表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/117

振る舞いを改める

「なあ、坊っちゃん。オレ達って火炙りとかにされるほど憎まれてるのか?」


「僕たち、そんなひどいことしてましたっけ?」


 ああ、こいつら自覚なしか。


「俺が言うのもなんだがな。ちょっと俺達の過去を振り返ってみろよ」


 男なら地位を振りかざしてボコボコにする。

 女ならセクハラしまくり。

 店では金を払わない。

 父親に告げ口して気に食わない奴を処罰させたり。

 井戸に下剤を流したことも。

 あれは怒られたな。


「俺達が歩くとみんな逃げてくだろ? 店は閉めるし」


「いや、それってむしろ気分がいいんだがな」


「ですね。僕達が一番って感じで」


 うわっ。

 こいつら、善悪の区別がついていないのか。

 それとも、単なる馬鹿なのか。

 矯正に時間がかかるか?


「おまえらなー、こんなことを他の人が俺達に仕掛けてきたらどうする?」


「ボコるに決まってるだろ。当たり前じゃん」


「じゃあさ、誰か対抗できない人だったら? 例えば、父ちゃんズ、俺の両親、辺境伯様とか」


「ああ、確かに。畏まるしかないな」


「それ以上に嫌がらせをされたら?」


「口には出さなくてもどんどんイライラしてきますね」


「だろ? 俺達はそういうことを長年繰り返してきたんだ」


「うーん、そうか……」

「そう言われるとマズイかも」


「おまけに、俺の両親だ。俺達なんか足元にも及ばないほど、非道だぞ。気づいていないか?」


「なんとなく。父ちゃんはたまにいろいろ言うけどな。でも、叱られてるということはないな」


「おまえらの父ちゃんは立派な人物だ。不満は多々あるだろうが、すべて飲み込んで伯爵家に仕えている」


「そうなのか?」


「ジャイニーよ、おまえ毎日顔を合わせてるだろ。わからんか?」


 子どもは勝手気まま、というのは永遠の真実だな。

 それにしても、子どもを二人持ったような気分だ。

 俺は未婚だし、勿論、子どももいなかったが。


「多分だけど、父ちゃんズはおまえらにもちゃんとした指導をしたいんだろう。でもな、俺がいるからな」


「ああ、なるほど。僕達をきつく叱れば、坊ちゃまを批判したことになりますもんね」


「そんなもんか?」


 レナルドの記憶によれば、彼らの父親も子ども同様、最後まで伯爵家を裏切らなかった。一揆によって命を落とすことになるが。


 父ちゃんズは先代伯爵家に雇われてから今代になっても伯爵家に尽くしてきた。今の伯爵に対しても不満はあるのだろうし、時々諌めたりしてるみたいだが、基本的には忠誠を誓ってくれているようだ。


 あれだな。騎士道の鑑か?

 子どもの次は彼らを取り込まなくてはならない。

 一揆なんかで死んでいい人達じゃないんだ。



「それにしても、坊っちゃん。よく反省できたな」


「女神様のおかげなんですか?」


「そうだよ。自分を振り返ることができなかったら自滅だ、みたいなことを言われた。まずは自省から始めよ、ってことだった」


「そっか。このままだと一揆にまっしぐらなのか」


「ああ。力を持った今だと、もっと危ないぞ。ジャイニーみたいに、『オレ様は強いぜー!』なんてやってみろ。不平不満は天元突破するぞ」


「ああー」


「女神様はな、俺達は魔王になるかも、とまで言っていた」


「えー、魔王?」


「俺が魔王でおまえらは四天王って感じか? で、最後は勇者に討伐されるんだ」


「いや、それは」「ちょっと、まずい」


「だろ? 俺達は律しなくてはいかんのだ」


「律する? 難しい言葉使うなよ」


「態度を改めるってことさ」


「何をすればいいんでしょうか」


「俺はな、おまえらの父ちゃんズから指導を受けるべきだと思っている」


「父ちゃんたちから指導?」


「ああ、おまえらの父ちゃんは立派な人物だ。なぜ、伯爵家に仕えているのかわからんぐらいだ。騎士道の鑑だろ」


「そうなのか?」


「ああ。だから、父ちゃんズに頼んで、まず剣の修行。心構えこみでな」


「は? 父ちゃんの修行って、どえらいキビしいぜ?」


「ですよ。僕たち、何度も剣の修行をさせられましたけど、坊ちゃまなんて、そのたびに癇癪かんしゃくおこして一週間ももたなかったじゃないですか」


「いや、それは大反省してだ。そもそも、昔の俺達には厳しすぎたんだよ。あんな重い剣をもたされて素振り十回もやれば手の皮は向けるし腕は痛くなるし」


「確かに。泣いても許してくれないかんな」


「いつもは優しい父上も剣の修行は人が変わったように厳しいですからね」


「だがな、俺が女神様から授かったスキル。なんと『剣士』スキルがあるんだ」


「剣士スキルだって?」


「え、うらやましいです」


「このスキル、お前らにもグルスキルで伝授する。おまえらに適正があれば、剣士スキルが発現するはずだ」


「おお、グルスキルは魔法だけじゃないんだ」


「坊ちゃま、すごすぎます! 教会でも似たようなことのできる人がいるって聞きますけど、ちょっと破格の性能じゃないですか」


「ああ、チートだよな」


「チート?」


「規格外ってことさ」


「だな。『チート』でオレ様も今から『剣士』だ!」


 王国では魔法使いのほうがありがたがる。

 しかし、男の子の間では人気No1は剣士である。


 剣士スキルはそこまで特別ではない。

 だが、このスキルを得れば兵士にとりたててもらえる。

 訓練は厳しくとも、畑と格闘する必要はない。

 そういう意味で『洗練された』スキルなのだ。


 そして、戦争時には指揮官となる。

 どうせ戦争時には農民も徴兵されるんだ。

 みんなで戦うのなら指揮官のほうがいい。



「うし、魔法のときみたいに俺と手をつないで」


「おっしゃ」


「ワクワク」


 俺達は手をつなぎあうと、二人に『剣士』スキルを流し込んでいった。

 

 ……


「よし、二人共、剣士スキルが根付いたぞ。ステータスを見てみろよ」


 魔法を根付かせてから、俺はスキル伝授の感覚がわかるようになっていた。


「……本当だ!」


【ステータス】

 氏 名 ジャイニー・レポルト

 種 族 人族

 性 別 男

 年 齢 十二歳

 スキル 四属性魔法 剣士

 その他 女神の加護(小)


「坊ちゃま、僕のスキル、剣士だけじゃないんですが」


【ステータス】

 氏 名 スキニー・アレオン

 種 族 人族

 性 別 男

 年 齢 十二歳

 スキル 四属性魔法 剣士(拳士)

 その他 女神の加護(小)


「剣士(拳士)なんだって」


「拳士って、拳で殴り合うスキルだな」


「格闘技ですか?」


「ステゴロとか、素手の格闘技だな」


「は? スキニーなんてこんな小柄で痩せ細っているのに?」


 スキニーは身長が百四十cm、体重は三十kgぐらいだ。

 ちなみにジャイニーは身長が百六十cm、

 体重は五十kgといったところか。

 俺はよくわからんが、身長百五十cm?、

 体重は六十kg?


「ですよねー。不相応なスキルです」


「いや、格闘技は筋肉や体格だけで決まるもんじゃない」


「そうなんですか?」


「目の良さとか反射神経とか骨の使い方とか、格闘技にはいろいろな要素が絡んでくる。むしろ、筋肉や立派な体格が邪魔ってこともあるんだ」


「坊っちゃん、詳しいじゃねーか。それも女神様の知識か?」


「まーな」


 俺は前世で多少格闘技を習っていたからな。

 空手とか日本古武術とかだ。


「拳士なら、スキニーの父ちゃんが得意だろ。ていうか、剣士なら、多分格闘技も得意だと思うぞ」


 戦場では剣だけで攻撃をするわけじゃないからな。

 最終的には身一つで相手と殺りあうわけだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ