王立高等学院 緊急職員会議
「皆さん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。では緊急職員会議を開きます」
「どうしたんですか。緊急などと」
「はい。議題は来年度入学生のクラス編成についてです」
「学院では席次順にクラスが振り分けられるのですよね。なんの問題が?」
「ええ。重大な問題があります。実は座学・実技ともに満点の生徒が十名おります」
「ほう。今年は豊作ですな」
「内訳をいいましょう。そのうち、貴族階級は三人だけです。残りは孤児院出身者が六人。残りの一人はなんと獣人です」
「「「は?」」」
「ちなみに、全てフェーブル領出身者です」
「なんと。不正の予感しかありませんな」
「座学ならば、カンニングがあったかもしれません」
「入試にはカンニング監視魔道具がありますでしょ? 反応はしなかったのですか?」
「反応はありませんでした。動作は正常、壊れていたわけではありません。全ての魔道具がしっかりと動作していました」
「実技のほうはどうですか?」
「みなさん。試験の的をご存知ですよね。あれは不正をおこなえるような代物ではありません。しかもですよ、着弾は全てど真ん中。さらに驚くべきことに、うち4人は的を完全に破壊してしまいました」
「「「え?」」」
「的を破壊した? 受験生で? ありえんでしょ」
「当学院の長い歴史の中で初めての事例になりますな」
「しかも、4人もですか。前代未聞です」
「的の品質が落ちていたのではないですか?」
「いえ、入念に確認済みです。問題ありません」
「うーむ。あの的は初心者向けのものです。初級魔法はもちろんのこと、中級魔法程度では傷一つつきません」
「その4名は上級魔法を放ったということですか?」
「そういうことになります。すでに、王国魔法騎士団の上位者レベルの実力を持っているということです」
「私どもの学院で、的を破壊できる強度を持つ魔法を放てる職員・生徒は何人いますかな?」
「流石に魔法担当の職員は全員その程度の力は持っています。しかし、生徒はゼロでしょうな。15歳という年齢では通常ありえません」
「的を破壊した・しないはともかく、フェーブル領出身者は規定により実技は満点となります。つまり、1位が十名いるという異常事態なのです」
「それでは、A組の半分がフェーブル領出身者で占められるということですか」
「しかも、その中に獣人が一人、孤児院出身者が六名もいるのです」
「さらに付け加えますと、十一位が王家の次男殿下です」
「「「ううむ……」」」
「やむを得ませんな。彼らを分散させるしかないでしょう」
「分散という案も分かりますが、だからといって、E組には配置できませんぞ。あまりにも実力差がありすぎます」
「的を破壊した四名のA組配置は決定でしょうな。あまりにも実力が明確すぎます」
「では、残りの六名はB組とC組に振り分けるということでしょうか」
「問題は決闘システムがあることです。あれを使われると、上位が全てフェーブル領出身者で占められることになりそうですな」
「ううむ。まったく頭が痛い問題ですな」
「そうですね。実力主義を掲げる当学院としては難しい決断ですな」
「ええ。ただし、フェーブル領の生徒たちには特別な注意を払う必要があるでしょう」
「そうですな。彼らの動向を注視し、何かあれば即座に対応できるよう準備しておきましょう」
「では、結論として。的を破壊した四名をA組に、残りの六名を実力に応じてB組とC組に振り分け、彼らの様子を慎重に観察していくということでよろしいでしょうか」
「異議なし」
「では、そのように決定いたします。これにて緊急職員会議を終了いたします」