発端とする。

 その一揆で父ちゃんズも命を落とす。

 彼らはそんなことで命を落としてはならない。



 父ちゃんズは伯爵領領軍の指揮官だ。

 もっとも、常備軍は数十人しかいない。

 大抵の領でも多少人数が増える程度だ。

 何しろ、常備軍には金がかかる。

 たとえ金持ち領であっても

 通常の領軍は貧相なもんだ。


 いざというときには領民を徴用する。

 領軍はそのための指揮官みたいなもんだ。


 多くの領では領民に対して懐柔策をとる。

 領民が一揆を起こして死兵でこられたら持たない。


 ところが、伯爵領は違う。

 あんな醜く太った伯爵は実は魔法の実力者だ。

 国内でも有数の。


 強大な実力を背景に、伯爵は実力を過信した。

 そこに伯爵の腐敗が重なる。

 イコール過酷な統治ができあがったわけだ。


 少々の一揆程度なら簡単に蹴散らせるからね。

 軍隊が攻めてきても拮抗できる実力の持ち主なんだ。


 だからこそ、火炙りのときの一揆は半端なかった。

 伯爵を生け捕りにしたのだから。



 もう一つ、伯爵が強気になる理由。

 領には魔鋼鉱山がある。

 魔鋼は魔道具の重要な素材だ。

 これにより、伯爵領は莫大な利益を上げていた。


 逆に領民の税を軽くするなり、福祉とかインフラとかに金を使えばと思うが、何しろ、今の伯爵はケチ中のケチ。

 他人のために金を使うなどとは思いもしないのだ。

 むしろ、いかに税を搾り取るか。

 それのみが領政での伯爵の関心事なのである。



 さて、父ちゃんズは一時、俺達の剣の先生だった。

 俺が癇癪をおこしたため、指導は中止となったが。


 かつては魔法の訓練も座学も家庭教師がいた。

 俺が癇癪をおこして教師を追い出してしまう。

 もう、何人の先生がやってきたことか。

 だから、今では先生のなり手がいない。



「なに、剣の指導を再開してほしいと?」


「ええ。以前は癇癪起こしてしまって見苦しいとこを見せてしまったが、今回は真面目にやろうと思っている。あ、君たちの息子も一緒にな」


「坊っちゃん、どういう風の吹き回しで」


「遠慮はいらん。実は俺達には剣士のスキルが芽生えているんだ。ビシビシ鍛えてほしい」


「ほう。いつのまに剣士のスキルが。しかも息子たちにも? じゃあ、遠慮はいらんですな。でも、いいんですか? かなり、厳しいですよ」


「問題ない。それと、合わせて修養もな。俺達は生まれ変わる必要がある」


「ほう」


「俺達は気づいたんだ。今までの俺達はクソだったてな。恥ずかしくてたまらん。だから、精神修養も合わせて行って、立派な剣士に仕立ててほしい」


「なんと、坊っちゃん、それほどまでに。感激しましたぞ。ワシの子どもも含めていつの間にか成長したのですな。わかりました。ビシビシいきますぞ」


「望むところだ」



 父ちゃんズの教えは半端なかった。

 朝の六時から始まるんだ。

 遅刻しそうもんなら、体罰が待っている。

 朝食前に一時間ぶっ通しで素振り。


 この素振りがキツイ。

 練習刀を使うけど、一kgはあるんじゃないか。

 子供用の刀なのに。

 

 刃が薄くてしっかり振らないと手首を痛める。

 ちゃんと振れたときは「ヒュッ」と

 風を切る音がする。

 でも、俺達はなかなかその音が出ない。

 

 単なる素振りじゃなくて、動きを入れたりもする。

 前後左右にうごきつつ。

 あるいは跳躍しながら。

 速度も速く。


 これを一時間ぶっ通しでやるんだ。

 足腰もへとへとになるけど、手もボロボロになる。

 回復薬をかけながら続けるんだけど。

 

 でも、完全に治してくれない。

 剣に向いた手を作る、とかで。

 毎日、涙目だ。


 朝食が終わったら座学。

 昼食後に再び修行。

 今度は実戦形式。


 模擬刀とはいえ、まともに当たれば凄く痛い。

 下手すると死ぬ。こちらも必死だ。

 それが一時間。

 

 最後は一時間素振りして修行時間は終了。

 終わった頃には体中がボロボロだ。



「坊っちゃん、オレだめだ……」


「僕もです……」


「……ちょっと、まずったか?」


 初日は正直後悔したよ。訓練することに。



 そのあと俺達三人は瞑想を組む。

 筋肉を休ませると称して。

 瞑想タイムは要するに魔力増進タイムだ。

 俺の魔力増進スキル大活躍時間である。


 魔力増進スキルには様々な段階がある。


 まず、体全体が温かくなること。


 次は魔力を体の隅々にまで行き渡らせること。

 それこそ、毛細血管レベルにまで。

 隅々まで魔力を張り巡らせるようになるのが目標だ。


 次に脱力だ。

 体中から余分な力が抜ける。

 段々と周囲に溶け込む自分を感じ始める。


 そして、このスキルの最終段階、大地との同化。

 この段階に至ると、体が浮遊する感覚になる。

 そして、周囲の大気と完全に一体化する。

 これが大地との同化だ。


 こうなると体内の魔素を自由にコントロールできる。

 大気中の魔素を取り込むこともできる。

 一言でいえば、魔力が天元突破するのだ。


 俺達はそのレベルを目指している。



「……おい、ジャイニー。いびきかくなよ」


「はっ。い、いびきなんかかくわけねえだろ。寝てないっつーの」


 まあ、そういうやつもいる。



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