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王立高等学院入試

 王立高等学院は王都郊外にある。

 キャンパスは広大だ。

 縦横5km程度はある。

 その周囲を高さ五mほどの外壁が取り囲む。

 森も学院の中にあって、

 時々魔物が湧いたりすることもあるそうだ。

 ただ、スライムとかその程度だ。


 正門は外壁の南にある。

 正門というよりも城門のような立派さだ。


 左右に高さ十mほどの塔を備える。

 塔は白亜の石材で築かれ、青銅の屋根が輝いている。

 塔の壁面には学院の紋章が刻まれ、

 塔の一階部分は警備員の詰め所となっている。

 常時十名ほどの警備員が交代で勤務している。


 両側の塔の間には、幅約八メートルの大きな門がある。

 馬車が二台並んでも余裕で通れるほどの広さだ。

 普段は分厚い鉄の扉で固く閉ざされている。

 出入りは横の小門で行うことが多い。

 が、入学式の本日は大きく開け放たれている。


 正門をくぐると、正面に幅二十m程度の石畳の道が真っ直ぐに伸びている。

 約五百m先には白亜の正面校舎が威風堂々と建っている。

 その建物をめがけて続々と受験生が詰めかけている。

 庶民の子供たちは質素な服装で、緊張した面持ちで歩いている者も多い。


 馬車も続々と到着している。

 馬車の利用は上級貴族にのみ許されている。

 公爵、辺境伯、伯爵の家柄の者たちだ。

 四頭立ての白馬が引く豪奢な馬車、黒馬による重厚な馬車など、それぞれの家柄を象徴するかのような馬車ばかりだ。

 馬車の車体には家紋が刻まれ、御者は正装に身を包んでいる。


 もうね、気合入りまくり。

 それだけ、一族の期待がこめられているってわけ。


 豪華な馬車から優雅に降り立つ上級貴族の子女は、高価な生地で仕立てられた制服に身を包み、召使いに付き添われながら悠然と歩を進めている。

 馬車の周りには、荷物を運ぶ召使いたちの姿も見える。


 道の両側には樫の木やブナの木などの広葉樹が十m間隔でずらりと植えられ、春の日差しを受けて新芽が芽吹き始めていた。


 広大なキャンパスの東側には鬱蒼とした森林が広がり、西側には澄み切った青い湖が静かに佇み、その湖畔には学生たちの憩いの場となる東屋が設けられている。

 北側の敷地は主に実技訓練場として使用され、魔法の実践的な練習ができるよう、特殊な結界で保護されている。

 これらの自然環境は、単なる景観としてだけでなく、実践的な魔法教育の場としても活用されている。


 正面校舎は三階建ての荘厳な建物で、白亜の石材で建てられている。

 高さは二十メートルほどあり、正面には大きな階段が設けられ、その上には八本の巨大な円柱が並んでいる。

 屋根は青銅で葺かれ、太陽の光を受けて輝いている。

 窓は縦長のアーチ型で、一階から三階まで整然と並び、建物全体に威厳を与えている。


 道を挟んで両側にも三階建ての建物が建っている。

 東側の建物は主に教室として使用される。

 西側の建物には図書館や実験室が設置されている。

 これらの建物も正面校舎と同じ白亜の石材で建てられているが、装飾は控えめで実用的な造りとなっている。

 各建物の間には中庭が設けられ、学生たちの休憩スペースとして利用されている。


 正面建物の前は受付が並んでいる。

 その前には大勢の受験生が緊張した面持ちで列を作っている。

 受付には魔法量測定機が備え付けられており、簡易的なテストを行っている。

 これが一次試験(足切りテスト)である。

 基準値以下はそのまま回れ右してお帰りとなる。


 無事、一次試験に合格すると、正面建物に入ることが許される。

 ここが二次試験の会場となる。

 各教室に次々と受験生が吸い込まれていく。


 10時になると一斉に二次試験の開始だ。

 まずは筆記試験である。

 王国の地理・歴史、魔法学、計算力が試される。

 科目別ということはない。

 全ての科目を2時間で解答する。


 12時に終了。

 1時間の昼食時間をはさんで13時からはさらに奥の広大な空間のある建物に入る。

 ここで魔法の実技テストが行われる。


 さて、俺たちフェーブル領の受験組は正面入口の前に広がるいわゆる学生街の宿舎に滞在している。

 受験生は、俺、ジャイニー、スキニー、獣人のレッド、その他フェーブル領の期待の子どもたち、全員が孤児だ。

 総勢十名。


 貴族子弟以外でこのテストに挑むためには各領の推薦が必要だ。

 つまり、各領では選抜テストが行われている。

 フェーブル領でも多数の受験生が集まった。

 その結果が上記なのである。


 孤児たちの優秀さは、領の選抜テストの結果によって明確に証明された。

 魔法の実技試験では、彼らの魔力の質と量が他の受験生たちを圧倒し、特に複雑な魔法の制御能力において卓越した才能を見せた。


 筆記試験においても、王国の歴史や地理、さらには高度な魔法理論の理解度において、他の受験生たちを大きく引き離す成績を収めていた。

 特に計算力のテストでは、全体の平均点が3割程度であったのだが、合格者は全員が満点であった。


 このような圧倒的な実力差により、最終的な選別は審査員たちにとって非常に簡単な作業となった。合格者を決めるための議論すら必要なく、全員が即座に合意できるほどの実力差があったのだ。


 フェーブル領では選抜試験に申し込んだ領民は数百人いた。

 そのうちの十名が合格した。

 全員が女神教会関係者だった。


 これと同様のテストが王国中の全ての領で行われる。

 その結果が目の前の大量の受験生だ。

 貴族子弟合わせて学院を訪れる受験生は毎年千人以上となる。


 日本的に言えば、東大とか京大、早慶有名私立。

 出世街道の第一関門になるため、日本以上の激戦になる。


 その中から合格するのは百名。

 貴族王族階級が七十名。

 庶民階級が三十名。


 単なる合格判定だけではない。

 テスト結果は入学後の席順を左右する。

 成績順にA→E組に振り分けられるのだ。

 A組とE組では意味合いが全然違う。

 A組で入学し、A組で卒業したものは高く評価され、一生その名誉に預かれる。

 もっとも、E組でも学院を卒業したという誉に預かることができる。

 何しろ、王国十五歳数万人の最上位陣であるのだから。


 そして、その結果であるが、俺たちは全員合格した。



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