表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/37

33

競技スペースに降りて、審判の説明を聞く。

勝負は三人一斉に行い、審判から負けを宣告されることなく残った者が勝ちとのこと。

どうやら大怪我をする前に、審判が止めてくれるルールであるようだ。

それに一先ず安心したところで、改めて二人と向き合う。

そしてこの対決は実にあっさりと、スポーツのように始まった。


三つ巴の勝負論など知らないが、目障りであろう私に攻撃が集中する可能性もあっただろう。

しかし、真っ先に動いたペルシカの剣先は、ディーバに向いた。


「何をボサッとしているんですか!少しでも勝つ気があるのなら、手伝いなさい!」


ディーバに斬りかかりながらも、ペルシカからこちらに檄が飛ぶ。


「え〜。ペルシカァ、先にあの子倒しちゃおうよ」

「そんな時間、あるわけないでしょう!」


ディーバの腕が、振り下ろされた剣を幾度となく受け止める。

その度に、金属を打ったかのような高い音が響いた。

つまり彼女は、腕、いやおそらく全身をかなりの硬度まで強化しているということだ。


…私の魔法、通んなさそう。


ウーリィの言っていた通りだが、魔力120で防御を張った相手に、魔力100の攻撃は一切通らない。

これまでの対人訓練でもそうだった。

それでも、「何かしなさい」「見てるだけでは何も変わりません」「何のために降りてきたんですか」などというペルシカの熱い言葉を受け、一応、ディーバに向けて魔法を撃ってみた。

魔力の動く感覚はあったものの、やっぱりほら、ディーバには何ら効いていない。

彼女は攻撃を受けたことすら気づいていないだろう。


かくして早々に、二人の熱戦を間近で傍観する私という構図が出来上がった。

それにしてもなぜ、ディーバが勝つと言われているのだろう。

確かにペルシカの剣は通っていない。

魔法で強化した剣なのだろうが、ペルシカとディーバの魔力出力にも差があるようだ。

ただディーバは先程から防戦一方で、防御を少しでも失敗すればやられてしまう状況にある。


二人の実力差がどこにあるのか。

その理由は直にわかった。


ペルシカの動きが突如、目に見えて鈍った。

彼女の小さな呻き声が耳に届いたとき、私の体にも大きな負荷がかかった。

両手足が尋常でなく重い。

そんな状況の中、やっとの思いで振り下ろしたであろうペルシカの剣は、ディーバの腕に負けてパキリと折れた。

その意味を考える暇もなく私は、酷い目眩と急な吐気で、その場に倒れ込んだ。

私に余裕があれば、毒ガスが撒かれたとでも思っただろう。


「ちょっと時間かかっちゃった」


ディーバの悪戯っぽい笑い声が聞こえた。

『これ』が彼女のせいなのだと理解したとき、私の役立たずな頭が、ディーバの通り名を思い出した。

ディーバと初めて会ったあの日、オーストから聞いた彼女の通称。


「…デバフの、女王」

「新人ちゃんは吐かないで待っててねェ」


ぐらぐらする視界を抑えて確認したペルシカは、片膝をつき、うずくまっているようだった。

そこへディーバが近付いていく。

その道すがら、折れた剣を拾い上げた彼女は


「じゃあねェ。ゴリラちゃん♡」


それをペルシカの背中目掛けて、勢いよく突き刺した。かに見えた。

しかしその既のところで、審判からペルシカの負けが告げられる。

ディーバは、つまらなそうな表情を浮かべ、折れた剣をその場に落とした。


次は私だ。

ディーバが、こちらに向き直る。


どうしよう。

いや、どうしろと言うのだ。

私にデバフがかかる前から、私の魔法は彼女に通らなかった。

つまり、仮にデバフが解除出来たところで、私はディーバに敵わない。

むしろ、このデバフがディーバにかかっていたとしても勝てるかどうか怪しいのに、


とそこまで考えたとき、ふと思った。

ロイの『譲受』、あれで譲る・譲られるものは魔力だけなのだろうか。

例えば『これ』を渡せたりしないのだろうか。


試しに、この『デバフ』を『ディーバ』に『譲り渡す』ことを願ってみる。

デバフは当然、ディーバに移らない。

しかし、私の魔力は、大きくうねった。

それは、この魔法の指示が有効である可能性を示していた。

ロイの言葉を思い出す。


    この『譲渡』、契約があれば、

 僕の魔力を譲り渡すことも出来るんですよ


するともしかして、ディーバと契約さえ結べれば?

ごくわずかな期待に、私の心臓がドキリと音を立てた。







「あれ、疑ってます?」

「疑うというか…」

「この山でも吹き飛ばして見せましょうか」


この男は人畜無害そうな顔でなんてことを言うのだろう。


「…ここはどこですか?」

「ここ?ここは、人間界との境界近くにある山の中ですよ」

「カーブの」

「あ、そうです。よくご存知ですね。カーブの裏山です」


しかしここは、私の知っている裏山ではない。

そして目の前には、三百年も前に死んだはずの魔王がいる。


「今って、何年ですか」

「人間側の暦で言ったほうがいいですか?それなら1206年です」


間違いない。


「…三百年前です」

「え?」

「ここ、三百年前なんです。私、三百年先の、1524年の人間です」


魔王ロイべは一度真顔になってから


「まぁ、座りましょうか」


と微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ